“引き算”の魔法。「もしドラ」が教えてくれた“描かない”読書の面白さ。
岩崎夏海さんの
『もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッカーの「マネジメント」を読んだら』
通称「もしドラ」を読みました。
最初に「もしドラ」って言葉を聞いたとき
実は「もしもドラえもんがいたら」の
略なのかな?と思ってしまったんです。
ちょっと明後日な想像ですよね。
でも、そんな私の予想は
良い意味で裏切られることになりました。
出会ったきっかけはnote。
本を手に取ったきっかけは
noteの公式noteでした。
noteのCEO加藤さんが「もしドラ」の編集を
されていたと知り、興味が湧きました。
ジャンルとしては
ビジネス書と青春小説。
両方をあわせ持ったような作品です。
タイトルのとおり、高校野球部の
女子マネージャーみなみが
経営の神様と呼ばれるドラッカーの
『マネジメント』の本を読みながら
野球部と一緒に、甲子園を目指す物語です。
小説でありながら、ビジネスも学べて
それでいて、青春のきらめきも感じられる
そんな一冊でした。
読み進めるうちに気づいた違和感。
読み進めていくうちにあれ?
あることに気づきました。
それは…
情景描写がほとんどないことです。
たとえば、表紙には主人公・川島みなみの
可愛らしいイラストが描かれています。
パッと見は、ライトノベルや
萌え系な印象を受けます。
でも実際に読み始めると
彼女の髪型や服装など
ビジュアルに関する描写は
ほとんどありません。
それは彼女だけでなく
野球部のメンバーたちも同様です。
セリフや性格はしっかり描かれているのに
外見の描写がない。
ちょっと不思議な読書体験でした。
さらに驚いたのは、野球の練習など
情景描写もほとんどないことでした。
でも、だからといって試合の緊張感や
物語の熱量が薄まっていません。
描かれていないのに
そこに確かにある野球の空気が
伝わってくる感覚がありました。
"描かない"ことの意図するものは
「どうして描かないんだろう?」と
読み始めから、疑問がずっと頭の中に
ありました。
でも、ページをめくっていたある瞬間
「あっ!」と腑に落ちたんです。
それは、普段noteで多くのnoterさんの
創作に触れてきたからこそ
気づけたことかもしれません。
この作品のテーマはずばり
「マネジメント」です。
だからこそ
人物の外見や情景をあえて描かないことで
「顧客」や「ミッション」
「ビジョン」「バリュー」といった
マネジメントの概念に
読者の意識が自然と向かうように
設計されているのだと気づかされました。
もし仮に、情景まで丁寧に描かれていたら
ページ数が膨らんでしまうだけでなく
読者の関心が
マネジメントから離れて
青春小説や恋愛寄りの物語に
シフトしてしまう恐れが
あったかもしれません。
たとえば、外見の描写があったら
みなみちゃんの可愛らしさや
ピッチャーのかっこよさが
マネジメントよりも
印象に残ってしまいかねませんよね。
だからこそ、削ぎ落とされた描写の中に
「純度」があるのだと感じました。
テーマが変われば描くものも変わる
読んでいて、別の高校野球をテーマにした
小説を読んだことを思い出しました。
早見和真さんの『アルプス席の母』です。
球児の母親の視点から
高校野球を描いた作品です。
試合用ボールの値段とか、
父母会の人間関係といった
野球の裏側の描写が
色濃く描かれていて
ドロドロ成分が多めです。
(ウルウル成分も多めです)
一方「もしドラ」では、お金に関するお話や
父母会のような描写は一切ありません。
実際の会社経営におけるマネジメントでは、
お金の話は、切り離せないと思います。
もしドラでは
野球の金銭的な面や
大人の事情が省かれていることで
「純粋さ」が際立っているように
感じられました。
「描かない」ことで引き出される想像力
私は普段、noteで410文字の
ショートショートを書いています。
410文字という制限のなかでは
登場人物や背景を描写しすぎると
ストーリーの本題に入る前に
文字数オーバーになってしまいます。
だからこそ、少ない言葉で
空気や感情をどう届けるか
なるべく意識して書いています。
神崎さやかさんのnoteで「描かないこと」を
“あえて目立たせない美学”と表現されていて、
とても素敵だなと感じました。
さやかさんの記事をきっかけに「方舟」の
コミックを読んだことを思い出しながら
読ませて頂きました。
これまで私は
「小説には情景描写が欠かせない」と
思い込んでいました。
でも、「もしドラ」はその考えを
優しく裏切ってくれました。
描かないからこそ
読者の想像力が引き出される。
描かないからこそ
テーマにまっすぐ集中できる。
「もしドラ」は、そんな
大切なことを教えてくれました。
「何を書くか」と同じくらい
「何を書かないか」も
作品にとって大切な選択肢
なのだとしみじみ感じました。
野球がテーマの小説から受け取った、思わぬギフト
正直なところ、私は野球のことは
まったく詳しくなくて。
でもこうして、野球がテーマの小説を
つづけて読むことになるなんて
自分でもちょっと驚きです。
まるで、路地裏でふと見つけた
なんのはなしですかのような
思いがけない出会いでした。
野球を知らなくても、野球小説って
こんなにも楽しめるものなんですね。
noteがくれた思いがけないギフトのようでした。
最後までお読みいただき
ありがとうございます。
みなさんの本との出会いが
素晴らしいものでありますように。

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