吸着力の男
尾行されている。
そう気づいた時には、すでに手遅れ。
やつは素早くオレの目の前に回り込み、言った。
男「飛行能力より、あの吸着力ですよね?」
オレ「は?」
男「タケコプターですよ」
オレ「はあ?」
男「もちろん、あの飛行能力もすごいです」
オレ「……」
男「飛ぶだけなら未来の技術で何とかなるでしょう。
しかし、頭頂部の一点のみで人間を空中にぶら下げる吸着力は別格なんですよ」
オレ「……」
男「あの飛行能力は、圧倒的な吸着力なしには成立しないんです。
吸着力。なんと言っても吸着力なんですよ、実際!」
オレ「はあぁぁぁっ?」
男「これだけ言っても、まだわかってもらえませんか?」
オレ「あ……」
オレ「外れて落ちたこと、なかったっけ?」
男「何巻ですっ?」
オレ「さあ」
男「脅かさないでくださいよ……心臓に悪い」
オレ「てことで、さようなら」
男「うぇいたみにつっ!」
オレ「はあっ?」
男「あの吸着力でありながら、任意でいつでも簡単に取り外し可能なんですよ?
本当に注目されるべきは、吸着力なんですよっ!」
オレ「そうだね、はいはい。それじゃ」
男「飛行能力ばっかり見ないでくださいよっ!」
男「タケコプターの飛行能力より、吸着力の方がすごいと心から納得していただくまでは、離しませんからねっ!」
オレ「圧倒的吸着力は、あんただろっ!」
男「そうなんですっ!」
男は任意でいつでも簡単に取り外し不可能であった……。
(終)
