ショートショート 月夜のねぐせ
森の奥から遠吠えが聞こえた。待ちに待った丸い月だ。はやる気持ちで長いまつ毛をしばたたかせたウィルマは鏡を見て悲鳴をあげた。
ピンと尖った耳、艶やかに光る鼻、大きく裂けた口からのぞく牙。完璧な人狼だ。間抜けに反り返った額のねぐせ以外は。
「今日はウィリアムと会うのに!」
ウィルマが額の毛を撫でた。無情にもねぐせは跳ね返ってくる。外を見た。夜は短い。たまらずウィルマは窓から飛び出した。
満月の夜、人狼たちは人だった時を忘れ思うがままに生きる。
「ウィルマ!」
待ち合わせ場所に青い瞳が光った。灰色の毛並みの人狼だ。ウィルマが額の毛を触ると微笑んだ。
「気にしないで。お陰ですぐ僕のウィルマだって分かる」
灰色の腕がウィルマを抱き寄せた。
朝日がさした。人に戻ったウィルマがベッドで目を覚ます。昨夜のことはすっかり忘れていた。
「おはよう、ねぼすけ」
夫がウィルマを起こしに来た。ウィルマが額のねぐせを撫でると、青い瞳で笑った。
ショートショート No.748
たらはかに(田原にか)さんの毎週ショートショートnoteに参加しています。今週のお題は「月夜のねぐせ」です。
先週の裏お題は「だいたいニャー」。小粋でポップなヒスイさんも書いていますにゃ!
人に好かれると、不思議といい人になるもんですよね。
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