【TIMES】2026年1月4日 02時16分 近日点通過
──深夜2時16分、地球は太陽に最も近づく─公転速度は秒速30.29km、一年で最速─この「速い冬」を、渋川春海は340年前に見抜いていた─1246年、冬至と近日点は重なっていた─今は小寒のそば、58年ごとに1日ずつ、宇宙の時計は回り続ける──Kaichi Sugiyama
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みなさん、新年あけましておめでとうございます🎍✨
2025年は太陽活動が「極大期」のピークを迎え、北海道では元旦や11月に低緯度オーロラが観測されるなど、太陽フレアの話題が相次ぎました。2024年のXクラスフレアは年間50回以上と過去最多を記録し、2025年も年明け早々から活発な状態が続きました。
太陽活動は2026年も引き続き活発と予測されており、オーロラの当たり年に。今年も空を見上げる機会が増えそうです。

さて今回は、夏の遠日点に引き続き、冬の『近日点』についてお話したいと思います。耳慣れない天文用語だとは思いますが、簡単に言うと、地球と太陽との距離の『遠近』のこと。
これは日常では気づかない些細な変化ですが、これは天文や暦にとっては実に大きな要素なんです。なにしろ、これは暦が変わるほどの大問題だったのですから…
江戸時代の改暦をテーマにした映画作品『天地明察』の中で、『日の軌道がずれておる…』という名セリフがありますが、その大きな理由のひとつとして、この遠近の差がありました。

惑星の軌道は、すべて楕円を描いています。つまり太陽にもっとも近づく瞬間と、もっとも遠ざかる瞬間がある。
この二つの点を、天文学では「近日点(きんじつてん/Perihelion)」と「遠日点(えんじつてん/Aphelion)」と呼んでいます。
語源はギリシャ語で、「peri(近く)」「apo(遠く)」と「helios(太陽)」の組み合わせです。

1億4710万kmの親密──距離と光の関係
地球と太陽の間の遠近差は、距離にして約500万km。地球の直径の約400倍にあたる、途方もない隔たりです。

光の速さで測ると、遠日点と近日点の間には17秒の差があります。1月の今、私たちが受け取る太陽光は8分10秒前に発せられたもの。7月には8分27秒前。距離によって、「太陽の今」が変わっているのです。

秒速30.29km──地球が最も速く走る季節
正月が早く過ぎていく──これ、気のせいではありません。
ケプラーの第二法則(面積速度一定の法則)により、惑星は太陽に近いほど速く、遠いほど遅く動きます。近日点付近では、地球は「急いでいる」のです。

秒速で約1km/sの差。これが1日続けば86,400kmもの移動距離の差になります。

この速度差の蓄積が、季節の長さの不均等を生み出しています。
春分から秋分まで(北半球の夏半年):約186日
秋分から春分まで(北半球の冬半年):約179日
つまり、北半球の冬は夏より約7日短い。私たちは今、一年で最も「速い」季節の中にいます。
近くて寒い逆説──距離ではなく傾きが季節を決める
「冬なのに太陽に最も近い」──直感に反するように感じるかもしれません。
しかし、季節を決めているのは太陽との距離ではなく、地軸の傾き(約23.4度)です。北半球が太陽から「顔を背ける」時期が冬。距離は近くても、光の当たり方が浅い。これが北半球の冬の正体です。
ちなみに2026年の遠日点は7月7日。この日は二十四節気の小暑(しょうしょ)でもあります。「暑さが本格化する日」に地球が太陽から最も遠ざかる──この皮肉な偶然が、距離と季節の関係を物語っています。
現在の「遠い夏、近い冬」という配置は、極端な気候変動を抑制する「気候の安定装置」として機能しています。もし逆だったら──北半球の夏に近日点、冬に遠日点だったら──夏はもっと暑く、冬はもっと寒い。季節のコントラストが極大化し、氷河期が訪れやすくなります。
実は、約1万1000年後にはその配置が実際にやってきます。

冬至と近日点が重なった年──1246年、宇宙の同期点
1246年──鎌倉時代の中頃。この年、冬至の日と近日点通過日が完全に一致していました。
それ以前、近日点は冬至よりも「前」にありました。そして1246年を境に、近日点は冬至から離れ始め、現在は小寒(1月5日頃)のそばに位置しています。

この移動は約58年で1日のペース。2026年の近日点は1月4日、小寒(1月5日17時23分)の約39時間前にあたります。

6°44.5′のずれ──渋川春海が見つけた「暦の綻び」
江戸時代の改暦をテーマにした映画『天地明察』の名セリフ、「日の軌道がずれておる…」。その大きな理由のひとつが、この近日点の移動でした。
当時の日本は、中国から伝来した宣明暦(せんみょうれき)を823年間も使い続けていました。宣明暦は、太陽が最も遅く動く点(遠日点)と夏至が一致することを前提に作られた暦。しかし実際には、その基準点は数百年かけてずれ続けていたのです。
渋川春海(しぶかわはるみ/1639-1715)は、延宝3年(1675年)の日食予報の失敗をきっかけに、この問題に正面から取り組みました。そして**「太陽運動の遅速の原点=遠日点が夏至後6度44分.5にある」**ことを突き止めます。
これは中国暦法の根本的な誤りの発見であり、春海は「消長法(しょうちょうほう)」という補正方法を用いて近日点の移動を暦に組み込み、日本初の国産暦「貞享暦」を1685年に完成させました。
宣明暦から天保暦へ──823年間の精度革命
渋川春海の発見は、日本の暦学を大きく前進させました。その後200年間、日本の暦法は飛躍的に精度を向上させていきます。


200年間で精度は約60倍向上。この進歩の核心には、近日点の移動(近点移動)の認識と補正がありました。
10万年の呼吸──離心率が刻む氷河期のリズム
近日点の位置は約21,000〜23,000年の周期で一巡します。しかし、地球の気候を支配するのは、さらに長い「ミランコビッチ・サイクル」です。
地球軌道の離心率※は、木星や土星の重力の影響を受けて、約10万年・約40万5000年の周期で変動しています。
※離心率:楕円の「つぶれ具合」を表す数値。0なら真円、1に近いほど細長い楕円。

現在の離心率は減少傾向にあり、地球の軌道は徐々に円形化しています。約10万年後には、遠日点と近日点の区別がつきにくい「ほぼ円形の軌道」になると予測されています。
私たちは今、宇宙規模の「呼吸」の中にいるのです。
J2000.0座標系──地球軌道の精密設計図
以下は理科年表2025年版に基づく地球の軌道要素です。

計算に使用された定数
惑星暦:JPL DE440
ΔT(TT − UT1):69秒(2026年予測値)
天文単位:149,597,870.700 km(IAU 2012年決議)
58年で1日の漂流──近点が移動する宇宙の時計

2026年から2027年にかけて、近日点は約15時間早くなっています(1月4日02:16 → 1月3日11:33)。毎年少しずつ早まったり遅くなったりしながら、長い目で見ると約58年で1日ずつ遅れていく──これが近点移動の効果です。
太陽系時空間地図で見る「今」
2026年の近日点通過は、1月4日の深夜2時16分。
地球暦で地球の軌道を眺めると、この位置が一目でわかります。楕円軌道の「くびれ」が最も太陽に近づく点──そこに今、私たちは立っています。
一年で最も太陽に近い近日点。公転速度は秒速30.29km、一年で最速。
一呼吸して、地球の位置を太陽系視点から眺めてみてください。
340年前、渋川春海が夜空を見上げて発見した「ずれ」。780年前、冬至と重なっていた近日点。10万年後、円に近づいていく軌道。
私たちの「今」は、宇宙の悠久の時間の中の、ほんの一瞬です。
【まとめ】
2026年の近日点は1月4日 02:16(日本標準時)
前夜(1月3日)に満月、翌日(1月5日)に小寒という天象のリレー
地球と太陽の距離は約1億4710万km(0.9833 AU)
公転速度は秒速30.29km、一年で最速
北半球の冬は夏より約7日短い(速度差の蓄積効果)
遠日点(7月7日)は小暑と同日──暑さの始まりに太陽から最も遠い
1246年に冬至と近日点が完全に一致していた
渋川春海は近日点のずれを発見し、貞享暦を完成させた
近日点は約58年で1日ずつ移動し続けている
現在の離心率(0.0167)は減少傾向、軌道は円形化へ
あとがき
真冬の深夜、地球は太陽に最も近づいています。そして最も速く駆け抜けている。
1246年、冬至と近日点は重なっていました。その特異点から780年、近日点は今も毎年約11秒ずつ移動し続けています。渋川春海が格闘した「日の軌道のずれ」は、340年後の今も、静かに、確実に進行している。
暦を作るということは、この動き続ける宇宙と、私たちの生活を結びつける営みです。これを私は『動的参照』と呼んでいます。
杉山開知
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参考資料:
国立天文台暦要項 令和8年(2026)
国立天文台 暦計算室 暦象年表 天象(長期版)
国立天文台 暦Wiki「渋川春海と貞享暦」
『理科年表 2025年版』国立天文台編(丸善出版)
内田正男『日本暦日原典』(雄山閣)
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*地球暦Website https://heliostera.com *note https://note.com/helio_compass/
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