クアラ・ヴェナ元大統領カットにしてくれ
床屋「今日はどんな感じのカットにしましょうか?」
客「ああ、クアラ・ヴェナ元大統領カットで」
床屋「くあら……ゔぇな?」
客「手の甲と手の甲で握手することを発明し、普及に努めたカンナール共和国のクアラ・ヴェナ元大統領ですよ」
床屋「……え、手の甲?」
客「まさか、ご主人。あの『ミスター手の甲』クアラ・ヴェナ元大統領を知らないわけはないよね?」
床屋「すみません、世界情勢にはとんと……」
客「カンナール共和国から帰国した旅行者が、しばらく普通の握手じゃ物足りなくなる、いわゆる『手の甲ロス』が深刻な社会問題にまでなった、あのクアラ・ヴェナだよ?」
床屋「いや、ちょっと……」
客「手の甲派と手のひら派に国民が二分し、両派が互いの手を叩き合う前代未聞の『手の甲手のひらひっぱたきあい紛争』にまで発展した、あのクアラ・ヴェナだって」
床屋「さっぱり……」
客「暗殺未遂事件で銃弾に倒れたその瞬間も、手の甲で地面と握手を交わしたと言われるほどの、不死身の大統領クアラ・ヴェナを知らないなんて言わないでくれよ?」
床屋「握手は手のひらでするものだとばかり……」
客「だからこそ偉大なんだ、彼は!」
客「クアラ・ヴェナ元大統領はっ!」
床屋「お、覚えておきます……」
客「……じゃあ、ツーブロックで」
床屋「かしこまりました」
……
床屋「いかがでしょう?」
客「おお、これぞ、クアラ・ヴェナカットだっ!」
床屋「千七百円になります」
客「また来るよ」
(終)
