ウィンドサーフィンの楽しみ方
水面の上でセールが風を受けると、止まっていたボードが静かに動き始めます。
エンジンも、波に押してもらう必要もありません。手元のセールへ入る風を少しずつ調整すると、自分の立つボードが沖へ向かって進んでいきます。
最初はゆっくりだった速度が、風をきれいにつかまえた瞬間に変わる。
そのときに感じられるのが、風だけで水上を走るウィンドサーフィンならではの爽快感です。
大きな道具を使うため、難しそうに見えるかもしれません。
腕の力が強くないとできないのではないか。
何度も海へ通わなければ進めないのではないか。
最初から高価な道具をそろえる必要があるのではないか。
そんな印象がありますが、初心者向けの大きく安定したボードと軽いセールを使えば、初めての日にも水上を進める可能性があります。日本ウインドサーフィン協会も、体験スクールなら道具を借りられ、初めてでも楽しめるスポーツとして紹介しています。
ウィンドサーフィンは、単にボードの上へ立つだけの遊びではありません。
風向きを読む。
セールへ入れる風の量を変える。
自分で進む方向を選ぶ。
向きを変えて、出発した場所へ戻る。
目には見えない風を、自分の動きで水上の速度へ変えていく趣味です。
入口では穏やかなクルージングを楽しみ、続けるほど速さや技術の世界へ進めることも、大きな魅力です。
まず知っておきたい基本情報
一回の水上時間 約90分〜2時間
準備や着替えを含む現地滞在 約2時間30分〜4時間
おすすめの始め方 道具付きの初心者スクール
体験スクールの費用 約4,000〜10,000円
一日レンタルの費用 約6,000〜9,000円
道具を購入する場合の初期費用 約300,000円以上
おすすめの頻度 月一回から
天候への影響 とても大きい
楽しさの中心 風をつかむ感覚、水上を進む開放感、操作が上達する達成感
ウィンドサーフィンは、スクールを利用すれば比較的気軽に体験できます。
一方、自分の道具だけで自由に楽しめるようになるには、ある程度の練習と、道具を運び保管する環境が必要です。
そのため、最初から購入中心で始めるより、スクールとレンタルを利用しながら、自分に合う続け方を探すのがおすすめです。
ウィンドサーフィンをおすすめしたい3つの理由
風だけで水上を進む感覚が新鮮
ウィンドサーフィンには、モーターもパドルもありません。
セールへ風が入ると、その力がマストを通してボードへ伝わり、水面を進み始めます。強く漕いで前へ進むのではなく、風を受ける角度を整えることで動くところが、ほかの水上アクティビティとは違います。
風が弱い日は、景色を見ながらゆっくりと進む。
少し風が出てくると、水を切る音が大きくなり、速度が上がっていく。
同じ場所でも風によって楽しみ方が変わるため、毎回違う発見があります。
波がなくても楽しめる
名前に「サーフィン」とついていますが、初心者が最初から大きな波へ挑戦する必要はありません。
むしろ、波が穏やかで足が届きやすい水域の方が、最初の練習には向いています。
波に乗るサーフィンとは違い、ウィンドサーフィンの主な動力は風です。海だけでなく、条件の整った湖などでも行われています。
大きな波へ向かう勇気よりも、まずはボードの上でバランスを取り、セールの扱いを覚えることから始められます。
上達すると速度感が大きく変わる
初めのうちは、大きなボードでゆっくり進みます。
ところが、風をつかむ技術が上がり、ハーネスやフットストラップを使えるようになると、ボードが水面を滑走する「プレーニング」という状態へ進みます。
日本ウインドサーフィン協会では、風速5メートル毎秒程度以上がプレーニングへ入る一つの目安とされ、ハーネスやフットストラップを使いながら速度を高めていく技術が紹介されています。
穏やかな水上散歩のような時間から、風と一緒に水面を走る速度感まで楽しめる。
一つの趣味の中で、体験の印象が大きく変わっていくところも、ウィンドサーフィンをおすすめしたい理由です。
腕力よりも、風を逃がすことが大切
セールを見ると、強い力で引っ張り続けるスポーツのように感じます。
実際には、風が強すぎるときに正面から耐え続けるのではなく、セールの角度を変えて風を抜きます。風を入れる、少し逃がす、また入れるという調整が基本です。
初心者用のセールは比較的小さく、扱いやすい物が使われます。
水へ倒れたセールを起こすときも、腕だけで持ち上げるのではありません。身体を後ろへ預け、ボードが風に合わせて向きを変えるのを待つことで、セールが軽くなる位置を探します。
もちろん、セールを起こす動作や、揺れるボードの上で姿勢を保つために体力は使います。
それでも、力任せに続けるものではありません。
腕、背中、脚、体幹を使いながら、風とうまく釣り合う姿勢を見つけることが大切です。
初めてなら、スクールから始める
ウィンドサーフィンは、自分で道具を用意し、海や湖へ持っていけばできる趣味です。
ただし、最初から独学で始めるのはおすすめできません。
道具の組み立て方。
風向きの見方。
ボードへの乗り方。
水へ落ちたセールの起こし方。
進む方向の変え方。
岸へ戻れないときの対処。
覚えたいことが多く、間違った方向へ進むと、風に流されて出発地点から離れてしまうことがあります。
最初は、道具一式を借りられる初心者向けスクールを利用します。
実際のスクールでは、ボードやセール、ウェットスーツを含む2時間ほどの体験が3,500〜7,700円程度、一日体験が5,500〜12,000円程度で用意されています。料金や時間には地域差があり、キャンペーン価格が設定されることもあります。
選ぶときは、次の点を確認します。
初心者専用の道具があるか
道具とウェットスーツが料金に含まれるか
浮力補助具を借りられるか
シャワーや更衣室があるか
少人数で指導を受けられるか
海況が悪い場合の中止基準があるか
継続用の初級スクールがあるか
初回で少し進めたとしても、すぐに一人でレンタルへ移る必要はありません。
向きを変えて戻ってくるところまで身につけるために、何度かスクールを受ける方が安心です。
一回に必要な時間
初心者向けの半日スクールは、水上で練習する時間を含めて約2時間が一つの目安です。
受付、着替え、陸上説明、道具の準備、シャワーまで含めると、現地では約2時間30分〜4時間ほど見ておくと落ち着いて行動できます。
一日コースでは、昼休憩を挟みながら4〜5時間ほど練習する例もあります。
ウィンドサーフィンは、風がなければ十分に進まず、強すぎても初心者には難しくなります。
雨が降っていなくても中止になることがあり、反対に曇りや小雨でも、風と水面の状態がよければ開催されることがあります。
予定どおりに実施できるかより、その日の風に合わせる趣味だと考えておくと、気持ちに余裕を持てます。
最初の一回にかかる費用
道具付きの体験スクールを利用する場合は、次のような費用が目安です。
スクール料金 約4,000〜10,000円
施設利用料 料金込み〜約1,500円
交通費 約1,000〜5,000円
駐車場 無料〜約2,000円
飲み物・軽食 約500〜1,000円
合計 約6,000〜18,000円
スクール料金には、ボード、セール、ウェットスーツ、施設利用料が含まれる場合があります。別料金の場合もあるため、予約前に確認します。
スクールを卒業したあと、道具を借りて練習する場合は、一式で一日6,600〜8,800円ほどのレンタル例があります。施設使用料やシャワーが含まれるかどうかは店舗によって異なります。
月一回、年間12回ほどスクールやレンタルを利用するなら、交通費を含めて年間約80,000〜200,000円ほどが一つの目安です。
海や湖までの距離によっては、活動料金より交通費の方が大きくなります。
道具は、すぐに買わなくて大丈夫
ウィンドサーフィンの主な道具は、大きく分けるとボードとリグです。
リグとは、セール、マスト、ブーム、ジョイントなど、風を受ける部分を組み立てた状態を指します。
このほかに、ウェットスーツ、ライフジャケットや浮力補助具、マリンブーツなどを身につけます。
日本ウインドサーフィン協会が示す目安では、新品のリグ一式が約15万円、初心者向けボードも約15万円からです。ボードとリグのコンプリートセットは約24万円から、ウェットスーツは約4万円、ライフジャケットは約1万5,000円からとされています。
一式を新品でそろえるなら、身につける物や運搬用品を含めて約30万〜50万円以上を見ておく必要があります。
さらに、道具は大きいため、保管場所と運搬方法も考えなければなりません。
自宅に置けない場合は、海辺のショップや艇庫へ預ける方法があります。自分で運ぶなら、車への積載方法や固定具も必要です。
そのため、最初の数回はレンタルで十分です。
続けたい気持ちが固まり、よく利用する場所や風の強さ、自分に合うセールの大きさが分かってから購入します。
中古品や型落ち品で費用を抑えることもできますが、初心者がパーツの適合や劣化を見分けるのは簡単ではありません。日本ウインドサーフィン協会も、中古品は公認スクールや信頼できるショップへ相談して選ぶことを勧めています。
初めての日に持っていくもの
道具付きスクールなら、用意する物はそれほど多くありません。
水着
バスタオル
着替え
飲料水
日焼け止め
濡れてもよい靴やマリンシューズ
健康保険証または必要な本人確認書類
ウェットスーツや浮力補助具は借りられることが多いものの、料金に含まれるかは確認が必要です。
かかとが固定されないサンダルは、水の中で脱げやすくなります。足元には貝殻や石があることもあるため、脱げにくいマリンブーツや濡れてもよい靴が向いています。
水の上にいると暑さへ気づきにくいことがあります。
夏は帽子や日焼け対策も用意し、海へ入る前後にしっかり水分をとります。
当日の流れ
風と水面を確認する
前日から当日の朝に、天気、風向き、風速、雷、気温、水温を確認します。
初心者が数値だけで開催の可否を判断するのは難しいため、スクールからの連絡に従います。
特に、岸から沖へ吹くオフショアの風では、戻れなくなったときに沖へ流される危険があります。
陸上で基本を覚える
まず、道具の名前と持ち方を教わります。
セールへ風を入れる位置、風を抜く動き、ボードを回す方法を陸上で確認してから水へ入ります。
ウィンドサーフィンは、進むことと同じくらい、止まることと向きを変えることが大切です。
穏やかな場所で走り出す
大きく浮力のあるボードへ乗り、水へ倒れたセールをロープで起こします。
セールが軽くなったらブームを持ち、少しずつ風を入れます。
最初は数メートル進むだけでも十分です。
何度か落ちながら、ボードの中央へ立つ位置と、風を受ける感覚を覚えます。
元の場所へ戻る練習をする
遠くまで進むことより、自分で向きを変え、岸へ戻ることが大切です。
風上へ完全にまっすぐ進むことはできないため、風に対する角度を考えながら走ります。ウィンドサーフィンでは、風向きに対して走れる方向を理解することが基本になります。
帰る技術まで身につけて、初めて自分で行動できる範囲が広がります。
安全に楽しむために
ウィンドサーフィンでは、浮力のあるボードを使用します。
それでも、ボードがあるから安全とは限りません。
初心者が特に守りたいのは、次の基本です。
浮力補助具を必ず着用する
最初はスクールの範囲内で練習する
一人で沖へ出ない
風が強くなったら無理をしない
ボードから離れて泳ごうとしない
出発前に戻り方を確認する
日本ウインドサーフィン協会は、ライフジャケットを安全に楽しむための必須アイテムとし、トラブル時にはボードを手放さず、周囲の助けを求めることを案内しています。単独行動を避け、スクールやクラブで周囲に見てもらえる環境をつくることも大切です。
海上では、ほかのウィンドサーファー、SUP、ヨット、海水浴客などとの接触にも注意します。
危ないと感じたら、セールへ入る風を抜いて速度を落とします。地域ごとに利用区域や優先ルールがあるため、初めての場所ではショップや管理者へ確認します。
雷が聞こえたときや、急に風が強くなったときは、早めに岸へ戻ります。
地震の強い揺れや長い揺れを感じた場合は、道具を片付けようとせず、高台や指定された避難場所へ移動します。
予定した時間まで続けることより、余力があるうちに終えることが、安全に長く楽しむためには大切です。
続けるほど変わる5段階の楽しみ方
1.風の力で初めて進む
大きなボードの上に立ち、小さなセールへ風を入れます。
ほんの数メートルでも、自分で漕がずに進んだ瞬間には、風を動力へ変えた驚きがあります。
最初の目標は、速く走ることではありません。
進む、止まる、落ちてもボードへ戻るという基本を体験します。
2.自分で向きを変えて戻る
直進できるようになったら、セールを傾けてボードの向きを変えます。
行きたい場所へ進み、出発地点へ戻れるようになると、水上での自由が一気に広がります。
この段階では、風の強さだけでなく、風がどの方向から吹いているかを意識するようになります。
3.ハーネスを使って長く走る
風が強くなると、腕だけでセールを支え続けるのは大変です。
腰につけたハーネスとセールをつなぎ、体重を預けて走れるようになると、腕の負担が減ります。
長い距離を走りやすくなり、クルージングの楽しさが増えていきます。
4.プレーニングの速度を味わう
さらに上達すると、フットストラップへ足を入れ、ボードが水面を滑走するプレーニングへ挑戦します。
水を押し分けて進んでいた感覚から、水面の上を滑っていく感覚へ変わります。
ウィンドサーフィンを続ける人が目標にしやすい、大きな節目です。
5.自分の楽しみ方を選ぶ
速さを追う。
長い距離を走る。
方向転換の技を磨く。
大会へ参加する。
景色のよい場所で穏やかに走る。
ウィンドサーフィンには複数の楽しみ方があります。
日本ウインドサーフィン協会のバッジテストで技術を確認したり、競技へ進んだり、公認指導員を目指したりする道もあります。
一方で、大きな目標を持たず、月一回だけ風のある水辺へ出る楽しみ方でも十分です。
こんな人におすすめ
自然の力を使って遊びたい人。
乗り物を自分で操作する感覚が好きな人。
波のない穏やかな水面から始めたい人。
少しずつ技術を覚える過程を楽しめる人。
身体を動かしながら、景色や開放感も味わいたい人。
一方で、決めた日時に必ず実施したい人や、大きな道具の運搬と保管を負担に感じる人には、少し続けにくいかもしれません。
ただし、道具を買わず、海辺のスクールやレンタルを拠点にすれば、負担はかなり小さくできます。
まずは半日の体験から試し、自分が風を使って進む感覚を好きになれるか確かめるのがおすすめです。
最初は、ゆっくり進めれば十分
ウィンドサーフィンの映像を見ると、強い風の中を高速で走り、水面から飛び上がる姿が目に入ります。
けれど、最初からそこを目指す必要はありません。
大きなボードの中央へ立つ。
水へ倒れたセールを起こす。
少し風を入れる。
数メートル進んだら、風を抜いて止まる。
初めの一日は、それだけでも十分です。
風は目に見えません。
それでも、セールへ入った瞬間には手元へ重さが伝わり、ボードが動き始めます。
自分の力だけで押しているのではないのに、自分の操作によって進む。
その不思議さと爽快感が、ウィンドサーフィンの入口です。
道具の大きさや購入費を見て、始める前から難しく考える必要はありません。
最初は道具付きのスクールを選び、穏やかな水面で風をつかんでみる。
水から上がったあとにも、セールへ風が入った感覚が手に残っていたなら、その一日が新しい休日の楽しみにつながっていきます。
休日のよりみち帖では、気軽に始められるものから、少し時間をかけて育てていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。
「次の休日は何をしよう」と迷ったときに、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。
これからも、次にやってみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
