メンクリ。やっと見出した生きる意義を挫かれたと感じたのは、ただの認知の歪みだろうか。
主治医「60歳になった時の自分を想像してみると良いですね」
僕「…なるほど」
主治医「難しいですか?『その歳まで生きていたくない』と思ってしまいますか?」
僕「…正直、そうですね…。『あと20年以上も生きないといけないのか』って。それは自覚していて、だから今日、明日、半年くらい先のことだけ考えるようにしています。1年前の今頃は、命を絶つことすら考えていたくらいだから、それに比べたら半年先のことを考えられるようになっただけでもマシかなぁと」
主治医「マシと思えるようになったのは良いことですね。ではこの機会に、短期的な目標を考えると良いでしょう。半年とか1年とか」
僕「短期的な目標…。そういう意味では、直接仕事とは関係ないですが、今年初めて小説を書いて、春の新人賞に応募しました。次の大きな新人賞が9月にあるので、今はそこへの応募を目指して執筆をしていて。とはいえまだ書き始めたばかりで、9月の新人賞に間に合わなければ、来春の新人賞への応募を目指そうかと」
主治医「なるほど。小説の新人賞ですか。これは知人に聞いた話ですが、新人賞は審査員が他の新人賞への応募状況、どれに応募して何次選考まで残ったのか、どんな内容だったのかも見るみたいですね。小説というものに100%完璧というのはないでしょうが、6割とか7割の完成度で、えいや、と応募してしまうと別の新人賞に応募した時に影響があるとか。それに…(以下略)」
僕「…はぁ…。そうなんですね」
昨日、メンタルクリニックに月1の通院をした際、主治医にこんな話をされた。
ー どうしてこんな話をしたんだろう?
ー 知識をひけらかしたかったから?
ー 「小説家なんて、お前はそんな夢を見てられる状況じゃないだろう」って戒め?
ー 書いても書いても、箸にも棒にもかからず、僕が絶望してしまわないための転ばぬ先の杖?
ー もしくはただの嘲笑?
薄っすらと納得がいかない感情を抱えたまま、「ありがとうございました」と作り笑いをして診察室を出た。
会計時、領収書とともに受け取った、いつもと同じ内容の処方箋。わりと秘密にしておきたい秘密の目標を明かしても、得られたのは、いつもと同じ内容の処方箋。
あれから少しばかり経って、同じように深夜に中途覚醒してしまって、件の出来事を再び振り返っている。
これは、いわゆる認知の歪みなのだろうか。主治医が語ったのは、人から聞いたという真偽不明の新人賞の審査に関する事情だけ。それを解釈したのは僕の認知。やはり、僕の認知は歪んでいるのだろう。
とはいえ、「60歳の自分なんて想像できないです。でもなんとか小説を書くことを目標にしています」と語った患者に対して主治医がするべき話ではないだろうよ、とは思った。僕の精神が幼すぎるのだろうか。
5年ほどの付き合いとは言え、主治医とは月1回しか会話をしていない。それも1回5分程度、長くても20分程度。それに、僕にとっては唯一の主治医だけれど、あちらにとっては数多いる患者のひとりに過ぎない。約1年前、あの時以来、僕が毎日1円単位で収支をつけていることも、どんな思いで独立したのかも、どんな姿勢で仕事をしているのかも、何を感じて生きているのかも知らない。当然、小説ってものに生きる意義を見出したのかを知るはずもない。だからまぁ、しょうがない。
だから僕は、最低限必要なことだけ話して、いつもの薬を処方してくれればそれで良い、と思った。小説のことも、もっと内面的なことも、もう話すのはやめよう。聖域を守るために。
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