【ブルーロック×人的資本経営 第五章】自分も他人も、マネジメントすべきは「熱量」
組織にいると否応なしに耳にする言葉が「マネジメント」若しくは「マネージャー」。
「Manage」という単語は「上手くやる/対処する」や「管理する/運営する」という意味がありますが、日本語では多くのケースで後者を指すと思います。
では、マネジメントやマネージャーは「何を」管理するのでしょうか。
最近、私なりに一つの「答え」に辿り着いたのですが、まさにブルーロックの最新巻で関連することが書かれていたので、それとコラボして綴りたいと思います。
(34巻未読の方は、一部ネタバレが含まれていますので、お気をつけください)
「凪誠士郎の満足」と「潔世一の不満足」
潔に勝ったことで足を止めた、凪誠士郎
ブルーロックにおいて、第22話に登場して以来、主人公クラスの人気を誇ってきた凪誠士郎。その彼が第299話にて「U-20日本代表から落選する」という衝撃の事態になりました。
(三苫が凪のスーパープレーを再現した時も、とても話題になりました)
ブルーロック創始者・絵心甚八は、「満足」を理由に挙げます。
凪は第191話『COMING SOON』にて、ずっと目標としてきた「潔世一に勝つ」という目標を達成します。
この時すでに、それを予期させる描写が描かれていますが、この時に凪は完全に「満足」しており、以降それを超える目標を設定出来ずにいました。
結果、凪は第191話をピークにパフォーマンスは下がり続け、最終的にU-20W杯の出場権を失うことになりました。
「世界一」だけを見据え、常に「不満足」である潔世一
一方、スタートメンバー・300人の中でもビリに近い能力値でブルーロックに参加した潔世一は、常に目標を設定し、そことの差分と自らに必要なピースを言語化し、目標を達成した瞬間に次の目標を立てることを繰り返してきました。
その過程において一度も「満足」をすることはなく、常に「飢えて」「渇いて」きました。そして同じ第34巻で、以下の言語化を達成します。
勝つ度に、結果を出す度に、経験と能力は上がっていく。サッカーは上手くなる!技術の再現性は高まる!
でも、"熱"は再現できない!
あれもあの時も、あの瞬間の俺しか抱けない感情だった。
技術や論理は叶えるための手段に過ぎない!
全ての始まりは、今自分の中に感じる"熱"なんだ!!
つまり、「同じ熱を高め続ける」のではなく、「新たな熱を生み出し、それを大きくし、また新たな熱を生み出す」サイクルが重要であるということです。
まさにそれが出来ず、一つの熱を高め続けた凪とのコントラストが極めて明確に描かれており、読んでいてぞっとしました。

個人が成果を出すメカニズム、そして最もボラティリティが大きいのが「熱量倍率」
私は、個人ベースで考えたとき、つまり外的要素が不変だった場合、個人の成果は以下のように分解できると考えています。
①ベース熱量:その人が持つベースとしての熱量
②熱量倍率:その人の熱量に対する倍率(目標や仲間によって変動する) ③熱量:①×②
④能力
⑤方法
⑥運
③×④×⑤×⑥=成果

この中で、最もボラティリティが大きく、そして最も容易に変化するのが「②熱量倍率」であると考えます。
以下に纏めた通り、熱量倍率は今回のように「目標を達成した(外的)」とか「上司が変わった(外的)」「結婚することになった(内的)」など、最も多くの要素で変動します。
そして、これは感覚的な話ですが、熱量というのは1/100になったり、100倍になったりと、大きく変化するものです(お分かりいただけると思います)。
つまり、最も成果に直結し、且つ、「⑤運」のように「どうしようもないものではない」要素が「②熱量倍率」であると考えます。
①ベース熱量:その人固有のものであり、基本不変。
②熱量倍率:外的要因(目標や仲間など)や内的要因(人生イベントや価値観の変化など)によって大きく変わる
③能力:可変だが、非連続的に変化しない
④方法:意図して変えるものであり、勝手に変わるものではない。
⑤運:完全にアンコントローラブル。考えるだけ無駄
【立場・フェーズ別】「熱量倍率」をどうマネージし、活用するか
【上司・マネージャー】「その人が燃える理由」を把握し、そして「燃えているか」を見る。方向性は二の次
「何に熱を持つか」は、人によって全く違いますし、同じ人間でも状況・状態に応じて変化します。
それを把握せずに組織をマネージしようとするのは、もう目隠ししてマネジメントしようとするのと同義です。直近で読んだ素晴らしい良書、「スケーリング・ピープル」にも以下の記載がありました。
・他の人の事情はわからない、ということを学んだ。一緒に仕事をするのが難しい部下がいる場合、たいていその行動の裏には深い理由があり、マネージャーはそれを理解する必要がある(P31)
・ハイパフォーマーをマネジメントするには、まず、相手の原動力と仕事のしかたを理解しなければならない(相互の自己認識力を築く必要がある)(P336)
その人の熱量の起点を理解し、それに沿った状態に極力近づけてあげる。それがマネージャーの最も重要な仕事です。
ついマネージャーは「ちゃんと仕事をしているか」「ちゃんとPJが進んでいるか」「ちゃんと成果が出ているか」という表面的な点を気にしてしまいますが、それよりも遥かに重要なのは「燃えているか」ということ。
ちょっと方向性がズレていても気にしてはいけません。二流のマネージャーは、目標や上司である自分自身にベクトルの向きが向いていないと焦ったり怒ったりします。
ですが、方向性を修正するよりも、熱量を高める方が遥かに難しいことであることを肝に銘じ、熱量の確認を常にしましょう。
(なお、逆方向に向かっていたら絶対にダメです。それは直ぐに呼び止め、修正不可の場合は直ぐに切り離す必要があります)
そして、優秀な部下が「現状維持バイアスで働いている」と気付いたら、指摘してあげましょう。組織のマネージャーとしては適切ではないかもしれませんが、社会から見れば、それが「正」です。
それが出来る人が、超一流のマネージャーであると私は思います。
【自分自身】定期的に自らをスキャンし、「惰性」で生きない。違和感を感じたら、場所を変える時かもしれない
ホモサピエンスが必ず持つ、強烈な力が「現状維持バイアス」です。
これは生存率を高めるために「未知=危険」を回避し、現状維持を極力選択してきた先祖から代々DNAに刻まれてきたものであり、どうしようも出来ません。
言い換えると、人生には必ず「惰性」が存在します。
このバイアス、そして惰性が「必ず自分にも存在する」と認知し、定期的に「今、自分はこの状態に熱量を持てているのか。それはなぜか」を言語化することが、「納得感のある人生」を送るにあたって非常に重要だと信じています。
そして、凪のエピソードの通り「一度下降曲線に入った熱量を、再度高める」のは極めて難易度が高いことも認識しましょう。
もし熱量が下がってきたのなら、以下の大前研一氏の言葉ではないですが、住む場所や勤務場所、付き合う人を変えることを強くお勧めします。
【採用担当】熱量のピークバランスと共に、「自社での再現性」を常に意識して面接する
「熱量」という言葉を使っていなくとも、面接で過去のエピソードを聞いている時に、確実に熱量に関する要素も気にしていると思います。
その際、エピソードのみならず、以下の要素も必ず確認しましょう。
①その人が当時熱量を持っていた理由
②今も同じ理由・要素で熱量が高まるのか
③その理由・要素を自社は提供できるのか
つまり、「5年前のアメフト部時代に10,000の熱量を発揮していたとして、その時と同様の理由で今も熱量を持てるのか、そしてその要素を自社が持っているのか」ということです。
②か③がNOなのだとすると、そもそもそのエピソードには何の価値もないので、一瞬で忘れて次に行ってください。
それが出来ずに、何かしらの「凄いエピソード」に引きずられて採用して失敗しているケースを沢山見てきました(私自身も)。是非「ピーク熱量の自社での再現性」を意識してみてください。
【就職・転職側】自分より上のポジションの人達の「熱量」を確認しよう
「組織の熱量をボトムアップで上げる」のはほぼ不可能であり、出来たとしてもとんでもないエネルギーを要します。解説しませんが、ここはご理解いただけると思います。
一方、自分の部下や同僚の熱量は上げられますし、寧ろ部下は上げなくてはなりません。
つまり、入社前に確認すべきは「自分のアンコントローラブルな要素」であるならば、出来る限り自分の上位にあたる人と面談したり、そのインタビュー動画を見るなどして、「熱量」を確認することが重要と考えます。
その際、何か測定器があるわけではないので、完全に直感で大丈夫です。
直感で感じた熱量があれば、仮に外れたとしても、後悔はしないはずです。選択に絶対の正解などありませんが、「後悔しない選択」を積み重ねていけば、幸せな人生が送れる、と少なくとも私は信じています。
おわりに:生成AIには勝てない。生成AIにないものを何よりも大事に
生成AIは明確に、とんでもないパラダイムシフトです。
思考力・分析力・作業力・・・、これまで人間が一所懸命に鍛えてきた多くの能力を「不要」なものに塗り替えます。これはもう、抗えない事象です。
でも、それによって人間が滅びる訳ではありません(というか滅びた時のことを考えても仕方ない)。
人間は生き続け、共に社会を構成していくにあたって大事にすべきものはなんなのか。その一つが「なんかよくわかんないけど、やりたい」という力だと思っています。
(私が大好きな一冊である「リーダーシップの旅」で言えば「リード・ザ・セルフ」)
理屈じゃなく、「無性に」やりたい。
それをやっている時が「熱量倍率がMAX」な時だと言い換えられると思っていて、自分をその状態に置き続けることがセルフマネジメントであり、メンバーをその状態にするサポートをし続けることがチームマネジメントであると考えました。
常に自分に、そして部下に「今、ここの熱量」を問える人間であれるよう、私は頑張ります。
