水中スクーターの楽しみ方
水面へ身体を浮かべ、両手で小さな機体のグリップを握る。
ボタンを押すとプロペラが回り始め、先ほどまで止まっていた身体が、海の中をすっと前へ進んでいきます。
強くフィンを動かしているわけでも、波に押されているわけでもありません。機体が生み出す力へ身体を預けるだけで、水中の景色が次々と後ろへ流れていきます。
水中スクーターは、バッテリーで動く小型の推進装置です。
シースクーター、ダイビングスクーター、DPVなどと呼ばれることもあり、両手で持つタイプを中心に、シュノーケリングやスキューバダイビングへ組み合わせて使います。
水面から魚を眺めながら進む。
少し離れた岩場まで移動する。
水中で身体を水平に保ちながら、景色の中を滑る。
泳いで進むのとは違う軽さと速度感があり、いつもの海遊びを少し未来的な体験へ変えてくれます。
ただし、操作が簡単に見えても、水中スクーターだけで安全に泳げるわけではありません。
バッテリーがなくなれば止まります。海には流れがあり、周囲には遊泳者や船がいます。プロペラへ髪や服が巻き込まれる可能性もあります。
初めは、ガイド付きのシュノーケリングツアーや、専門スタッフのいるプール体験で試す方法がおすすめです。
水中スクーターの楽しさは、ただ速く進むことではありません。
自分の力だけでは移動しにくかった範囲へ、少ない動きで近づけること。移動へ使う力を抑え、その分だけ周囲の景色をゆっくり見られること。
海の中を「泳ぐ場所」から「巡る場所」へ変えてくれる道具です。
※この記事では、初心者がガイド付きのシュノーケリングや浅い水域で体験する場合を中心に紹介します。スキューバダイビングでの使用には、ダイビング技術と器材管理に関する知識が別に必要です。
まず知っておきたい基本情報
実際に使用する時間 約20〜50分
説明や着替えを含む体験時間 約2〜4時間
おすすめの始め方 水中スクーター付きのガイドツアー
体験ツアーの費用 約12,000〜20,000円
購入する場合の本体価格 入門機で約40,000円台から、高性能機は数十万円
初回に必要な道具の購入 基本的になし
おすすめの頻度 暖かい季節に数回、または旅行先で一回から
天候への影響 とても大きい
施設・ガイドへの依存 初めは大きい
楽しさの中心 水中を滑る感覚、移動範囲の広がり、魚や地形の観察
隠岐の公式観光サイトには、ガイド同行のシースクーター&シュノーケリングツアーとして、約3時間30分、12,100円のコースがあります。無人島コースは基本料金14,300円に船代4,400円が加わります。波の状態によって当日に中止される場合もあります。
機体を購入する場合は、性能による価格差が大きくなります。
初心者向けとして販売されたHAGUL EZには、税込44,000円の価格例があります。一方、最大速度や推進力を高めた上位機種には、税込495,000円の例もあります。
最初から購入するより、体験で操作感や重さを確かめてから考える方が無理のない始め方です。
水中スクーターをおすすめしたい3つの理由
水中を滑るような移動感がある
水中スクーターの大きな魅力は、泳いでいるときとは違う速度で景色が動くことです。
両手でグリップを持ち、身体を水平に近づける。ボタンを押すと、機体が身体ごと前へ引いてくれます。
水の抵抗を感じながら進むため、陸上の乗り物のような速さではありません。それでも、水中では少し速度が上がるだけで、体感が大きく変わります。
岩場が近づいてくる。
魚の群れの横を通る。
水面から入る光の下を進む。
自分が泳いで景色へ近づくというより、海の中を乗り物で巡っているような感覚があります。
入門向け機種にも、時速約4〜5キロメートルの二段階速度を備え、ボタンを離すと停止する設計の製品があります。
速さを最大まで上げる必要はありません。
最初は低速で操作へ慣れ、景色を見る余裕を残して進む方が、水中スクーターらしい楽しさを感じやすくなります。
泳ぐ力を移動だけに使わずに済む
シュノーケリングでは、魚の多い場所へ行くためにフィンを動かし続けることがあります。
移動だけで疲れてしまうと、目的の場所へ着いた頃には、落ち着いて景色を見る余裕がなくなることもあります。
水中スクーターを使うと、機体が進む力を補ってくれます。
腕や脚をまったく使わないわけではありませんが、移動中の負担を抑えやすく、その分だけ水中の観察へ気持ちを向けられます。
ただし、「泳げなくても安全に海へ出られる道具」ではありません。
故障や電池切れが起きれば、自分で浮き、岸や船へ戻らなければなりません。水泳やシュノーケリングの基礎を持ったうえで、移動を助ける道具として使います。
泳ぐことを置き換えるのではなく、海の楽しみ方を広げる補助道具です。
いつもの海遊びに新しい目的が生まれる
水中スクーターは、単体で速さを楽しむだけではありません。
シュノーケリングと組み合わせる。
水中撮影を楽しむ。
地形に沿ってゆっくり移動する。
同じ海岸を違うコースで巡る。
使い方によって、休日の目的が変わります。
一度目は、機体に引かれて進む感覚を楽しむ。
二度目は、速度を抑えて魚を探す。
慣れてきたら、どのくらいの距離を進んだら引き返すか、バッテリーをどこまで残すかを考える。
ただ遊ぶだけだった道具が、安全な計画を立てて水中を巡る趣味へ変わっていきます。
シュノーケリングやダイビングとの違い
水中スクーターは、それだけで完結するマリンスポーツというより、ほかの水中活動へ加える道具です。
シュノーケリングと組み合わせる場合
基本的には水面付近を移動し、マスクとシュノーケルで水中を眺めます。
初心者向けツアーも、この形が比較的参加しやすい入口です。
浮力体を着用し、ガイドの近くで低速から始めます。
スキンダイビングや素潜りと組み合わせる場合
息を止めて水中へ入るため、シュノーケリングより安全管理が難しくなります。
スクーターがあるから長く潜れるわけではなく、息止め時間や深度を機械の力で伸ばそうとすることは危険です。
バディによる監視や、息止め潜水そのものの講習が必要です。
スキューバダイビングで使う場合
呼吸器、タンク、浮力調整具を身につけた状態で、水中の移動を助ける道具として使います。
水中スクーターを操作しながら、深度、残圧、方向、仲間との距離も管理しなければなりません。
機体に表示される深度や方角だけへ頼らず、ダイブコンピューターやコンパスなど、通常のダイビング器材を併用するようメーカーも注意しています。
初めて水中スクーターを使うなら、シュノーケリングのガイドツアーから始める方が分かりやすいと思います。
初めてならガイド付き体験を選ぶ
水中スクーターは、ボタンを押せば動く機種が多く、操作そのものは複雑ではありません。
しかし、海で安全に使うには、操作以外の判断が必要です。
どこから入るか。
どこまで進んでよいか。
どの方向へ戻るか。
周囲に遊泳者や船がいないか。
バッテリーをどこまで残すか。
風や流れが変わっていないか。
初めての人が、このすべてを同時に判断するのは簡単ではありません。
ガイド付きツアーでは、その日の海況に合わせて活動範囲を決め、機体の操作、停止方法、持ち方、周囲との距離を教えてもらえます。
体験を選ぶときは、次の内容を確認します。
料金に含まれるもの 水中スクーター、マスク、シュノーケル、フィン、浮力体、ウェットスーツ、保険
参加人数 ガイド一人に対して何人で行動するか
活動場所 水面付近か、ダイビングを伴うか
実際の使用時間 何分ほど操作できるか
参加条件 年齢、泳力、健康状態
施設 更衣室、シャワー、ロッカー
中止条件 波、風、雷、視界不良時の対応
泳ぎが苦手な場合は、申し込み前に伝えます。
機体が引いてくれるから大丈夫と考えず、浮力体を着用し、ガイドがすぐ支えられる少人数の内容を選びます。
一回に必要な時間と費用
水中スクーターの連続使用時間は機種や速度によって変わります。
入門向け機種には通常使用で最大約50分とする製品がありますが、実際のツアーでは一人がその時間ずっと使い続けるとは限りません。参加人数、海況、休憩、安全確認によって使用時間は短くなります。
ツアー全体では、次のような時間が必要です。
受付。
着替え。
機体と器材の説明。
浅い場所での操作練習。
海への移動。
水中スクーター体験。
シャワーと着替え。
半日ツアーなら、約2〜4時間を見ておくと安心です。
費用の目安は次のとおりです。
ガイド付きツアー 約12,000〜20,000円
交通・駐車場 約1,000〜8,000円
船で移動する場合 料金込み〜約5,000円
飲み物・食事 約500〜2,000円
合計 約14,000〜30,000円
旅行先の体験では、宿泊費や航空券が加わります。
入力データにある一回200円、年間4,400円は、水中スクーターのレンタルやガイドを含む費用としては現実的ではありません。
自分の機体を持ったあとも、交通、駐車場、施設利用、充電、保守などが必要です。
購入は、何度か体験してから
水中スクーターは、機種によって大きさ、重さ、速度、対応深度、使用時間が異なります。
初心者向けの軽量モデル。
シュノーケリング向けの低速モデル。
深度や方角を表示するダイビング向けモデル。
高い推進力を持つ専門的なモデル。
性能が高いほど、自分に向いているとは限りません。
速さが出る機体は、周囲との距離や停止するまでの余裕が必要です。重い機体は持ち運びや水への出し入れが負担になります。
選ぶときは、次の点を確認します。
使う活動 シュノーケリングか、スキューバダイビングか
本体重量 一人で水辺まで運べるか
速度 低速から切り替えられるか
対応深度 自分の活動範囲に合うか
使用時間 帰りの余力を確保できるか
浮力 手を離したときに浮くか沈むか
安全装置 ボタンを離したときに停止するか
保守と修理 国内で点検や部品購入ができるか
最初はレンタルを利用し、重さと操作感を確かめます。
年に一度しか使わないなら、購入せずツアーを利用する方が、保管やバッテリー管理の負担を抑えられます。
初めての日に持っていくもの
器材付きツアーなら、持ち物はそれほど多くありません。
水着
バスタオル
全身の着替え
飲料水
日焼け止め
濡れてもよい履物
健康保険証または必要な本人確認書類
ツアーによっては、マスク、シュノーケル、フィン、ウェットスーツ、浮力体まで借りられます。
自分の機体を持参する場合は、充電状態と本体の損傷だけでなく、バッテリー、プロペラ周辺、スイッチ、リーシュなどを点検します。
説明書を持参するか、スマートフォンで確認できるようにしておくと安心です。
当日の流れ
海へ入る前に操作を確認する
電源の入れ方、速度変更、停止方法を陸上で確認します。
プロペラが回る部分へ指や衣類を近づけません。
空中で長時間回転させると、モーターへ負担がかかる機種もあります。メーカーの説明書では、水の外で連続運転しないことや、砂や貝殻などを吸い込ませないことが注意されています。
浅い場所で低速から始める
最初は足の届く場所やプールで、低速モードから試します。
ボタンを離すと停止するか。
身体を左右へ向けると、機体がどう動くか。
手を離した場合に浮くか。
浮力体を着けた状態で姿勢を保てるか。
これらを確認してから、ガイドの指定する範囲へ進みます。
景色を見る余裕を残して移動する
速さばかりへ意識を向けると、周囲の遊泳者や地形を見落としやすくなります。
前方だけでなく、左右と下も確認します。
魚を追いかけない。
岩やサンゴへ近づきすぎない。
ほかの人の進路を横切らない。
水中スクーターは生き物へ急接近するための道具ではありません。
静かに距離を取り、観察することを優先します。
バッテリーを残して引き返す
電池が少なくなってから戻り始めるのでは遅くなります。
メーカーの取扱説明書でも、使用中は残量を確認し、電池が切れる前に安全に帰れるようにすることが求められています。
ガイドが設定した折り返し地点を越えず、帰りに泳ぐ可能性も考えて余力を残します。
安全に楽しむために
水中スクーターで特に気をつけたいのは、プロペラ、周囲との衝突、バッテリーです。
メーカーの説明書では、髪や衣類をプロペラへ近づけないこと、使用中は同行者が近くで監視すること、船や遊泳者との衝突を避けることが示されています。
基本として、次の点を守ります。
一人で使用しない
泳力を超える範囲へ行かない
指定された浮力体やダイビング器材を使う
長い髪はまとめる
ゆったりした服や紐をプロペラへ近づけない
船、遊泳者、岩場へ近づきすぎない
定格深度を超えない
電池切れになる前に戻る
異音や浸水があれば使用を中止する
水中スクーターは救命具ではありません。
動かなくなったときにも、自分で水面を保ち、岸や船へ戻れる範囲で使います。
海の状態が悪い日には、機体の性能が高くても使用しません。
使用後の手入れ
海水で使ったあとは、真水で塩分や砂を洗い流します。
プロペラ周辺へ砂や海藻が残っていないかを確認し、風通しのよい場所で乾燥させます。Sublue Japanも、海水で使った機体は真水で洗浄し、塩分と汚れを落として乾燥させることを案内しています。
濡れたままバッグへ入れたり、直射日光の当たる車内へ長時間放置したりしません。
バッテリーの充電や保管は、機種の説明書に従います。
本体や手が濡れた状態でバッテリーを交換しないよう注意している製品もあります。
飛行機で運ぶときは事前確認が必要
水中スクーターには、リチウムイオンバッテリーを使用する機種があります。
旅行先へ持っていく場合は、本体とバッテリーのワット時定格量、取り外しの可否、航空会社の規定を確認します。
HAGUL EZの内蔵バッテリーは92.88Whで、メーカーは通常の機内持ち込み範囲内と案内していますが、航空会社ごとに規定が異なるため、事前確認が必要です。
ANAも、危険物に該当する可能性がある製品は、取扱説明書や安全データを確認し、輸送可否を事前に確かめるよう案内しています。確認できない場合は、輸送を断られることがあります。
旅行の直前に持ち込めないと分かることを避けるため、購入時からバッテリー容量と航空輸送条件を確認しておきます。
年に一度の旅行で使うなら、現地レンタルの方が気軽な場合もあります。
続けるほど変わる5段階の楽しみ方
1.低速で進む感覚を知る
最初はプールや浅い海で、ガイドと一緒に操作します。
ボタンを押す。
数メートル進む。
離して止まる。
まずは速度より、機体の反応を知る段階です。
2.姿勢を整えて安定して進む
身体を水平に近づけ、進みたい方向へ機体を向けます。
腕で強く押さえ込まず、身体ごと自然に引かれる姿勢を見つけます。
余計な力が抜けると、周囲の景色を見る余裕が生まれます。
3.水中観察と組み合わせる
魚や岩場を見つけたら、少し手前で停止します。
移動するときだけスクーターを使い、観察するときは静かに浮く。
速度と停止を使い分けることで、ただ移動する遊びから、水中を巡る趣味へ変わります。
4.安全なコースを考える
経験を重ねたら、ガイドや仲間と活動範囲を考えます。
風向き。
流れ。
バッテリー残量。
休憩場所。
引き返す時刻。
遠くへ行くことより、安全に戻れる計画を立てられたことが上達になります。
5.撮影やダイビングへ楽しみを広げる
水中カメラで移動の様子を撮る。
季節ごとに同じ海を巡る。
資格を取得してダイビングで使う。
機種ごとの操作感を比べる。
水中スクーターは、単独で記録を競うより、ほかの水中活動と組み合わせるほど楽しみが増える道具です。
ただし、撮影へ集中しすぎて、周囲やバッテリーを見落とさないことが大切です。
こんな人におすすめ
シュノーケリングへ新しい楽しさを加えたい人。
水中を乗り物のように移動してみたい人。
泳ぐだけで疲れ、景色を見る余裕がなくなりやすい人。
魚や地形を、少し広い範囲で観察したい人。
機械を操作する遊びが好きな人。
旅行先で印象に残るマリン体験を探している人。
一方で、一人で自由に遠くまで行きたい人には向きません。
使用場所、安全を見守る人、浮力体、泳力、電池残量が必要です。機体を購入すれば、どこでも使えるわけでもありません。
まずはガイド付きの体験で、低速から試すのがおすすめです。
最初は、数メートル進めれば十分
水中スクーターの映像を見ると、透明な海を高速で進み、深い場所を自由に巡る姿が目に入ります。
けれど、最初の一日に遠くまで行く必要はありません。
浅い場所で機体を持つ。
低速で数メートル進む。
ボタンを離して止まる。
身体の向きを変える。
周囲を見て、ガイドの近くへ戻る。
それだけでも、泳いでいたときとは違う水中の動きを感じられます。
水中スクーターは、海を簡単にする魔法の道具ではありません。
自分の泳力と安全な範囲を守りながら、移動を少し軽くし、これまで見られなかった景色へ近づくための道具です。
最初は、機体と器材を借りられるガイドツアーから。
水から上がったあとにも、身体がすっと前へ引かれた感覚や、流れていった水中の景色が心に残っていたなら、次は速度を落として、もう少しゆっくり海の中を巡ってみたくなると思います。
休日のよりみち帖では、気軽に始められるものから、少し時間をかけて育てていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。
「次の休日は何をしよう」と迷ったときに、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。
これからも、次にやってみたくなる趣味を一つずつ丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
