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第一章 第二話|かすかな読解

記録No.002
提出者|日報室 ミラ

本日、書店に再びユラが現れた。
入店時、入り口で一瞬立ち止まり、
視線を棚の奥へと向けていた。

その後、ためらうことなく、前回と同じ本の前へと歩み寄る。
表紙は依然として無色のままだったが、
ごくわずかにページが揺れたのを確認。
これは、書籍側からの応答と見なされる。
私の任務は、こうした変化を過不足なく記録に残すことにある。

ユラは膝をつき、ゆっくりと本を開いた。
扱いは慎重で、壊れやすい陶器に触れるかのようだった。
ただし、視線は明らかに異なる性質を帯びていた。
何かを追いかけるように、言葉を欲するように、
深くページを見つめていた。

彼女の内側で、まだ言語化されない何かが動き出している。
“読解”には至っていないが、その初動と思われる兆候が確認された。

本日、明確に輝いていたのは一文のみ:

「あなたが書かなかった手紙を、わたしは知っている」

彼女がこれを“読めた”かどうかは不明。
だが、本を閉じたあとの表情に、わずかな弛緩が見られた。
肩の力が抜けたような、ごく微細な変化である。

その直後、本の間から一筋の光が棚の隙間へと流れた。

また、当該書籍に関して、私の内部にわずかな記憶の干渉を確認。正式な書名が存在しないはずのこの本に対し、不意に「未投函の手紙たち」という語句が浮かんだ。

この反応は、“書籍の記録”ではなく、
“記録係個人の記憶”との結びつきによるものと推定される。

本と私の間にある連動性は、書店の“記憶機構”と
深く関係している可能性がある。
今後も類似の反応が現れる場合は、慎重に観測を継続したい。

該当記録、分類コード未付番。暫定保管とする。

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◎ ある魔法書店の記録係ミラ|日報室より 「お読みいただき…まことに…ありがたき幸せ…」 とでも言えば金貨もらえる?試しに言っとくね。 金貨はおやつ代です。 つまり命です。よろしくお願いします。