道祖神輔米カットにしてくれ
床屋「今日はどんな感じのカットにしましょうか?」
客「道祖神輔米カットにしてください」
床屋「どうそ……すけべい?」
客「ちょっと、世界初のビジュアル系になり損なったバンド『ホムンクルスエイティーズ』のリードボーカル、道祖神輔米を知らないとか言い出すんじゃないだろうね?」
床屋「あいにく、不勉強なものでして……」
客「ほら、事務所から『中性的なイメージでいきましょう』と言われて、メンバー全員が中世ヨーロッパのイメージだと思い込み、ごつい甲冑姿でデビュー会見に現れた、ホムンクルスエイティーズの道祖神輔米を知らないとかないよね?」
床屋「いやあ……」
客「だから、ギターを地面に叩きつけて壊すパフォーマンスをやったら、ギターじゃなく地面の方が裂けて、現れた次元の狭間にギタリストが飲み込まれて消えてしまった。あの『パラレルワールドギタリスト事件』で有名な、ホムンクルスエイティーズの道祖神輔米だって」
床屋「はあ……」
客「あのさ、七十八歳になった今でも極彩色の甲冑姿でステージに立ち続け、『甲冑系バンド』という唯一無二のジャンルを確立したホムンクルスエイティーズの道祖神輔米を知らないなんて言わせないでくれよ?」
床屋「どうそしん……すけべいのことはさっぱり……」
客「じ!」
客「どうそ“じ”んっ!」
床屋「ど、どうそじん、ですね……」
客「……じゃあ、ツーブロックで」
床屋「かしこまりました」
……
床屋「いかがでしょう?」
客「これぞ、道祖神輔米だっ!」
床屋「千八百円になります」
客「また来るよ」
(終)
