ギターの楽しみ方
左手の指で弦を押さえ、右手で六本の弦をゆっくりとなでる。少し濁った音の中に、確かに一つの和音が立ち上がります。
まだ曲にはなっていなくても、自分の手で鳴らした音には、スピーカーから流れてくる音楽とは違う手触りがあります。押さえる位置を数ミリ直し、もう一度弾いてみる。先ほどより澄んだ響きが返ってきた瞬間、ギターは眺める楽器から、自分で音楽を作る道具へ変わります。
興味はあっても、「指が痛そう」「楽譜が読めない」「一曲弾けるまでに長い時間がかかりそう」と感じる人は多いかもしれません。アコースティックギターとエレキギターのどちらを選べばよいのか、自宅で音を出しても大丈夫なのかも気になるところです。
けれど、ギターは最初から難しいコードを覚えたり、速いソロを弾いたりしなくても楽しめます。一つのコードを四回鳴らす、好きな曲の印象的な音を数音だけ探す、原曲よりずっと遅い速さでサビをなぞる。それだけでも、いつも聴いていた曲の内側へ少し入っていけます。
今回は、初めてギターに触れる人に向けて、種類の違い、費用、最初の一本の選び方、必要な道具、自宅練習の組み立て方、安全面までまとめます。
ギターは、一台で伴奏にも旋律にもなれる楽器
一般的なギターには六本の弦があり、左手で弦を押さえて音程を変え、右手の指やピックで音を鳴らします。複数の弦をまとめて弾けばコードによる伴奏になり、一本ずつ弾けばメロディーやギターソロになります。
同じギターでも、弦を上から下へ大きく振り抜くストローク、弦を一本ずつつまむアルペジオ、指と伴奏を組み合わせるフィンガースタイル、短いフレーズをつなぐリード演奏など、右手の動きによって役割が変わります。一人で歌を支えることも、バンドの中でリズムや音色を加えることもできる楽器です。
初めての一本としてよく選ばれるのは、アコースティックギター、エレキギター、クラシックギターの三種類です。形は似ていますが、音の出し方や弦の感触、得意な音楽は少しずつ違います。
アコースティックギターは、胴の空洞で弦の振動を響かせます。電源を使わず、本体だけで豊かな音が出るため、弾き語りやコード伴奏を楽しみたい人にはわかりやすい入口です。一方で生音が比較的大きく、金属弦には張りがあるため、自宅環境や指への負担も考えて選びます。
エレキギターは、本体に付いたピックアップで弦の振動を電気信号へ変え、アンプやヘッドホン機器を通して音を作ります。ロックだけの楽器ではなく、ポップス、ジャズ、ブルース、ファンクなど幅広い音楽で使われています。アンプへつながなければ生音は小さめなので、ヘッドホン対応機器を組み合わせると集合住宅でも練習方法を考えやすくなります。
クラシックギターは、一般的にナイロン弦を張り、丸くやわらかな音を響かせます。クラシック音楽、ボサノヴァ、独奏曲などに向き、指で弦を弾く演奏が中心です。金属弦より触れた感触はやわらかいものの、ネックの幅が広い製品が多いため、実際に構えたときの持ちやすさを確かめて選びます。
初めての人向けの基本情報
主な楽しみ方 自宅でコード、リズム、短いフレーズを練習し、好きな曲を少しずつ形にする
おすすめの頻度 週2〜3回を基本に、短い練習を間へ挟む
普段の練習時間 1回30〜60分ほど
じっくり取り組む休日 休憩を含めて60〜90分ほど
短時間で楽しむ場合 チューニングを含めて10〜20分から
主な場所 自宅、音楽教室、練習スタジオ、楽器演奏が認められた公共施設
必要な人数 一人から。慣れたら弾き語り、合奏、バンド活動へ広げられる
天候の影響 室内練習ならほとんど受けないが、木製の本体は急な温度・湿度変化を避ける
一回90分ほど練習できる日があっても、毎回同じ長さを確保する必要はありません。コードを一つ確認する日、曲のサビだけを繰り返す日、弦を張り替えて手入れをする日など、内容を小さく分ける方が生活へ取り入れやすくなります。
楽譜を読めなくても始められます。コードを押さえる位置は「コードダイアグラム」という図、単音の位置は「タブ譜」という線と数字を使った表記で確認できます。ただし、リズムや音の長さまですべて自動的にわかるわけではないため、最初は模範演奏の音も一緒に聞くと理解しやすくなります。
ギターにかかる費用
ギターは、本体を購入したあと毎回料金がかかる趣味ではありません。自宅で自主練習をするだけなら、一回ごとの支出はほぼなく、弦、ピック、教材などを必要な時期に購入します。
費用を考えるときは、「まず触れてみる費用」「本体と基本用品をそろえる費用」「購入後の消耗品」「教室やスタジオを利用する任意費用」に分けると整理しやすくなります。
まず試すなら、無料見学から5,000円ほど
楽器を持っていない段階では、楽器店の試奏、教室の体験レッスン、短期講座などを利用できます。見学や体験が無料の教室もあれば、2,000〜5,000円ほどかかる場合もあります。
体験時に楽器を借りられるなら、購入前にアコースティックとエレキを持ち比べてみるのもよい方法です。料金だけでなく、楽器貸し出しの有無、体験時間、個人かグループか、入会を前提とする内容かを確認しておきます。
アコースティックギターは、基本用品を含めて3万〜7万円ほど
入門向けのアコースティックギターは、本体だけなら2万〜5万円台を中心に探せます。ケース、チューナー、ピック、クロス、予備弦などを加えると、最初の予算は3万〜7万円ほど見ておくと選択肢を確保しやすくなります。
一万円台以下の製品にも弾けるものはありますが、弦が指板から離れすぎて押さえにくい、音程が安定しにくい、金属部分の仕上げが手に当たるといった個体では、練習そのものがつらくなります。価格だけで決めず、購入時に弾きやすい状態へ調整されているかを確かめることが大切です。
エレキギターは、音を出す機器まで含めて4万〜9万円ほど
入門向けのエレキギター本体は、3万円台から探せます。ただし、本体だけではエレキギターらしい音を十分に確認できないため、シールドケーブルと練習用アンプ、またはヘッドホンアンプなどを組み合わせます。
本体、ケース、チューナー、ピック、ケーブル、小型アンプをそろえるなら、4万〜9万円ほどが一つの目安です。集合住宅でヘッドホン練習を中心にする場合は、最初から大きなアンプを買わず、ヘッドホン出力のある小型アンプやコンパクトな練習機器を選ぶ方法もあります。
エフェクターは、音を歪ませたり、響きを加えたりする機器です。興味を引かれる道具ですが、最初はアンプに内蔵された音色だけでも十分に練習できます。自分が欲しい音の方向がわかってから一台ずつ加えた方が、使わない機材を増やさずに済みます。
クラシックギターは、2万〜6万円ほどから
入門向けのクラシックギターは、本体とケースを含めて2万〜6万円ほどから検討できます。椅子に座って本格的なクラシック奏法を学ぶ場合は、足台やギター支持具、譜面台などを追加することがあります。
同じナイロン弦でも、本体の大きさや弦の長さが異なる製品があります。クラシックギターらしい音だけでなく、ネックの幅と構えたときの身体への収まり方を見て選びます。
購入後の費用は、年間5,000〜2万円ほどから
自宅練習だけなら、主な継続費は弦、ピック、教材、手入れ用品です。弦一組は種類によって千円前後から数千円ほど、ピックは一枚100〜300円ほどで見つかります。
弦の交換時期は、毎月何回と固定するものではありません。表面の変色やざらつきが目立つ、音の伸びが減る、チューニングが安定しにくいといった変化を目安にします。演奏時間、汗の量、弦の種類、保管環境によって交換頻度は大きく変わります。
自分で交換するのが不安なら、楽器店へ依頼できます。一般的なアコースティックギターやエレキギターでは、全弦交換の工賃が1,500円前後から設定され、弦代が別にかかる例があります。初回は交換作業を見せてもらい、次から自分で試してみる方法もあります。
教室へ通うなら、月1万〜1万5,000円前後から
教室では、構え方、チューニング、コード、ストロークなどを順に学べます。現在の大手教室では、月3回程度のグループレッスンが月額1万円前後から、個人レッスンが1万2,000〜1万5,000円前後から設定されている例があります。
月謝のほかに、入会金、施設運営費、教材費、発表会費などがかかる場合があります。年間費用を考えるときは、表示された月謝だけでなく、毎月の施設費と任意イベントを分けて確認します。
独学を続けながら、最初の一か月だけ姿勢やコードの押さえ方を見てもらう方法もあります。毎週通うか独学だけにするかの二択ではなく、困ったところだけ単発や短期レッスンで整える形も選べます。
ギターをおすすめする3つの理由
1.指の位置を少し変えるだけで、響きが変わります
ギターでは、同じコードを押さえていても、指を立てる角度、弦へ触れる位置、右手の強さによって音が変わります。音が濁ったときに指を少し動かし、もう一度弾いて澄んだ響きが返ってくると、手の動きと音のつながりをはっきり感じられます。
最初の練習では、弾けない音も隠れません。けれど、そのぶん昨日との違いもよくわかります。鳴らなかった弦が一本だけ響くようになる、途中で止まっていたコード移動が一度つながるといった小さな変化が、音として残ります。
2.一人でも、曲の骨組みを作れます
コードを一定のリズムで鳴らすだけでも、歌やメロディーを支える伴奏になります。低い弦を強めに弾けば土台が生まれ、高い弦を軽く鳴らせば明るさが加わります。
慣れてくると、伴奏の途中へ短いメロディーを入れたり、低音と和音を交互に弾いたりできます。一台の中でリズム、和音、旋律の役割を行き来できるため、一人で練習していても曲全体を組み立てる感覚を味わえます。
3.好きな曲を、今の自分に合う形へ変えられます
原曲と同じ速さ、同じキー、同じ奏法で弾けなくても、ギターは楽しめます。テンポを落とす、難しいコードを押さえやすい形へ置き換える、ストロークを一回ずつにするなど、今の技術に合わせて曲を小さくできます。
同じ曲でも、強く刻めば勢いのある伴奏になり、弦を一本ずつ弾けば静かな雰囲気になります。カポタストという道具で音の高さを変えれば、歌いやすい高さへ調整することもできます。曲をそのまま再現するだけでなく、自分が弾きやすく、心地よい形を探せるところにギターの奥行きがあります。
最初の一本は、弾きたい音と練習環境から選ぶ
初心者向けのギターを探すときは、「一番簡単な種類」だけで決めるより、好きな曲で聞こえる音と、自宅で出せる音量を基準にします。
弾き語りや生音の響きに惹かれるなら、アコースティックギターが自然な候補です。ロックやバンドの音、音色を変える楽しさに興味があり、自宅ではヘッドホンを使いたいならエレキギターが合います。ナイロン弦の丸い音や独奏曲、ボサノヴァなどを弾きたいならクラシックギターを試してみます。
店頭では、次の点を確認します。
・椅子に座ったとき、胴が大きすぎず右肩が持ち上がらない
・ネックを握り込まなくても左手を動かせる
・一本ずつ弦を押さえたとき、極端に強い力を必要としない
・フレットの端が手へ当たらない
・ペグを回したときに引っかかりが少ない
・ケース、保証、購入後の調整が含まれているか
・何より、手に取ったときにもう一度弾きたいと思えるか
手が小さいから小型ギターでなければならない、とは限りません。小型でもネックの形が合わない場合があり、標準サイズでも薄いネックなら持ちやすく感じることがあります。数字だけで決めず、実際に構えて比べることが大切です。
中古品は、同じ予算で上位の製品を選べることがあります。ただし、ネックの反り、弦の高さ、フレットの減り、部品の不具合、修理歴は初心者には判断しにくい部分です。初めてなら、状態を説明してもらえ、購入後の調整を相談できる楽器店が安心です。
最初にそろえたい道具
最初に必要なもの
・ギター本体
・本体に合ったケース
・チューナー、またはチューナーアプリ
・ピックを使う場合は、厚さの違うものを2〜3枚
・本体と弦を拭くやわらかなクロス
・予備の弦一組
・エレキギターではシールドケーブルと、アンプまたはヘッドホン対応機器
チューナーは、弦の音程を確認する道具です。スマートフォンアプリでも代用できますが、周囲の音が多い場所では、ギターへ挟んで振動を拾うクリップ式が使いやすいことがあります。
ピックは、薄いものほど軽くしなり、コードを大きく鳴らしやすくなります。厚いものは単音を狙いやすい一方、最初は弦へ強く当たりやすく感じるかもしれません。数種類を試し、手から落としにくいものを選びます。
続けるなら用意したいもの
・ギタースタンド
・ストラップ
・カポタスト
・譜面台
・メトロノーム
・ストリングワインダー
・スマートフォンを置く小型スタンド
・録音に使うスマートフォンやレコーダー
ギタースタンドがあると、ケースから出す手間が減り、短い時間でも手に取りやすくなります。ただし、通路、暖房器具の近く、子どもやペットが触れやすい場所には置きません。
譜面や動画を低い机へ置くと、首を下へ向けたまま練習しやすくなります。譜面台やスマートフォンスタンドで目線を上げると、手元をのぞき込み続けずに済みます。
最初は買わなくてよいもの
・複数のエフェクター
・高出力の大型アンプ
・高価な録音機材
・用途の決まっていない交換用ピックアップ
・何冊もの教本や楽譜
・高級ケーブルや専門的な工具
道具が増えると、音作りの選択肢は広がります。その一方で、練習を始める前に設定へ時間を使いやすくなります。最初はチューニングし、一つの音色で曲へ向かえる構成にしておく方が、弾く時間を確保できます。
初めての30分は、一つのコードと短いフレーズを鳴らす
ギターを手にした初日は、一曲を完成させる日ではありません。ギターを安全に構え、六本の弦を合わせ、自分の手で音が変わる感覚を確かめる時間にします。
1.椅子と楽器の位置を整える
背もたれへ深く沈み込まず、両足が床へ着く椅子に座ります。ギターの胴を身体へ押しつけすぎず、肩が上がらない位置を探します。
左手だけでネックを支えようとすると、コードを押さえる指へ余計な力が入ります。右腕と身体で本体を安定させ、必要に応じてストラップも使います。
2.六本の開放弦を一本ずつ鳴らす
左手で弦を押さえず、太い弦から順に一本ずつ鳴らします。一般的な調弦は、太い方からE・A・D・G・B・Eです。
この段階では名前を暗記するより、太い弦の低い音から、細い弦の高い音へ移っていく違いを聞きます。ピックが隣の弦へ触れても気にせず、六本を順番に鳴らしてみます。
3.チューナーで音を合わせる
弦は、練習していない間にも少しずつ音程が変わります。演奏前にチューニングをする習慣をつけると、押さえ方が合っているのに曲が違って聞こえる、という混乱を減らせます。
ペグは一度に大きく回さず、チューナーを見ながら少しずつ動かします。どのペグがどの弦につながっているかわからないうちは、弦を軽く鳴らして動きを確認します。
4.一つのコードを鳴らす
最初のコードには、二本ほどの指で押さえられるEmなどが候補になります。コードダイアグラムを見ながら指を置き、六本の弦を一本ずつ確認してから、まとめてゆっくり鳴らします。
音が途切れたり、びりびりと鳴ったりしたら、力だけを強くするのではなく、指を金属のフレットに少し近づけます。指の腹が隣の弦へ触れていないかも確認します。一度澄んだ音が出れば、初日は十分です。
5.好きな曲の一部分へ触れる
コードを一つ鳴らしたあと、好きな曲で使われる短いフレーズやサビの最初を試します。難しければ、原曲を半分ほどの速さにし、二音や三音だけ取り出します。
一曲を最初から追うより、「この音を弾いてみたかった」と思える部分へ早めに触れた方が、練習の目的を持ちやすくなります。最初の課題曲は、憧れだけでなく、今の自分でも一部分へ届きそうかという視点で選びます。
週2〜3回の練習を続ける組み立て方
ギターは、一度に長く練習した日より、楽器へ触れる日が途切れない方が手の動きを思い出しやすくなります。週2〜3回を基本にしながら、時間がない日はチューニングとコード一つだけでも構いません。
30分練習する日は、次のように分けられます。
・3分 姿勢とチューニングを整える
・7分 前回覚えたコードや単音を確認する
・15分 曲の短い部分を繰り返す
・5分 通して一度弾き、短く録音する
60〜90分取れる日は、途中で腕を下ろす休憩を入れます。前半にコードや運指、後半に曲を置き、最後はすでに弾ける部分を一度鳴らして終えます。毎回新しい課題だけで終わると、できなかった印象ばかり残りやすくなります。
練習曲、教本、動画を同時に増やしすぎないことも大切です。最初の一か月は、一曲、一つの教材、一つの練習記録を中心にします。別の解説を見るのは、同じところで何度か止まったときに絞ると、指示の違いに迷いにくくなります。
録音は、上手な演奏を公開するためだけのものではありません。十秒から三十秒ほど残すと、演奏中には気づきにくいリズムの速まりや、音が小さくなる場所が見えてきます。一週間前の音と比べれば、変化が小さくても確認できます。
独学とレッスンは、途中で行き来してよい
独学では、好きな時間に好きな曲を選び、同じ場所を何度でも繰り返せます。コードダイアグラム、タブ譜、練習動画、テンポを変更できる音源なども利用できるため、自宅だけで一曲へ進むことも可能です。
ただし、自分では音が出ない原因を見分けにくいことがあります。指の力が足りないと思っていても、実際はギターの弦が高すぎたり、手首の角度が苦しかったりする場合があります。数週間試しても同じ場所で止まるなら、楽器店で本体の状態を見てもらうか、レッスンで姿勢を確認してもらいます。
教室を選ぶときは、先生の演奏歴だけでなく、自分が弾きたい音楽を扱えるかを見ます。弾き語り、ロックのリード、フィンガースタイル、クラシックでは、練習内容が異なります。
体験時には、次の点を確認します。
・初心者へチューニングや構え方から説明してくれる
・弾きたい曲や目標を聞いてくれる
・自宅でできる短い練習内容が具体的
・楽器の貸し出しや持ち込み条件がわかる
・月謝以外の施設費や教材費が明確
・振替、休会、退会の条件を確認できる
先生と相性がよくても、通う曜日や移動が負担になると続けにくくなります。対面の教室だけでなく、オンライン、月一回、短期講座なども含め、生活へ収まる形を選びます。
自宅では、音量と時間帯を先に決める
アコースティックギターは電源を使いませんが、胴から出る音は想像以上に壁や床へ伝わることがあります。窓を閉め、早朝と夜遅くを避け、同居する人や近隣の生活時間へ配慮します。
音を抑えるサウンドホールカバーや弱音用品もありますが、完全な消音にはなりません。右手を小さく動かす練習、弦へ軽く触れて音を短く止めるリズム練習、左手のコード移動だけを確認する練習など、音を大きく出さなくてもできる内容を使い分けます。
エレキギターは、アンプの代わりにヘッドホン対応機器を使うと、増幅された音を室内へ広げずに練習できます。ただし、弦を弾く生音や足音まで消えるわけではありません。ヘッドホンの音量も上げすぎず、長時間続けるときは静かな休憩を入れます。
原曲や伴奏を聞こえやすくするため、ギターの音を必要以上に大きくすることがあります。ギター、伴奏、動画の音量をそれぞれ下げても聞き分けられる位置を探し、耳が詰まったように感じる、耳鳴りがする、聞こえにくい状態が残る場合は使用をやめて休みます。
休日にしっかり音を出したいときは、時間貸しの練習スタジオや音楽室を利用する方法があります。自宅で小さな音だけを続けるより、ときどき通常の音量を確認すると、右手の強さやアンプの設定も理解しやすくなります。
手、肩、耳を疲れさせすぎないために
ギターを始めると、左手の指先に軽い痛みや硬さが出ることがあります。弦へ触れる刺激に慣れていないためですが、長時間我慢して押さえ続ける必要はありません。
鋭い痛み、しびれ、手首や肘の痛みが出たら練習を止めます。音が出ないときに親指と指板を強く挟み込むのではなく、姿勢、指の位置、ギターの調整を見直します。
手元を見ようとして首を曲げ続けると、肩や背中も疲れます。二十分ほどを目安に腕を下ろし、肩を回し、遠くを見ます。ストラップを使うと、座っているときも楽器の位置を安定させやすくなります。
弦を交換するときは、切った弦の先端をそのまま立てておかないようにします。細い金属弦は目や指へ当たりやすいため、向きを確認しながら作業し、外した弦は小さくまとめて処分します。初めてで構造がわからないときは、無理に部品を外さず楽器店へ相談します。
練習後の数分が、ギターを弾きやすい状態に保ちます
演奏後は、弦とネック、本体へ付いた汗や手の跡を乾いたやわらかなクロスで軽く拭きます。専用の薬剤は、本体の塗装や指板の材質によって使えないことがあるため、用途を確認せずに塗らないようにします。
保管場所は、直射日光、暖房や冷房の風、高温になる車内、急に湿度が変わる場所を避けます。ケースへ入れる場合も、濡れたクロスや飲み物を一緒にしまわないようにします。
スタンドへ置くなら、通路や不安定な床を避けます。ソファやベッドの上へ一時的に置くと、座る、踏む、床へ落とすといった事故につながりやすいため、戻す場所を一つ決めておくと安心です。
チューニングがすぐに狂う、弦が極端に押さえにくくなった、特定の場所だけ音が詰まる、部品が緩むといった変化があれば、練習方法だけの問題とは限りません。自分でネックや内部を大きく調整せず、購入店や修理受付へ状態を伝えます。
続けるほど変わる五つの楽しみ方
第1段階 一つの音とコードを、自分の手で鳴らす
最初は、六本の弦を合わせ、開放弦を一本ずつ鳴らします。コードが少し濁っていても、指の位置を直して一度澄んだ音が出れば、ギターと身体のつながりが見え始めます。
一曲へ急がず、ピックが弦へ当たる感触、押さえた指の下で音が変わる瞬間、音が消えていく長さを確かめます。
第2段階 二つのコードを、一定の拍でつなぐ
二つか三つのコードを覚えたら、速さよりも同じ間隔で鳴らすことを意識します。コードを替える間に音が止まっても、拍を声で数えながら手の動きを整えます。
右手のリズムが安定すると、使えるコードが少なくても曲らしさが生まれます。伴奏音源やメトロノームと合わせ、自分が急ぎやすい場所も見つけていきます。
第3段階 好きな曲を、自分に合う形で一曲通す
簡単なコードへの置き換えや、ゆっくりしたテンポを使い、一曲の始まりから終わりまで進みます。途中で間違えても止まらず、曲の流れへ戻る経験を重ねます。
弾き語りをする人は、歌と手を別々に練習してから合わせます。歌わない人は、メロディー、アルペジオ、印象的なギターリフなど、曲の中で弾きたい役割を選べます。
第4段階 音色と間の取り方に、自分の選択を加える
同じコード進行でも、ストローク、アルペジオ、低音の入れ方によって表情が変わります。強く鳴らす場所と小さくする場所、音を伸ばす場所と短く切る場所を考え、曲の雰囲気を組み立てます。
エレキギターではアンプやエフェクターによる音作り、アコースティックギターでは指弾きやハーモニクス、クラシックギターでは音色の弾き分けなど、選んだ楽器ならではの表現へ進めます。
第5段階 誰かの音と合わせ、演奏を残す
一人で弾いていた曲も、歌、ベース、カホン、別のギターと合わせると役割が変わります。自分が音を詰め込みすぎると相手が入りにくくなり、少し休むと全体が聞こえることもあります。
家族や友人との合奏、音楽サークル、バンド、短い録音など、開き方はさまざまです。人前で演奏しなくても、数か月ごとに同じ曲を録音すれば、自分の音を残す楽しみになります。教える、編曲する、地域の演奏活動を支えるなど、演奏の経験を誰かへ渡す道もあります。
あわせて楽しみたい関連する趣味
ウクレレ
ウクレレは、一般的に四本の弦を使う小型の弦楽器です。ギターとはコードの形や調弦が異なりますが、弦をまとめて鳴らすストロークや、コードを替えながら歌う感覚にはつながりがあります。
小さく軽い楽器へ持ち替えることで、ギターとは違う明るく短い響きを楽しめます。旅先へ持っていける楽器や、もう少し気軽に手に取れる弦楽器を探したくなったときにもおすすめです。
カホン
カホンは、箱形の本体へ腰かけ、手で正面を叩いて演奏する打楽器です。ギターのコードへ低音と高音のリズムを重ねるだけでも、二人の演奏に厚みが生まれます。
ギターを弾いていると、コードを押さえることへ意識が向き、拍の位置が曖昧になることがあります。カホンで身体からリズムを確かめると、ギターへ戻ったときのストロークや曲の区切りも捉えやすくなります。
音楽鑑賞
ギターを始めたあとに同じ曲を聴くと、それまで一つに聞こえていた音の中から、コード、低音、ドラム、歌の隙間へ入る短いフレーズが見えてきます。好きなギタリストの音だけでなく、その音が曲のどこで鳴り、どこで休んでいるかへ注目するのも楽しみ方の一つです。
ライブ版、弾き語り版、スタジオ録音などを聴き比べると、一曲に複数の形があることもわかります。演奏できない日にも耳から曲を深められ、次にギターを持ったときの表現へつながります。
六本の弦から、いつもの曲へ近づいていく
最初に鳴らしたコードは、きれいに六本すべてが響かないかもしれません。弦を押さえる指が途中で離れ、コードを替えるたびに曲が止まることもあります。
それでも、指を少し立てたら一本の弦が鳴る。昨日より一度だけ早く次のコードへ移れる。短いフレーズが原曲の音に重なる。ギターでは、そんな小さな変化がすべて自分の耳へ返ってきます。
初めの休日は、楽器店でアコースティック、エレキ、クラシックを一度ずつ構えてみるところからでも十分です。好きな曲の中で聞こえる音を店員へ伝え、無理なく抱えられる一本を探す。まだ購入を決めなくても、その場で弦を一本鳴らせば、音楽を聴く側から奏でる側への小さな一歩になります。
休日のよりみち帖では、気軽に試せるものから、少しずつ時間をかけて深めていくものまで、さまざまな趣味やレジャーを紹介しています。「次の休日は何をしよう」と迷ったとき、新しい楽しみを見つける小さなきっかけになれたらうれしいです。これからも思わず試してみたくなる趣味を丁寧に紹介していきますので、ぜひフォローして、次の記事も覗いてみてください。
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