【TIMES】2026年1月5日 17時23分 小寒@太陽黄経285°
──年が明け、寒さはここから本番を迎える──地中では凍った泉が動き始め、雉が鳴き始める──夜空では木星だけが一晩中輝き、火星や金星は太陽の光の向こうへ──見えないところで、春への準備は着々と進んでいる──Kaichi Sugiyama
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寒さのはじまり「寒の入り」
地球暦が黄経285°「小寒」をお知らせします。

「小寒」は春分から285度経過した、晩冬のはじまり。冬至を過ぎて陰から陽へと一歩転じた地点です。けれども実際は日照時間が短く、時間差でこれから気温が下がりはじめます。北半球ではより冬を体感する晩冬の季節となり、次の「大寒」に向かって本格的に冷えていきます。
小寒は「寒の入り」とも呼ばれ、ここから節分(2月3日)までの約30日間が「寒中」。この期間に届く挨拶状が「寒中見舞い」です。
「小寒」という名前から「まだ本格的ではない」と思われがちですが、韓国には「小寒に凍え死ぬ」という諺があるほど。大寒の頃には身体が寒さに適応していますが、小寒は急激な気温低下のショックが体を襲う最初のフェーズ。体感的な厳しさは、往々にして小寒の方が勝るのです。
「小寒の氷、大寒に解く」──この古い言葉は、気象学的にも一定の真実を含んでいます。

近日点通過:太陽に最も近いのに最も寒い
小寒の2日前、1月4日02時16分に地球は近日点を通過しています。太陽に最も近づき、公転速度は秒速30.29km──一年で最速。
「太陽に近いのになぜ寒い?」──地軸の傾きと熱的慣性で説明できます。冬至から約1ヶ月、大地と海洋が蓄えた熱が放出され続け、気温は底を打ちます。

▶ 詳しくは:【TIMES】2026年1月4日 近日点通過
「寒」の気象力学:シベリア高気圧というポンプ
小寒の時期、東アジアの天気図は典型的な「西高東低」の冬型気圧配置に固定されます。

広大なシベリアの大地は雪に覆われ、夜間の放射冷却で熱を宇宙へ放出し続けます。こうして極限まで冷やされた重い冷気団(シベリア気団)が形成され、シベリア高気圧となります。一方、北太平洋上にはアリューシャン低気圧が発達。この二つの巨大な気圧センターの間で大気が激しく流動し、北西の季節風が生まれます。
乾燥した冷気は日本海を渡る際に水蒸気を吸収して雪雲となり、日本海側に豪雪をもたらします。山脈を越えた風は太平洋側に「からっ風」として吹き下ろす。小寒とは、この巨大な大気循環システムが最大出力に達する期間なのです。
冬の養生決定版 『閉蔵の三部作』
漢方の古典『黄帝内経 素問』の第二篇「四気調神大論」には、四季それぞれの養生法が記されています。

寒の水と寒仕込み──発酵マジカルタイム
小寒から大寒にかけて汲まれた水は「寒の水」と呼ばれ、腐りにくく、酒や味噌の仕込みに最適であると古来より重宝されてきました。染色や和紙漉きにおいても最高品質をもたらすとされます。

日本酒の「寒造り」、味噌の「寒仕込み」──この時期に仕込まれる発酵食品が特別な理由は、冬の水と気温がもたらす奇跡的な条件にあります。
雑菌が眠る季節:水温が0℃近くまで下がると、雑菌の活動はほぼ停止します。いわば天然の「低温殺菌」状態。余計な菌が眠っている間に、目的の麹菌や酵母だけがゆっくりと働くことができます。
酸素を抱く冷たい水:冷たい水はより多くの酸素を溶かし込みます。この豊富な酸素が、酒造りの初期段階で酵母を元気に増殖させ、腐敗菌を寄せ付けない環境を作り出します。
ゆっくり発酵の深い味わい:低温でじっくり発酵が進むと、急激な温度変化による雑味が生まれにくく、繊細で奥行きのある味わいが生まれます。時間をかけることで、旨味成分がじっくりと引き出されるのです。
「寒の水」「寒仕込み」の伝統は、微生物の営みを知り尽くした先人たちの知恵。冬の寒さを味方につけた、発酵のマジカルタイムです。
寒稽古と寒参り──厳冬期、世界の鍛錬
この時期は寒稽古や寒参りのピークでもあります。武道や修験道において、寒さは「耐えるべき苦痛」ではなく、精神と身体を鍛え直す資源として扱われてきました。日本では神社仏閣への寒参り、滝や海での寒垢離、剣道・柔道・空手などの寒稽古が各地で行われます。


興味深いことに、こうした厳冬期の鍛錬文化は世界各地に見られます。ロシア正教の神現祭(1月19日)では、信者が凍った川や湖に十字架型の穴を開けて氷水に浸かります。フィンランドやスウェーデンでは、サウナで温まった後に凍った湖へ飛び込むアヴァントが冬の伝統。中国や韓国でも、冬季の太極拳や気功の屋外鍛錬が盛んです。
一年で最も寒い時期に冷気や冷水で心身を目覚めさせる──東西を問わず、人類は厳冬期を浄化と強化の好機として捉えてきたのです。

七十二候を参考に地域に合わせた自分の歳時記を作ろう!
初候 | 芹乃栄(せりすなわちさかう) 冷たい水辺でセリが生え始める
次候 | 水泉動(しみずあたたかをふくむ) 地中の凍った泉が動き始める
末候 | 雉始雊(きじはじめてなく) オスの雉が求愛の鳴き声を上げ始める
[小寒からの目度]
ーただいま285度ー この度、小寒 2026/1/5

小寒から大寒までの時空間情報
292 | 2026/01/05 小寒 17:23 霜月 十七
293 | 2026/01/06 霜月 十八
294 | 2026/01/07 霜月 十九 金星と地球の開き
295 | 2026/01/08 霜月 廿 金星と火星の結び
296 | 2026/01/09 霜月 廿一 金星と木星の開き 地球と火星の開き
297 | 2026/01/10 霜月 廿二 地球と木星の結び
298 | 2026/01/11 霜月 下弦 00:48 火星と木星の開き
299 | 2026/01/12 霜月 廿四 成人の日
300 | 2026/01/13 霜月 廿五
301 | 2026/01/14 霜月 廿六
302 | 2026/01/15 霜月 廿七
303 | 2026/01/16 霜月 廿八
304 | 2026/01/17 土用 12:03 霜月 廿九 金星と冥王星の結び
305 | 2026/01/18 霜月 丗 水星と木星の開き
306 | 2026/01/19 師走 新月 04:52
307 | 2026/01/20 大寒 10:45 師走 二 水星と火星の結び

「結び」と「開き」
地球暦では、惑星同士が太陽から見て同じ方向に並ぶことを「結び」、反対方向に位置することを「開き」と呼びます。「地球と外惑星の結び」は天文学では「衝」にあたり、その惑星が地球に最接近して観測の好機となります。
惑星配置の特徴:結びと開きの連続
1月7日から20日まで、惑星たちは次々と「結び」と「開き」を重ねていきます。
太陽側に集まる惑星:金星・火星・水星が「地球との開き」で太陽の向こう側に位置し、太陽の光に紛れて観測困難な時期です。
地球側の木星:1月10日に「地球と木星の結び」を迎え、地球に最接近。一晩中観測可能な好機となります。
地球暦で見ると、太陽を挟んで惑星が二極に分かれる配置がよくわかります。

1月10日:地球と木星の結び(木星衝)
項目データ地球と木星の結び1月10日 17:42地球最接近1月9日 17:09距離4.232天文単位視等級マイナス2.7等
太陽が沈むと東から昇り、真夜中に南中し、日の出と共に沈む。一晩中観測できるのが「結び」の特徴です。
2027年2月:地球と火星の結び(火星衝)への道
1月9日に「地球と火星の開き」を迎えた火星は、13ヶ月後の2027年2月20日に「地球と火星の結び」を迎えます。地球と火星が最接近し、火星が最も明るく輝く時期への旅が、今日から始まっています。
※データ出典:国立天文台暦要項
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2007年の初版から19年目。累計10万部。

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♬ もういくつ寝ると お正月 / 光の終わり 冬至の年始 / 帳簿をしめる 社会の年始 / 地球が近づく 近日点 / 季節の変わり目 冬の土用 / 四季のピリオド 節分の日 / 月がはじまる 旧正月 / 春分まわる 地球暦 / 新年度への カウントダウン / ゆく年 くる年 / いくつも重なる 年末年始 / 終わりと始まり ミルフィーユ / もういくつ寝ると お正月 / どれがほんとの お正月 / だれが決めたの お正月 / ぜんぶがほんとの お正月 ♬
あとがき
北半球が寒の底へ向かうこの時、南半球では真夏の盛り。オーストラリアやニュージーランドでは、ビーチでのクリスマスやバーベキューが風物詩だそうです。
地球の北と南で、収縮と膨張が同時に起きている。この対極性こそが、惑星としての地球のダイナミズムを駆動しているのだなと、地球暦を眺めながら小寒・大寒の対岸にある、小暑・大暑を感じながら記事を書きました。
杉山開知
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参考資料:
国立天文台暦要項 令和8年(2026)
国立天文台 暦計算室 天象データ
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