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ビートメイクの楽しみ方

はじめに

画面に並ぶ小さなマスへ、低いキックの音を一つ置く。

少し離れた場所へスネアを加え、その間を細かなハイハットで刻んで再生すると、数秒前まで静かだった部屋に一定のリズムが流れ始めます。同じ音を並べているだけなのに、位置を少しずらしたり、一音だけ抜いたりすると、落ち着いたビートにも、前へ走るようなビートにも変わります。

ビートメイクは、パソコンやスマートフォンなどを使い、ドラム、ベース、サンプル、電子音などを組み合わせてリズムを作る趣味です。ヒップホップと深く結びついた表現として発展してきましたが、現在はローファイ、R&B、ポップス、ダンスミュージック、映像用の音楽など、さまざまな作品づくりへ広がっています。

「音楽経験がなくても作れるのだろうか」「高価な機材が必要なのでは」「サンプリングは自由に使ってよいのか」と迷う人もいるでしょう。けれど、最初に必要なのは大きな機材ではなく、手持ちの端末と音楽制作アプリ、音を確認できるイヤホンやヘッドホンです。

キック、スネア、ハイハットを並べ、短いベースを重ねる。まずは8小節ほどのビートを一つ完成させるところから、音を組み立てる休日を始められます。


ビートメイクの基本情報

主な楽しみ方 ドラムやベース、サンプルなどを組み合わせ、短いビートから一曲分の音源へ育てる

おすすめの頻度 週2〜3回

1回の制作時間 約60〜125分

短時間で楽しむ場合 約20〜40分で、数小節のリズムを作る

主な場所 自宅の机、個人作業環境、必要に応じて音楽スタジオ

最初の入口 無料の制作アプリで、キック、スネア、ハイハットを並べる

最初に必要なもの パソコン、スマートフォンまたはタブレット、制作ソフト、音を確認する機器

楽しさの中心 音の質感、リズムの間、反復と変化、サンプルの切り分け、低音の重なり

ビートは、単に一定の速さでドラムを鳴らすものではありません。どの拍へ音を置くか、少し前後へずらすか、どこで音を抜くかによって、曲の歩き方や揺れ方が変わります。

音楽制作全般を指すDTMの中でも、ビートメイクはリズムと音の質感を中心に組み立てる活動です。歌詞や長い旋律がなくても、数種類の音だけで一つの作品を作れます。

完成したビートは、そのままインストゥルメンタルとして聞くほか、ラップや歌を重ねたり、ダンスや映像へ合わせたりできます。誰かに使ってもらうことを前提にせず、自分だけの短い音の記録として残す楽しみ方もあります。

ビートメイクにかかる費用

入力データでは初期費用約3万円、年間費用約3万4,000円とされていますが、すでに使える端末があれば、最初はほとんど費用をかけずに始められます。ビートを一つ作るたびに材料が減る趣味でもないため、一回ごとの消耗品費は基本的に必要ありません。

費用の中心は、制作ソフト、ヘッドホン、入力機器、追加音源、保存環境です。最初からすべてを購入せず、今の制作で不足しているものだけを追加します。

手持ちの端末で始める場合

制作アプリ 無料から

イヤホンやヘッドホン 手持ち品を使用

付属するドラムや音源 追加費用なし

保存先 端末の空き容量を利用

初期費用 0〜5,000円ほど

無料で利用できる制作環境でも、ドラムを並べ、音を切り、重ね、音量を調整して書き出すところまで体験できます。機能の多さより、音を置いて再生する流れが分かりやすいものを選びます。

スマートフォンやタブレットは、画面を指で触れてドラムパッドを演奏しやすく、思いついたときに短いビートを残せます。パソコンは、曲全体を見渡しながら細かな編集や音量調整を行いやすい環境です。

どちらから始めてもかまいません。最初は手元にあり、何度も開きやすい端末を使う方が、操作を覚える負担を抑えられます。

有料ソフトを使う場合

入門版やスマートフォンアプリ 数百〜1万円ほど

一般的な買い切り型DAW 約1万〜6万円

上位版 約7万〜10万円を超えることもある

月額や年額のサービス 月数百〜数千円ほど

ビートメイクに向く制作ソフトには、ドラムパターンをマス目へ入力するもの、音の断片をパッドへ割り当てるもの、録音や曲全体の編集まで行えるものがあります。

価格が高いほど初心者に使いやすいとは限りません。収録されている音の数、使えるトラック数、録音機能、パソコンの対応環境などが異なるため、無料版や体験版で短いビートを作ってから選びます。

上位版には多くの音源やエフェクトが含まれますが、最初のビートに必要なのは数種類です。使い切れない機能へ費用をかけるより、画面を開いて迷わず音を置けることを優先します。

最初に加えやすい機材

有線ヘッドホン 約3,000〜2万円

小型のMIDIパッド 約7,000〜2万円

小型MIDIキーボード 約5,000〜2万円

外付けストレージ 約5,000〜2万円

マウスや端末スタンド 必要に応じて数千円から

MIDIパッドは、複数の四角いパッドを指でたたき、ドラムやサンプルを入力する機器です。画面へ一音ずつ置く方法より、指でリズムを試したい人に向いています。

ただし、パッドがなくてもビートは作れます。マウスやタッチ操作で音を置く方法に不便を感じてから購入しても遅くありません。

MIDIキーボードは、ベースやコード、短い旋律を入力するときに役立ちます。鍵盤を弾けない場合も、一音ずつ探して録音できますが、画面入力で十分なら後回しにできます。

音源やサンプルにかかる費用

制作ソフトの付属音源 追加費用なし

無料配布のドラムキット 利用条件を確認して使用

買い切りの音源集 数百〜数千円以上

月額のサンプルサービス 月数百〜数千円ほど

音源やサンプルを増やし始めると、少額の購入が重なりやすくなります。最初は付属音源だけを使い、どの種類の音が不足しているのか分かってから追加します。

低いキック、短いスネア、閉じたハイハット、開いたハイハット、ベースが一つずつあれば、基本的なビートは作れます。何百種類もの音を集めても、選ぶだけで制作時間が終わってしまうことがあります。

初年度の費用目安

手持ちの端末と無料ソフト 0〜1万円ほど

有料ソフトとヘッドホン 約2万〜6万円

パッドやキーボードも追加 約4万〜10万円

パソコンや録音機材も新調 約10万〜25万円以上

週2〜3回制作しても、そのたびに料金が発生するわけではありません。有料の月額サービスを契約しなければ、二年目以降は保存機器や必要な音源を追加する程度で続けられます。

費用を抑えるなら、無料ソフト、付属音源、手持ちの有線イヤホンから始めます。一つのビートを完成させる前に、新しいソフトや音源を買い足さないことも大切です。

ビートメイクをおすすめする3つの理由

1.少ない音だけで、はっきり違うリズムを作れる

キック、スネア、ハイハットという三種類の音だけでも、並べる場所を変えれば多くのビートを作れます。一拍目と三拍目へキックを置くのか、二拍目の直前へ小さなキックを加えるのかで、同じ速さでも身体の揺れ方が変わります。

音を増やさなくても、一つ抜くことで印象は変わります。四小節目だけスネアを止める、最後のハイハットを開いた音へ替えるなど、小さな選択が区切りを生みます。

複雑な旋律を考えられない日にも、リズムの間を整えるだけなら取り組めます。数秒の反復が気持ちよく聞こえたとき、そこから曲を広げたくなります。

2.音を切り分け、別の表情へ組み直せる

ビートメイクでは、一つの長い音を短く切り、順番を入れ替えて使うことがあります。ピアノの一音、声の断片、環境音なども、切り出す位置や再生速度によって別の質感へ変わります。

同じ素材でも、最初の部分だけを使う、後ろから再生する、高さを変える、細かく刻むなど、組み立て方は一つではありません。元の音をそのまま流すのではなく、選んだ断片を新しいリズムへ組み込めます。

ただし、市販曲や他人の録音を使う場合は、権利の確認が必要です。最初は制作ソフトに付属し、利用条件を確認できる素材や、自分で録音した音を使うと管理しやすくなります。

3.歌、ラップ、ダンス、映像を支える音へ広がる

ビートは一人で聞く作品としても成立しますが、別の表現を受け止める土台にもなります。ラップを乗せるなら言葉が入る間を残し、歌を重ねるなら旋律を邪魔しない音域へ整えます。

ダンス用なら、身体が動きを合わせやすい低音やアクセントをはっきりさせられます。映像用なら、場面の長さに合わせて音を減らしたり、切り替わる瞬間へ変化を置いたりできます。

自分だけで完成させることも、誰かの表現と組み合わせることも選べます。短いビートが別の作品へ入ったとき、作った本人にはなかった使われ方が見えることもあります。

DTMとビートメイクの違い

DTMは、デジタル機器を使った音楽制作全般を表す広い言葉です。作曲、編曲、歌や楽器の録音、ミキシング、楽譜制作なども含まれます。

ビートメイクは、その中でもリズム、ドラム、ベース、サンプルなどを中心に音楽を組み立てる楽しみです。明確な境界があるわけではなく、ビートへ歌や旋律を加え続ければ、一般的な楽曲制作と重なる部分も増えていきます。

最初から言葉を厳密に分ける必要はありません。ドラムの並びと音の質感を考える時間が特に楽しいなら、ビートメイクを入口にすると制作の方向を絞りやすくなります。

最初の制作環境を整える

ビートメイクの机に、大型のスピーカーや多くの機材は必要ありません。端末、音を確認する機器、安定した椅子があれば始められます。

ノートパソコンを使う場合は、画面をのぞき込む姿勢にならないよう、高さを少し上げます。MIDI機器を置くなら、肩を上げずに指が届く位置へ置き、使わない機材を机へ並べすぎないようにします。

制作前には、端末の保存容量も確認します。音源やサンプルは少しずつ増え、録音や書き出しを重ねると、思っていた以上に容量を使うことがあります。

最初に作るフォルダは、簡単なもので十分です。

曲ごとのプロジェクト

使用したサンプル

書き出した音源

制作中のメモ

素材の利用条件

ファイルが別々の場所へ散らばると、後からプロジェクトを開いたときに音が見つからないことがあります。使った素材を曲のフォルダへまとめて保存できる機能があれば利用します。

最初の8小節を作る

初めてのビートは、一曲分の長さにしなくてもかまいません。8小節ほどを作り、音声ファイルへ書き出すところまで進めます。

テンポを決める

テンポは曲の速さです。数字だけでは分かりにくいため、再生しながら手や足で拍を取り、落ち着いて数えられる速さへ調整します。

速いビートを作りたい場合も、入力中は少し遅くしてかまいません。音の位置が整ってから、本来の速さへ戻します。

キックを置く

キックは、低く短いドラムの音です。ビートの重心を作り、身体が踏み込む場所を示します。

最初は一拍目と三拍目など、分かりやすい位置へ置きます。すべての場所へ入れず、低音が鳴らない時間も残します。

スネアを加える

スネアは、ビートを区切る鋭い音です。四拍子では二拍目と四拍目へ置く形から始めると、拍の位置をつかみやすくなります。

スネアの音色には、硬いもの、軽いもの、長く響くものがあります。最初はキックと聞き分けやすく、短くまとまる音を選びます。

ハイハットで間を刻む

ハイハットは、拍の間を細かく刻む高い音です。まず一定の間隔で並べ、途中で速度が変わらないようにします。

すべて同じ強さにすると機械的に聞こえる場合は、一つおきに少し弱くします。細かな音を増やす前に、ゆっくりした並びを安定させます。

ベースを重ねる

ベースは、ドラムの低音と曲の音程をつなぐ役割を持ちます。最初は一つか二つの音だけを使い、キックと近い位置へ置きます。

ベースとキックが同時に鳴ると低音が厚くなりますが、どちらも大きすぎると輪郭が分かりにくくなります。ベースを一時的に高い音域で確認し、音程が決まってから低く戻す方法もあります。

一度書き出す

8小節ができたら、完璧になるまで画面の中へ置いておかず、一度音声ファイルへ書き出します。イヤホン、スマートフォンのスピーカーなどで聞き、気になることを一つだけ残します。

キックが大きすぎた。

ハイハットが途中で速くなった。

四小節目に変化が欲しい。

ベースが聞こえにくかった。

次に直す場所が一つ分かれば、最初の制作として十分です。

音色は、数より役割で選ぶ

ドラムキットを開くと、似たようなキックやスネアが何十種類も並んでいます。一つずつ試し続けると、曲を作る前に疲れてしまいます。

最初は、音の名前より役割で選びます。

低く丸いキック

短く硬いスネア

細く軽いハイハット

少し長く響くアクセント

柔らかいベース

一つのキットから選んだ音は、質感がまとまりやすい傾向があります。慣れるまでは複数の音源を行き来せず、一つのセットを使って数曲作ってもかまいません。

音が気に入らないときも、すぐ別の音へ替えるだけが方法ではありません。音の始まりを短くする、低い部分を少し減らす、響きを短くするといった調整で、ビートへなじむことがあります。

グルーヴは、少しのずれから生まれる

画面上のマス目へ正確に音を置くと、一定のリズムになります。これはビートの土台として大切ですが、すべての音が同じ強さと正確な位置へ並ぶと、硬く聞こえることもあります。

音をマス目へそろえる機能は、クオンタイズと呼ばれます。演奏したパッドのずれを整えるときに便利ですが、強くかけすぎると指でたたいた揺れまで消える場合があります。

スウィングと呼ばれる機能を使うと、細かな音の間隔が均等ではなくなり、少し跳ねるような流れを作れます。数値を大きく変える前に、ハイハットだけへ少し加え、違いを聞きます。

音の位置だけでなく、強さにも差を付けます。すべてのハイハットを同じ音量にせず、強い音と弱い音を交互に置くと、前後の動きが感じられることがあります。

最初から人間らしい揺れを作ろうとして、音を無作為にずらす必要はありません。基本の拍を理解したうえで、どの音だけを遅らせたいか、どの音を弱くしたいかを選びます。

サンプルを切って並べる

サンプルは、録音された音の一部を素材として使うものです。長い演奏をそのまま流すほか、短く切ってパッドへ割り当て、別の順番で鳴らすこともできます。

最初は、制作ソフトに付属する短い素材を使います。二小節ほどの演奏を四つに分け、それぞれを順番どおりに鳴らしたあと、中央の二つを入れ替えてみます。

再生する順番を変える

音の始まりを少し切る

高さを上げ下げする

一部分だけ繰り返す

後ろから再生する

最後を急に止める

同じ素材でも、切り方によってリズムの聞こえ方が変わります。細かく分けるほどよいわけではなく、自分が使いたい特徴が残る長さを探します。

自分で素材を録る方法もあります。机を軽くたたく音、鍵を置く音、紙をめくる音、短い声などを録音し、ドラムやアクセントとして使えます。

録音するときは、家族や周囲の会話、テレビ、屋外のアナウンスなどが意図せず入らないようにします。公開する作品へ他人の声が入る場合は、本人の了承も必要です。

一つのループから曲へ広げる

気持ちのよい8小節ができても、同じ部分を繰り返すだけでは、曲全体の変化が生まれにくくなります。新しい音を作り続ける前に、今ある音を出したり止めたりして順番を作ります。

最初の8小節 サンプルと小さなハイハット

次の8小節 キックとスネアを加える

次の16小節 ベースを加えて全体を鳴らす

次の8小節 ドラムを減らして間を作る

最後の16小節 全体を戻して終わる

このような簡単な構成でも、始まり、広がり、静かな部分、戻る場所が生まれます。全体を見たときに、音が多い区間と少ない区間が分かれているかを確認します。

ラップや歌を入れる予定がある場合は、最初から音を詰め込みすぎません。声が入る音域や、言葉が聞こえる隙間を残します。

一人で聞くビートでも、全編を最大の音量で鳴らし続ける必要はありません。低音を一度止めるだけで、戻った瞬間の重さが強く感じられます。

ミキシングは、音の居場所を整える

各パートを並べたら、音量と左右の位置を整えます。聞こえない音をすべて大きくすると、全体が混み合い、キックやスネアの輪郭も埋もれます。

最初に、すべての音量を少し下げます。そのうえで、ビートの中心にしたいキック、スネア、サンプルなどから順番に調整します。

キックとベースが互いを隠していないか。

スネアだけが急に大きくないか。

ハイハットが耳へ刺さる音になっていないか。

サンプルが中央へ集まりすぎていないか。

静かな部分へ不要な音が残っていないか。

エフェクトを増やす前に、音量だけで聞きやすい状態を目指します。響きを加えるリバーブは空間を広げますが、多すぎるとドラムの輪郭が遠くなります。

制作中は小さめの音量でも確認します。音量を下げたときにキックだけが消える、スネアだけが飛び出す場合は、パートのバランスを見直します。

サンプリングと著作権を分けて考える

ビートメイクでは、サンプリングという言葉をよく目にします。しかし、インターネットで見つけた音や市販曲の一部を、自由に切り取って公開できるわけではありません。

既存の楽曲には、作詞や作曲に関する権利のほか、演奏や録音された音源に関わる権利があります。短い部分だから、音を加工したから、収益化しないからという理由だけで、許可が不要になるとは限りません。

初心者が公開作品を作るときは、次の素材から選ぶと管理しやすくなります。

自分で演奏・録音した音

制作ソフトに付属する素材

購入したサンプルパック

公開や商用利用が認められた素材

使用許可を得た音源

利用条件には、楽曲へ組み込める範囲、商用利用、クレジット表記、素材単体の再配布禁止などが書かれています。「ロイヤリティーフリー」という表示だけで判断せず、実際の利用規約を確認します。

購入履歴、ライセンス、ダウンロードした日、素材名は、曲のフォルダへ一緒に残します。共同制作や販売へ進んだときにも、どの音をどの条件で使ったか説明しやすくなります。

権利処理が分からない既存曲は、個人の練習だけにとどめます。公開したい作品では、最初から使用条件を確認できる素材へ置き換える方が安心です。

プロジェクトと音源を失わないために

制作ソフトのプロジェクトには、音の並びだけでなく、使用した素材や機器の設定が含まれています。端末の故障や誤削除が起きると、長く作っていたビートを開けなくなることがあります。

作業中のデータは、端末だけでなく、外付けストレージやクラウドなど別の場所にも複製します。自動保存が有効でも、作品の区切りごとに別名で保存します。

ファイル名は、完成という言葉だけを増やすより、日付や番号を付けます。

曲名_01

曲名_02

曲名_arrange03

曲名_mix02

曲名_20260804

制作ソフトのプロジェクトだけでなく、再生できる音声ファイルも書き出して残します。将来ソフトや追加音源が変わっても、その時点の作品を聞き返せます。

使用した音源を個別のファイルとして書き出す方法もあります。キック、スネア、ベース、サンプルなどを分けて残しておけば、別のソフトへ移すときや、誰かと共同制作するときに役立ちます。

自宅で制作するときの音への配慮

ヘッドホンを使えば、スピーカーから大きな音を出さずに作業できます。しかし、自分にしか聞こえないため、長時間のうちに音量が上がりやすくなります。

端末の最大音量に対して六割以下を一つの目安とし、静かな部屋で必要以上に大きくしないようにします。低音が聞こえにくいときも、すぐ全体の音量を上げず、ほかのパートを一時的に小さくします。

一時間ほど作業したら再生を止め、静かな時間を作ります。耳鳴り、音がこもる感じ、いつもと違う聞こえ方が残る場合は、その日のヘッドホン作業を終えます。

スピーカーを使う場合は、早朝や深夜を避けます。キックやベースの低音は、聞こえる音量が小さくても、床や壁を通して隣室へ伝わることがあります。

スピーカーや機材を床へ直接置かず、安定した台や振動を抑える用品を使います。ただし、簡単なマットだけで完全に防音できるわけではないため、時間帯と音量の調整が基本です。

MIDIパッドを強くたたく音や、机へ指が当たる振動も残ります。集合住宅では、ヘッドホンを使っているから無音だと思わず、深夜は画面入力や音の整理へ切り替えます。

画面と身体を休ませる

ビートメイクでは、短い音を繰り返し聞きながら、画面上の細かなマスや波形を長く見続けます。集中していると、肩や手首を動かさないまま時間が過ぎやすくなります。

一時間を超えて連続作業せず、次の作業へ入る前に10〜15分ほど画面から離れます。途中にも短い小休止を入れ、立つ、遠くを見る、肩や指を動かす時間を作ります。

画面の上端を目の高さと同じか少し下へ置く

画面から40センチ以上を目安に距離を取る

肩を上げずに入力機器へ手が届くようにする

足裏を床や足台へ置く

文字や波形を小さくしすぎない

手首を反らせたまま操作しない

休憩中は別の画面を見続けない

首、肩、腰、手首へ痛みやしびれが出たら、作品を仕上げるまで我慢しません。机、椅子、端末の高さ、入力方法を見直し、症状が続く場合は医療機関へ相談します。

機材を増やす前に、一つ完成させる

ビートメイクを始めると、制作動画や機材紹介を通して、多くのソフトや音源が目に入ります。新しい機材を使えばよいビートが作れるように感じますが、選択肢が増えすぎると、制作より設定へ時間を使うことがあります。

一つの作品ごとに、小さな制限を決めます。

使用するドラムキットは一つ

サンプルは一つだけ

長さは一分以内

使うパートは五つまで

追加音源は買わない

三回目の書き出しで一区切りにする

一作品へ、知っている技術をすべて入れる必要はありません。ハイハットを整える曲、サンプルを切る曲、低音を少なくする曲というように、一つずつ試します。

完成後に気になるところがあれば、次のビートで直します。同じ作品を何か月も修正し続けるより、短い作品を複数作った方が、自分の好みや苦手な部分を見つけやすくなります。

続けるほど変わる五つの楽しみ方

第1段階 三つのドラム音で8小節を作る

最初はキック、スネア、ハイハットを並べます。複雑な音を使わず、同じ速さで8小節を再生できる形を作ります。

音色が理想と違っていても、一度書き出します。自分で置いた音が同じ順番で鳴り始めたところに、最初の作品が残ります。

第2段階 同じリズムへ、小さな変化を付ける

四小節目の最後だけ音を加える、一つのキックを抜く、ハイハットの強さを変えるなど、反復の中へ変化を作ります。

新しい音を増やすより、すでにある音の位置と強さを調整します。同じパターンをもう一度作れるようになると、偶然だったリズムが自分の技術へ変わります。

第3段階 サンプルとベースから、自分の音を選ぶ

ドラムへサンプルやベースを重ね、どの音を前へ出すか考えます。切り方、再生速度、音の高さを変え、素材を自分のビートへなじませます。

使う音の種類や余白の取り方に、自分なりの好みが見えてきます。派手な音を重ねることより、何を使わないか選べるようになる段階です。

第4段階 一つのループを、曲の流れへ広げる

8小節のループから、始まり、展開、静かな部分、戻る場所を作ります。ラップや歌を想定する場合は、声が入る余白も残します。

数曲を同じテーマで作り、似たドラムや音色を使うこともできます。一つのビートではなく、作品全体の雰囲気を考える楽しさが生まれます。

第5段階 誰かの言葉や動きへ、ビートを渡す

完成したビートは、ラップ、歌、ダンス、映像、ゲームなどへ広げられます。相手が使いやすい長さや構成に整え、音源を分けて渡すこともあります。

販売や収益化だけが最終地点ではありません。友人の映像へ短い音を付ける、ダンサーの練習用ビートを作る、初心者と制作方法を共有するなど、音を介した関わり方があります。

生活が忙しい時期には、十秒のドラムパターンだけを残してもかまいません。大きな作品を作れないときにも、小さな音を一つ置くことで制作を続けられます。

あわせて楽しみたい関連する趣味

DTM

DTMは、ビートだけでなく、作曲、編曲、録音、ミキシングなどを含む音楽制作全般です。ビートへ歌や楽器を重ね、一曲として仕上げたいと感じたときに、自然につながります。

ビートメイクで覚えた音の配置やリズムは、幅広い楽曲制作の土台になります。反対に、DTMのすべてを覚えず、ビート作りだけを深める楽しみ方もできます。

音楽の楽しみ方

音楽を意識して聞くと、キックが入る場所、低音が止まる瞬間、サビの前で音数が減る構成などに気づきやすくなります。好きな曲をそのまま写すのではなく、リズムや展開を自分の言葉で整理すると、制作へ持ち帰れます。


ヒップホップダンス

ヒップホップダンスでは、低音、スネア、細かな音の違いを身体で受け取りながら踊ります。自分で作ったビートに合わせて足を動かすと、どの音が聞き取りやすく、どの部分に変化が必要かを別の角度から確かめられます。

ダンサーの動きを見ながらビートを作ると、音を聞かせるだけでなく、身体が動ける間やアクセントを考えるきっかけになります。


一つのキックから、音の景色が広がっていく

初めてビートを作る日は、キックとスネアを並べても、好きな曲のようには聞こえないかもしれません。音源を何度も替え、どれを選べばよいのか分からなくなることもあります。

そんなときは、使う音を三つに戻します。キックを一つ置き、少し離れた場所へスネアを置き、その間をハイハットでつなぐ。四小節目だけ一音を抜き、8小節を一度書き出します。

ビートメイクは、機材や音源を集めることだけを楽しむ趣味ではありません。同じ音の位置を少し変え、強さを調整し、鳴らさない場所を選ぶ。その小さな判断から、自分だけの揺れや重さを作っていく時間です。

次の休日は、手持ちの端末で使える無料の制作アプリを開き、低い音を一つ置いてみます。長い曲を目指さず、30秒だけでも再生できる形にします。

再生ボタンを押すと、置いたキックが一定の間隔で鳴り、スネアがその間を区切っていく。

何もなかった画面から最初のリズムが聞こえたところで、ビートを作る休日が始まります。


休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも思わず試してみたくなる趣味を丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。

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