正月飾り作りの楽しみ方
わらを編んだ丸い土台を机へ置き、松の枝を斜めに添える。
まだ固定していないのに、金色の水引を重ね、白い紙飾りを置いた瞬間、素朴な輪が急に新年らしい姿へ変わります。少し離れて眺め、松の角度を直し、小さな赤い実を一つ加える。飾りを増やすほどよいわけではなく、最後に残す余白まで含めて一つの形になります。
「しめ飾りと門松では、どちらを作ればよいのかな」
「わらを自分で縄にするところから始めるのだろうか」
「作った飾りは、いつ飾って、どのように片付ければよいのかな」
正月飾り作りは、華やかな材料を集めるだけの工作ではありません。松、わら、紙、水引など、古くから使われてきた素材の意味に触れながら、新しい年を迎える場所を自分の手で整える時間です。
初めてなら、完成済みのしめ縄土台へ松や水引を飾る小さなしめ飾りから始められます。縄をなう難しい工程を省いても、材料の向きや重なりを考える楽しさは十分に味わえます。
正月飾り作りの基本情報
一回の標準実施時間 約135分
短く取り組む場合 約45分
準備と片付けを含む総所要時間 約165分
想定頻度 月2回程度
主な場所 自宅の机、工作スペース、地域の文化講座やワークショップ
正月飾りの制作は、主に秋から年末へ集中します。月2回という想定には、図案を考える日、素材を選ぶ日、水引や紙飾りを練習する日、完成品を補修・整理する日も含めています。
45分ほどの日は、色合わせを考える、紙垂や小さな水引飾りを作る、土台へ材料を仮置きするところまで進められます。約135分取れる日は、小型のしめ飾りなら、配置決めから固定、吊り下げ部分の確認まで終えやすいでしょう。
政府広報では、門松は年神を迎える目印、しめ飾りは迎える場所が神聖であることを示すもの、鏡餅は年神への供え物として紹介されています。形や使う植物、飾る期間には地域差があるため、家や土地の慣習を大切にしながら作ります。
正月飾り作りの費用
初期費用 0円〜約90,000円
標準的な初期費用 約15,000円
一回の費用 0円〜約4,000円
標準的な一回の費用 約600円
年間費用 約19,500円
今回の想定は、自宅で年間24回ほど、制作や材料準備へ取り組む場合です。はさみ、ペンチ、定規などを持っていて、余った水引や紙を活用できれば、道具代をほとんどかけずに試せます。
標準的な初期費用には、しめ縄土台、松や稲穂などの材料、水引、紙飾り、ワイヤー、接着用品、作業面を保護するマットなどをそろえる場合を含めています。生の植物を使うか、ドライ素材や造花を使うかでも金額は変わります。
一回約600円は、余っている材料を生かしながら、小さな飾りや部品を作る場合の編集上の目安です。大きなしめ飾りを一から仕上げる日や、生花店で松、南天、稲穂などをそろえる日は、数千円ほどかかることがあります。
年間約19,500円は、道具を数年使う前提で年換算した目安です。初年度に約15,000円分をまとめて購入すれば、その年の現金支出とは一致しません。
節約するなら、最初は必要量がまとまった一作品用キットを選びます。何種類もの水引や飾りを単品で買うより、完成後に余る材料が少なく、次に必要なものも判断しやすくなります。
3つのおすすめ
1.わらの土台へ一つ加えるたび、新年の形が現れる
作り始めのしめ縄土台は、色も形も素朴です。そこへ松を一本添えると縦の流れが生まれ、水引を重ねると中央へ視線が集まり、白い紙飾りを加えると全体が明るく引き締まります。
面白いのは、材料を増やすことだけが正解ではないところです。赤い実を三つ置いたあと、一つ外したほうが松の形がよく見えることがあります。左右をそろえず、片側へ稲穂を流すことで、軽やかな動きが出ることもあります。
仮置きの段階では、材料を何度でも動かせます。正面から見るだけでなく、玄関へ掛けたときの目線まで想像しながら、上下や左右の重さを整えます。
最後の一本を固定した瞬間、別々だった素材が一つの飾りへ変わります。短い時間でも、制作前と完成後の違いをはっきり感じられる手仕事です。
2.素材の形から、込めたい願いを選べる
正月飾りには、松、竹、梅、稲穂、水引、紙垂など、さまざまな素材や意匠が使われます。すべてを盛り込むのではなく、その年に大切にしたいものを一つ選ぶと、飾りにまとまりが生まれます。
松を主役にしてすっきりまとめる。稲穂とわらを中心に、素材本来の色を残す。紅白や金銀の水引を加え、晴れやかな印象にする。同じ丸い土台でも、選ぶ材料によって静かな飾りにも、華やかな飾りにもなります。
地域によっては、土地に身近な植物や生活道具を思わせる形を取り入れたしめ飾りが受け継がれています。全国の形をそのまま混ぜるより、身近な地域の正月飾りを調べると、材料の意味と暮らしとのつながりも見えてきます。
何となく選んでいた飾りにも背景があると分かると、手芸材料だった松や稲穂が、新年へ込める小さな言葉のように感じられます。
3.作る時間が、年末の区切りになる
正月飾りを作る日は、普段の工作とは少し違います。
材料を広げる前に机を片付け、玄関の汚れを拭き、どこへ飾るかを確かめる。制作そのものだけでなく、家の一角を整えるところから新年の準備が始まります。
一年を振り返りながら、今年は落ち着いた色にする。家族が好きな赤を一つ入れる。玄関が狭いから、昨年より小さく作る。暮らしに合わせた選択が、その年だけの形になります。
完成した飾りを玄関へ掛けると、家の中から見ていた年末が、外からも分かる形になります。忙しい時期の中で、手を止めて新しい年を迎える準備をしたという記憶まで、飾りと一緒に残ります。
最初の作業場所では、机と飾る場所を先に測る
制作前に、完成品を飾る場所を決めます。玄関扉、壁、棚の上では、使える大きさと固定方法が異なります。扉の開閉、インターホン、表札、郵便受けを妨げないかも確認します。
マンションや賃貸住宅では、共用部分への飾り付けや、扉へ粘着フックを付けることが制限されている場合があります。管理規約を確認し、難しい場合は玄関の内側や室内の棚へ飾れる小型作品にします。
机には作業用マットを敷き、右利きなら右側にはさみやペンチ、左側に材料を置くなど、刃物と細かな飾りを分けます。長い松やわらを扱う日は、照明や食器へ当たらない広さも必要です。
完成品は思ったより厚みが出ます。平らな机では整って見えても、壁へ掛けると上部が前へ傾くことがあるため、途中で一度立てて見ます。
最初の材料は、完成済みの土台と三種類の飾りで選ぶ
初回は、わらを一から縄にするのではなく、直径15〜20cmほどの完成済みしめ縄土台を使うと進めやすくなります。
飾りは、主役になる松や葉物、色を添える水引、中央をまとめる紙飾りや小さな実ものの三種類ほどに絞ります。材料が少ないほうが、どこへ何を置くかを考えやすく、固定部分も隠しやすくなります。
屋外へ飾る場合は、雨風に弱い紙、生花、接着剤だけで固定した軽い部品が向かないことがあります。玄関の内側なら繊細な和紙や水引、屋外なら落下しにくい素材というように、飾る環境から逆算します。
地域の伝統的な形を作りたい場合は、動画だけを見て自己流で再現するより、公民館や博物館、保存団体の講座を利用する方法もあります。地域のわらの扱い方や縄の向きまで教わると、見た目だけでは分からなかった違いに触れられます。自治体や公民館でも、地域文化の継承を目的としたしめ飾り作りが行われています。
初めての一日は、小さなしめ飾りを一つ完成させる
初日の目標は、豪華な門松や大きなしめ縄を作ることではありません。完成済みの土台へ三種類ほどの材料を固定し、飾れる状態にすることです。
まず、土台へ松、水引、紙飾りを置き、写真を一枚撮ります。いったんすべて外し、最も大きな松や葉から固定します。その上へ水引を重ね、最後に中央の小さな飾りを置くと、結束部分を隠しやすくなります。
ワイヤーは裏側でねじり、飛び出した先端を短く切って内側へ倒します。接着剤を使う場合も、接着だけへ頼らず、重い材料はワイヤーやひもで支えます。
最後に吊り下げ用のひもを付け、実際の壁や扉へ掛けます。少し傾いたら、飾りを外して作り直すのではなく、裏側のひもの位置を動かして整えます。
最初の一作では、左右が完全にそろわなくても構いません。玄関へ掛けたときに松の形が見え、部品が落ちず、自分が選んだ一色がきれいに残っていれば、十分に完成です。
最初に必要なもの
最低限必要なもの
完成済みのしめ縄土台、松や葉などの主材料、水引や紙飾り、固定用のワイヤーまたは丈夫なひも、はさみが基本です。太い茎やワイヤーを切る場合は、材料に合うペンチやニッパーを使います。
あると便利なもの
作業用マット、定規、仮止め用のマスキングテープ、細かな部品を扱うピンセットがあると、配置を整えやすくなります。グルーガンを使う場合は、耐熱性のある置き台も用意します。
続けるなら用意したいもの
花材用のはさみ、複数の太さのワイヤー、水引を折らずに保管する細長い箱、完成品を一時的に置ける平箱が役立ちます。毎年の写真と材料を記録しておくと、翌年の大きさや色を考えやすくなります。
後回しにできるもの
大量の花材、電動工具、大型の門松用資材、多種類の接着剤、専門的な縄ない道具は、最初の一作には必要ありません。作りたい形と飾る場所が定まってから加えます。
安全に楽しむために
はさみやニッパーは、切る材料に合うものを使います。硬いワイヤーを手芸用のはさみで無理に切ると、刃が欠けたり、切った先端が飛んだりすることがあります。顔を近づけず、切る方向に人がいないことを確認します。
切ったワイヤーの先端は鋭いため、裏側へ折り込み、テープや別の素材で覆います。床へ落ちた短い線材は見つけにくいので、作業後に机と足元を確認します。
グルーガンや熱で溶かす接着器具は、本体だけでなく、溶けた接着剤も高温です。使用中は立てたまま放置せず、子どもやペットの手が届かない場所で扱います。熱を使わずに済む作品なら、ワイヤー、ひも、両面テープなどを使う方法もあります。
松葉、わら、乾燥した植物から細かな破片やほこりが出ることがあります。換気しながら作業し、目や皮膚に刺激を感じたら手を洗って中止します。植物アレルギーがある場合は、造花や紙素材へ置き換えます。
ろうそく、照明器具、暖房機器の近くへ飾らず、扉の開閉や強風で落下しないことを確かめます。屋外の飾りは雨や風で緩むことがあるため、ときどき固定部分を確認します。
正月飾りを外す時期や納め方は地域によって異なります。神社や地域のどんど焼きへ持参する場合は、受入日時と、針金、プラスチック、造花などを外す必要があるかを事前に確認します。どんど焼きは、しめ縄などを持ち寄って焚き上げる小正月の行事として現在も行われていますが、すべての施設が家庭の飾りを受け入れるわけではありません。
家庭ごみとして片付ける場合は、自治体の分別方法へ従います。例えば横浜市では、しめ飾りは大きさによって燃やすごみまたは粗大ごみとされていますが、地域によって扱いは異なります。自宅で燃やすことはせず、素材を分けて指定日に出します。
続けるほど変わる五つの楽しみ方
1.小さなしめ飾りを完成させる
完成済みの土台へ松、水引、紙飾りを固定します。玄関へ安全に掛けられれば、最初の一作は完成です。
2.同じ大きさで配置を整える
前年と同じ土台を使い、松の角度や水引の位置を変えます。以前の写真と比べることで、何を動かすと全体が整うのか見えてきます。
3.素材に込める意味を選ぶ
稲穂を主役にする、紅白だけでまとめる、地域の植物を一つ取り入れるなど、飾る理由から材料を選びます。自分の暮らしに合う形が少しずつ育ちます。
4.地域の形や素材を深める
公民館や文化施設の講座へ参加し、縄のない方や紙飾りの作り方を学びます。同じ正月飾りでも、土地によって形が異なることを実物から確かめられます。
5.年末の行事として残す
家族と材料を選ぶ、制作日を毎年決める、完成写真を一冊へ残すなど、暮らしの予定として続けます。販売や展示へ進まなくても、一年に一度、自分の家へ合う一つを作ることが大切な完成形になります。
この五つは、正式な進級の順番ではありません。完成済みの土台を毎年使うこと、紙飾りだけを作る年、忙しくて市販品を選ぶ年があっても、自然な続け方です。
あわせて楽しみたい関連する趣味
フラワーアレンジメント
フラワーアレンジメントでは、松、葉、実ものなどを、飾る場所に合わせて組み合わせます。花材の向きや高さ、余白の取り方を知ると、正月飾りの材料を増やしすぎず、全体を整えやすくなります。
ドライフラワー
ドライフラワーは、植物を乾燥させ、色や形の変化を楽しむ趣味です。正月飾りへ乾いた実や穂を加えたいときに、湿気を残さず保管する方法や、崩れやすい素材の扱いが役立ちます。
切り絵
切り絵は、紙を切り抜き、残した線と空間から模様を作る趣味です。扇、鶴、松竹梅などの小さな紙飾りを自分で作れば、しめ飾りへ手作りの白や金の形を添えられます。
最初の一飾りは、松を一本置くところから
次の休日にできる最初の一歩は、たくさんの縁起物を買い集めることではありません。小さなしめ縄土台を一つ選び、その上へ松を一本置いてみます。
少し右へ傾ける。
中央へ水引を重ねる。
最後に白い紙飾りを一つ添える。
机の上にあった素朴な輪が、新しい年を迎えるための形へ変わったとき、年末の忙しさの中にも、立ち止まって季節を整えた時間が残ります。
完成した飾りを玄関へ掛け、外から一度眺める。
家へ入るたびにその形が目に入れば、新年を待つ時間は、作った日から静かに始まっています。
休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも、思わず試してみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
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