北海道料理の楽しみ方
はじめに
鍋の中へ昆布だしを注ぎ、大根とじゃがいもを静かに煮ていく。野菜が少しやわらかくなったところへ鮭を加え、最後にみそを溶くと、魚と昆布のうま味を含んだ湯気が台所いっぱいに広がります。
器へ鮭、豆腐、野菜を取り分け、熱い汁をたっぷり注ぐ。冷たい季節の景色を思わせる石狩鍋は、北海道料理を自宅で作ってみたいときの、わかりやすい入口の一つです。
北海道料理というと、海鮮丼、かに、ジンギスカン、札幌ラーメンのような、旅先で味わう料理を思い浮かべるかもしれません。新鮮な魚介や大きな肉が必要で、自宅では同じように作れないと感じることもあります。
けれど、北海道の食卓には、鮭やにしんを野菜と煮る汁物、じゃがいもや豆を使う素朴なおかず、農業や酪農の広がりとともに生まれた料理など、家庭の鍋やフライパンで作れるものが数多くあります。
北海道は広く、海岸、平野、山地では手に入る食材も暮らしも異なります。アイヌ民族が受け継いできた独自の食文化、漁業の町に残る保存食、開拓期以降に各地から渡った人々が持ち込んだ料理、現在の町で生まれたご当地料理が重なり、今日の多様な食卓へつながっています。
初めから特別な魚介を取り寄せたり、何品もの名物料理を並べたりする必要はありません。まずは鮭の切り身と身近な野菜を使って石狩鍋を作り、次にじゃがいも料理やちゃんちゃん焼きへ進むところから始められます。
北海道料理の基本情報
主な楽しみ方 鮭、昆布、じゃがいも、豆、乳製品、肉、季節の野菜などを使い、地域に根差した料理を自宅で作る
おすすめの頻度 月2回前後
1回の調理時間 約50〜120分
短時間で楽しむ場合 いももちや鮭のちゃんちゃん焼きなら約30〜40分から
準備と片付けを含む総所要時間 約70〜150分
最初に作りやすいもの 石狩鍋、鮭のちゃんちゃん焼き、いももち
主な調理場所 自宅の台所
最初に必要なもの 包丁、まな板、ふた付きの鍋またはフライパン、ボウル、菜箸やトング
追加すると使いやすい材料 鮭、昆布、じゃがいも、みそ、バター、片栗粉
始めやすさ 全国で入手しやすい食材へ置き換えながら、家庭の調理器具で始められる
迷いやすいところ 塩鮭と生鮭の使い分け、魚と肉の加熱、似た汁物や炒め物の違い
北海道料理を楽しむときは、「北海道産でなければ作れない」と考えすぎなくても構いません。北海道で育まれた料理の背景を知り、手に入る材料で調理の考え方を試すことも、家庭で続ける一つの形です。
一方で、材料を置き換えた場合は、元の料理とまったく同じ味になるわけではありません。鮭の種類、昆布、みそ、じゃがいもの品種による違いにも少しずつ目を向けると、料理の奥行きが見えてきます。
北海道料理にかかる費用
北海道料理に使う米、じゃがいも、玉ねぎ、キャベツ、豆腐、みそなどは、普段の食事にも使える材料です。趣味として追加する費用は、いつもより少し良い鮭や昆布を選ぶ、羊肉を購入する、北海道の加工品を取り寄せるといった差額として考えます。
手持ちの道具を使う場合の初期費用 ほぼ0円
昆布やバターなどを買い足す場合 約500〜1,500円
二人分の鍋や魚料理の食材費 約1,200〜3,000円
羊肉や複数の魚介を使う場合 約2,000〜4,500円前後
北海道の食材を取り寄せる場合 商品代に加えて送料がかかることがある
月2回続ける場合の年間追加費用 約1万5,000〜4万円ほど
石狩鍋なら、野菜、豆腐、みそは通常の食費と重なり、鮭と昆布を購入した分が主な費用になります。切り身を使えば二人分の量を調整しやすく、魚を一尾購入する必要もありません。
魚介の価格は季節や漁獲、産地、冷凍・生鮮の違いによって変わります。特定の高価な魚へこだわるより、その日に状態のよい鮭やたらを選び、料理に合った切り身を使う方が無理なく続けられます。
じゃがいも、豆、乳製品を使う料理は、比較的費用を整えやすい分野です。いももち、豆のスープ、牛乳を使う煮込みなどを間に入れると、毎回魚介や肉を多く購入せずに北海道の食材へ関心を広げられます。
取り寄せを利用する場合は、料理を決めてから量を選びます。珍しい加工品を一度に何種類も購入するより、鮭、昆布、羊肉など一つを主役にし、届いた材料を使い切れる献立を考える方が収納と費用を抑えられます。
北海道料理をおすすめする3つの理由
1.海の食材と畑の野菜を、一つの鍋や皿へまとめられる
石狩鍋や三平汁には、鮭やたらなどの魚だけでなく、大根、にんじん、じゃがいも、ねぎといった野菜が入ります。魚介のうま味を野菜が含み、野菜の甘みが汁へ溶けることで、一つの鍋の中に海と畑の食材が重なります。
ちゃんちゃん焼きでも、鮭の下へキャベツや玉ねぎ、きのこを広げ、みそだれとともに蒸し焼きにします。魚料理と野菜料理を別々に作らなくても、一皿の中で食感と味を変えられます。
特別な盛りつけをしなくても、大きな鍋やフライパンから取り分けるだけで食卓が整います。寒い日の夕食だけでなく、家族や友人と料理を囲みたい日にも取り入れやすい楽しみ方です。
2.じゃがいも、豆、乳製品を普段とは違う形で味わえる
北海道を代表する農産物には、じゃがいも、豆、小麦、玉ねぎ、とうもろこしなどがあります。いつもの食材であっても、作る料理を変えると新しい食感に出会えます。
ゆでたじゃがいもへ片栗粉を混ぜて焼けば、外側は香ばしく、内側は弾力のあるいももちになります。豆は甘く煮るだけでなく、汁物、サラダ、煮込みなどへ使えます。
牛乳、バター、チーズを魚や野菜と組み合わせる料理もあります。みそ汁へバターを少量落とす、鮭とじゃがいもを牛乳で煮るなど、和風のだしと乳製品をつなげられるところも北海道料理の面白さです。
3.一つの地域の料理から、北海道の広さと歴史を知れる
石狩地方の鮭料理、十勝の豚丼、道南のいかめし、沿岸部のにしん料理など、料理名には土地の産業や暮らしが表れています。北海道全体を一つの味として見るのではなく、地域ごとに料理をたどると違いが分かります。
現在広く知られるスープカレーや豚丼のような料理も、昔から変わらない郷土食というより、それぞれの町と時代の中で生まれ、地域の味として育ってきたものです。
料理の由来を調べると、漁業、農業、酪農、鉄道、町の発展などにも関心がつながります。一皿を作ることから、北海道を地域ごとに見直せるのが、この趣味の大きな魅力です。
北海道の食文化を一つにまとめない
北海道料理を深めるときには、観光で知られるご当地料理だけでなく、異なる背景を持つ食文化を分けて見ることが大切です。
アイヌ民族の食文化
アイヌ民族の食文化は、一般的な北海道郷土料理の一部として簡単にまとめるものではありません。動植物の採取、漁労、狩猟、保存、調理は、言語、信仰、自然との関係と結びついた独自の文化です。
鮭をはじめとする魚、鹿などの肉、山菜、木の実、穀類を、煮る、焼く、干す、発酵させるといった方法で利用してきました。肉や魚、野菜を煮た汁物のオハウや、穀類の粥なども伝えられています。
家庭で関心を持ったときは、料理名だけを借りて自己流で再現するより、アイヌ民族の人々や文化施設が発信する資料、講座、体験を通じて学ぶ方が、その背景を尊重できます。現在も受け継がれ、変化し続けている文化として向き合うことが大切です。
漁業の町に残る料理
北海道は日本海、太平洋、オホーツク海に囲まれ、地域によって水揚げされる魚介が異なります。鮭、にしん、たら、いか、ほたて、昆布などを、生のまま食べるだけでなく、塩蔵、乾燥、煮込み、汁物へ加工してきました。
三平汁は、塩漬けの鮭、にしん、たらなどと野菜を煮る料理です。生鮭をみそ味で煮ることが多い石狩鍋とは、使用する魚の状態と味付けの考え方が異なります。
にしん漬け、いかめし、鮭のちゃんちゃん焼きにも、それぞれ漁業や保存、働く人々の食事と結びついた背景があります。同じ海産物でも、地域によって調理法が変わります。
農業と酪農から広がった料理
広い農地で作られるじゃがいも、豆、小麦、玉ねぎ、とうもろこし、てん菜などは、現在の北海道料理を支える身近な食材です。牛乳、バター、チーズなどの乳製品も、菓子だけでなく家庭料理へ使われています。
いももち、かぼちゃ団子、豆料理、コーンスープなどは、自宅でも試しやすい料理です。農産物そのものの味を生かすため、調味料を増やしすぎず、ゆで方や焼き方を変えて楽しめます。
各地から渡った人々が作った食卓
明治以降の北海道には、日本各地から多くの人々が移り住み、それぞれの故郷の料理や味付けを持ち込みました。手に入る魚、野菜、豆、乳製品へ作り方を合わせる中で、家庭ごとの料理も育ってきました。
北海道の赤飯へ甘納豆を使う家庭があることも、よく知られる特徴の一つです。ただし、北海道のすべての家庭が同じ作り方をするわけではなく、地域や家族によって小豆を使う場合もあります。
最初の一品は石狩鍋から
石狩鍋は、生の鮭と野菜を昆布だしで煮、みそで味を整える鍋料理です。二人分なら小さな鍋で作れ、魚と野菜を一緒に食べられます。
二人分の材料
・生鮭の切り身 2切れ
・じゃがいも 1〜2個
・大根 適量
・にんじん 適量
・玉ねぎまたは長ねぎ
・キャベツ 適量
・豆腐 2分の1丁
・昆布だし 600〜800ミリリットル
・みそ 大さじ2〜3ほど
・酒、みりん 各少量
・好みでバター、山椒、七味唐辛子
塩鮭を使うと汁の塩分が変わるため、初回は生鮭を選ぶと味を調整しやすくなります。鮭のあらを加えればうま味は増しますが、骨が多いため、最初は切り身だけでも十分です。
1.鮭と野菜を準備する
鮭は加熱用であることと、消費期限、保存温度を確認します。表面の水分を清潔なペーパーで軽く拭き、食べやすい大きさへ切ります。
大根、にんじん、じゃがいもは火が通るまで時間がかかるため、厚くしすぎないようにします。キャベツ、ねぎ、豆腐は崩れやすいので、あとから加えられる大きさに切ります。
野菜を先に切り、最後に鮭を扱います。鮭を切った包丁、まな板、手はよく洗い、完成後の薬味や食器へ触れる前に清潔にします。
2.昆布だしと根菜を温める
鍋へ昆布だしを入れ、大根、にんじん、じゃがいもを加えます。沸騰させ続けず、中火から弱めの火で静かに煮ます。
昆布を水から入れる場合は、沸騰する前に取り出す方法があります。だしの取り方に決まりを増やしすぎず、初回は市販の無塩または塩分を確認できるだしを使っても構いません。
3.鮭と残りの具を加える
根菜へ少し火が通ったら鮭を入れ、表面の色が変わるまで加熱します。あくが気になる場合は、静かに取り除きます。
玉ねぎ、キャベツ、豆腐を加え、鮭の最も厚い部分まで火を通します。魚を何度も強く混ぜると崩れるため、鍋を軽く動かすか、周囲の野菜を動かします。
4.みそを溶いて仕上げる
具材に火が通ったら火を弱め、みそを少量の煮汁で溶いてから鍋へ戻します。みその種類とだしの塩分によって味が変わるため、最初から全量を入れません。
酒やみりんを加える場合は、煮てアルコールを飛ばす時間も取ります。子どもや飲酒を避けている人が食べる場合は、使わない作り方を選べます。
仕上げにバターを少量加えると、みそと鮭の味がまろやかになります。ただし、伝統的なすべての石狩鍋へ入るものではないため、好みに合わせる追加と考えます。
5.鍋の中で長く煮続けない
鮭へ十分に火が通ったら、煮崩れる前に食卓へ運びます。食べている間も加熱する場合は弱火にし、汁が煮詰まったらだしや湯で調整します。
残った鍋を保存する場合は、室温へ長く置かず、食べる分ごとに浅い清潔な容器へ分けます。速やかに冷蔵または冷凍し、食べるときは全体を十分に温め直します。
石狩鍋と三平汁の違いを知る
石狩鍋と三平汁は、どちらも鮭と野菜を使うことがあるため、同じ料理のように見えるかもしれません。大きな違いの一つは、魚の状態と味付けです。
石狩鍋では、生鮭を使い、昆布だしとみそを中心に仕上げる形がよく知られています。三平汁では、塩漬けや糠漬けにした鮭、にしん、たらなどを使い、魚が持つ塩分を生かして煮ます。
ただし、三平汁の魚や味付けには地域と家庭による違いがあり、みそや酒粕を使うこともあります。料理名だけで厳密に線を引くより、どの魚をどの状態で使い、どの地域で作られてきたかを見ることが大切です。
家庭で両方を作るなら、最初は生鮭のみそ仕立ての石狩鍋、次は塩鮭や塩だらを使う三平汁という順にすると、味の違いを比べやすくなります。
次に作りやすい北海道料理
鮭のちゃんちゃん焼き
鮭とキャベツ、玉ねぎ、きのこなどをフライパンへ広げ、みそだれとともに蒸し焼きにする料理です。魚と野菜を一度に仕上げられ、鍋より汁気が少ないため、普段のおかずにも向いています。
鮭を先に軽く焼き、野菜を加えてふたをすると、魚の香ばしさと野菜の甘みを残せます。みそだれは最初から濃くせず、鮭が塩味付きの商品では調味料を控えます。
いももち
ゆでたじゃがいもをつぶし、片栗粉を混ぜて丸く成形し、フライパンで焼きます。焼き上がりへしょうゆと砂糖のたれを絡めるほか、バターやチーズを合わせる方法もあります。
じゃがいもの水分によって必要な片栗粉の量が変わります。最初から多く加えると硬くなるため、生地がまとまる程度から調整します。
豚丼
十勝地方で知られる豚丼は、焼いた豚肉へ甘辛いたれを絡め、ご飯へ載せる料理です。家庭では豚ロースや豚ばら肉を使い、フライパンで作れます。
たれを先に煮詰めすぎると焦げやすいため、肉を十分に加熱してから絡めます。市販のたれを使う場合は塩分と糖分を確認し、追加のしょうゆや砂糖を控えます。
いかめし
いかの胴へ米を詰め、しょうゆ味の煮汁で炊く料理です。米が膨らむため、いかの中へ詰めすぎず、口をしっかり閉じます。
生のいかを扱う下処理と煮込みが必要になるため、魚介料理に慣れてから挑戦する方が落ち着いて進められます。初めは調理済みの商品を食べ、米の固さや味を知る方法でもよいでしょう。
スープカレー
札幌で広がったスープカレーは、さらりとしたスープへ大きめの肉や野菜を合わせる料理です。香辛料を使いますが、単に通常のカレーを水で薄めた料理ではありません。
家庭では鶏肉と焼き野菜を使い、市販のスープカレー用調味料から始められます。慣れたら、だし、香辛料、具材の焼き方を一つずつ調整します。
甘納豆の赤飯
北海道では、甘納豆を使った甘みのある赤飯を作る家庭があります。食紅などで米へ色を付け、炊き上げたあとに甘納豆を加える作り方も見られます。
すべての地域や家庭で同じではなく、小豆を使う赤飯もあります。珍しい料理として面白がるだけでなく、家族や地域によって受け継がれる味の違いとして楽しみます。
北海道の食材を普段の料理へ取り入れる
北海道料理を続けるために、毎回郷土料理を一品完成させる必要はありません。普段のみそ汁へじゃがいもと玉ねぎを入れる、焼き鮭へバターを少量添えるなど、小さな取り入れ方もできます。
鮭
鮭は、焼く、煮る、蒸す、汁物へ入れるなど、幅広く使えます。生鮭、塩鮭、冷凍品では塩分と水分が違うため、料理に合わせて選びます。
鍋やちゃんちゃん焼きには、味を調整しやすい生鮭が向いています。塩鮭を使う場合は、だしやみその塩分を減らします。
昆布
北海道では、利尻昆布、羅臼昆布、日高昆布、真昆布など、地域や種類によって異なる昆布が生産されています。それぞれだしの香りや厚み、煮たときの食感に違いがあります。
最初から高価な昆布を複数買い比べず、だしと煮物の両方に使いやすい一袋を選びます。使用後の昆布も、細く切って煮物やつくだ煮へ使えます。
じゃがいも
じゃがいもは、品種によって煮崩れやすさと食感が異なります。鍋や煮物には形を保ちやすい品種、いももちやマッシュにはつぶしやすい品種を選ぶと扱いやすくなります。
品種名を覚えることだけが目的ではありません。同じ料理を別のじゃがいもで作り、ほくほく感や粘りの違いを比べることも楽しみになります。
豆と小麦
小豆、金時豆、大豆などは、甘い煮豆だけでなく、汁物、サラダ、炊き込みご飯へ使えます。乾燥豆は種類に合った浸水と加熱が必要なので、最初は水煮を使っても構いません。
小麦はパン、麺、菓子へつながります。北海道産小麦の商品を選び、普段のパンやうどんで味の違いを確かめる方法もあります。
乳製品
牛乳、バター、チーズ、生クリームは、菓子だけでなく、スープ、グラタン、魚料理へ使えます。みそ、鮭、じゃがいもとも合わせやすく、和風の料理へ少量加えるだけでも印象が変わります。
乳製品を使えば北海道らしくなると考えて大量に加えず、だしや素材の味が残る量から試します。
普段の道具で十分に始められる
北海道料理のために、専用の大鍋や鉄板を最初から購入する必要はありません。家庭の鍋とフライパンがあれば、石狩鍋、ちゃんちゃん焼き、いももち、豚丼を作れます。
最初に必要なもの
・ふた付きの鍋
・大きめのフライパン
・包丁とまな板
・ざるとボウル
・菜箸またはトング
・計量カップと計量スプーン
・保存容器
続けるなら用意したいもの
・卓上で使える鍋
・魚を扱いやすい骨抜き
・食品用温度計
・じゃがいも用のマッシャー
・厚手の煮込み鍋
・乾物や豆を分ける保存容器
最初は買わなくてよいもの
・大型の鉄板
・ジンギスカン専用鍋
・業務用の燻製設備
・大量の海産物
・大型の圧力鍋
・郷土料理用の食器一式
専用鍋には、その料理を作りやすくする形がありますが、一度試すだけなら代用できることもあります。ジンギスカンを何度も作り、余分な脂の流れ方に不便を感じた段階で専用鍋を検討すれば十分です。
家庭で安全に楽しむために
鮭、たら、いかなどを扱った包丁、まな板、トング、皿は、加熱後の料理や生で食べる薬味へそのまま使いません。野菜を先に切り、最後に魚や肉を扱うと分けやすくなります。
魚、肉、卵などは中心まで十分に加熱します。家庭での食中毒予防では、中心部を75℃で1分以上加熱することが一つの目安です。厚い鮭や羊肉は、表面の色だけで判断しません。
石狩鍋やちゃんちゃん焼きでは、鮭に骨が残っていることがあります。子どもや高齢の人が食べる場合は、盛りつけるときにも骨を確認します。
ジンギスカンなどの焼き肉では、生肉をつかむトングと、焼けた肉を取る箸を分けます。野菜も、生肉の汁へ長く触れたものは十分に加熱します。
鍋、煮物、汁物を保存する場合は、鍋のまま室温へ長く置きません。浅い清潔な容器へ小分けして速やかに冷蔵または冷凍し、再加熱では全体をよく混ぜながら十分に温めます。
かに、えび、乳製品、小麦、そば、卵などを使う料理もあります。人へ出すときは、加工品や調味料も含めて原材料とアレルギー表示を確認します。
続けるほど変わる五つの楽しみ方
第1段階 鮭と野菜の一鍋を完成させる
最初は生鮭、じゃがいも、大根、豆腐を使い、みそ味の石狩鍋を作ります。魚を崩さず加熱し、野菜とともに一つの器へ取り分けます。
具を増やすことより、昆布だし、鮭、みその濃さを確かめることが最初の目標です。手持ちの材料で無理なく完成させます。
第2段階 焼く料理と汁物を作り分ける
ちゃんちゃん焼きと三平汁へ進み、同じ鮭でも蒸し焼きと煮込みで食感が変わることを比べます。生鮭と塩鮭の違いも意識します。
一種類の魚を複数の方法で調理すると、料理名を増やすだけでなく、加熱と味付けの考え方が見えてきます。
第3段階 農産物と乳製品へ広げる
いももち、豆料理、コーンスープなどを作り、じゃがいもの品種や豆の種類を変えます。バターや牛乳も、魚や野菜の味を隠さない量で取り入れます。
海鮮料理だけではない、畑と酪農から育った北海道の食卓へ関心が広がります。
第4段階 地域と歴史から料理を選ぶ
石狩、十勝、道南、オホーツクなど、地域を一つ選び、その土地の産業や食材と結びつく料理を調べます。アイヌ民族の食文化については、当事者や文化施設の発信から学びます。
料理名だけでなく、保存方法、行事、働く人々の食事、移住の歴史を見ることで、一皿の背景が深まります。
第5段階 季節ごとの北海道の食卓を育てる
春はアスパラガス、夏はとうもろこし、秋は鮭とじゃがいも、冬は鍋や豆の煮込みというように、季節から献立を考えます。手に入る食材を見ながら、主菜、汁物、副菜を一つの食卓へまとめます。
旅先や店で食べた料理を自宅で作り直したり、家族と地域ごとの違いを話したりすると、味の記憶が台所へつながります。名物を数多く再現するより、その土地の背景を大切にしながら、また作りたい料理を増やしていくことが深い楽しみになります。
あわせて楽しみたい関連する趣味
魚料理
魚料理は、魚の種類や脂、身の厚みに合わせ、焼く、煮る、蒸すなどの火入れを楽しむ趣味です。北海道料理では鮭、たら、にしん、いかなどがさまざまな郷土料理へ使われるため、切り身の扱いを知ると石狩鍋やちゃんちゃん焼きも作りやすくなります。
最初から一尾をさばかず、下処理済みの切り身を使って加熱と骨の確認から始められます。
煮込み料理
煮込み料理は、魚、肉、豆、野菜を水分とともに加熱し、具材の味を煮汁へ重ねる趣味です。石狩鍋、三平汁、豆料理、豚肉の煮込みなどを作るときに、火加減と水分量の考え方が役立ちます。
寒い日に鍋を囲む料理だけでなく、翌日に味がなじむ料理へも楽しみを広げられます。
和食
和食は、米、だし、魚、肉、野菜、豆、海藻などを、季節と食べる人に合わせて組み合わせる楽しみ方です。北海道料理にも昆布だし、みそ、しょうゆ、煮る・焼くといった技法が使われますが、地域の歴史と食材によって独自の形へ育っています。
全国の料理と比べながら、昆布の使い方、鮭の保存、甘納豆の赤飯などの違いを見ると、北海道の食卓をより具体的に知れます。
鮭と野菜を鍋へ入れるところから、北海道の食卓が見えてくる
北海道料理を始めるために、大きなかにも、何種類もの海鮮も必要ありません。鮭の切り身とじゃがいも、大根、豆腐を一つの鍋へ入れ、昆布だしとみそで味を整えるところから始められます。
次の休日には、二人分の生鮭と、冷蔵庫にある野菜を用意してみてください。根菜を先に煮て、鮭と豆腐を加え、最後にみそを少しずつ溶きます。
鮭を一口食べたあと、だしを含んだじゃがいもを味わい、次は豆腐とねぎを一緒にすくう。同じ鍋の中でも、材料ごとに違う味と食感が残っています。
その次には鮭をキャベツと蒸し焼きにし、じゃがいもをいももちへ変え、昆布を煮物へ使ってみる。一品ずつ作るうちに、海鮮や観光の名物だけではなかった、海、畑、酪農、移住した人々の暮らし、そして独自に受け継がれてきたアイヌ民族の文化へと続く、広い北海道の食卓が少しずつ見えてきます。
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