【チャレがや】【BL】BLUE MOON ~恋人以上、アイス未満 番外編
「お待たせしました!」
ウエイターが愛想よく笑いかける。
その手には、針金みたいな器具に引っかけた、アツアツの鉄板。
鉄板の上には、ミックスベジタブルとベイクドポテト、そしてなけなしのクレソン。
そして。
大人の手のひらぐらいはある、でかいハンバーグ。
で、その上に、まん丸い目玉焼きがちょこんと乗っている。
ウエイターは慣れた手つきで、予め設置された木のプレートの上に鉄板を置く。
じゅうううう。
油がはじける音。
紙エプロン、しといてよかった。
でなきゃ今頃、お気に入りのTシャツにてんてんと油染みが付いてたところだ。
「うお!」
鉄板を覗いたマサトは目を輝かせた。
「見ろよユウ。これ、お月様みたいじゃね?」
あまりのはしゃぎように、ウェイターは「あはっ」と笑顔を見せた。
そして、
「お好みでこちらのソースをおかけください」
テーブルの上のオニオンソースを指し示すと、きびきびと立ち去っていた。
「……」
俺はなんだか恥ずかしくなって、あいつの足を蹴っ飛ばした。
「いてっ」
マサトは小さな声を上げて、恨めしそうに俺を見た。
「ガキみたいにはしゃいでるんじゃねえよ。バカ」
「だってさあ、これ感動もんじゃね?こんな形になんか焼けねえだろ普通」
「はあ」
俺は盛大に溜息をつく。
「あのさあ」
「何だよ」
「これ、道具さえあれば誰でもできるんだよ」
「へっ?そうなの?」
「そう。まあるいわっかに卵落として焼いただけ」
「ええ……」
マサトの顔が途端に残念な感じになる。
「ったく、お前はいつもそうやって俺の夢をぶち壊すんだよな」
マサトはぶつぶつと文句を言いながら、ハンバーグにオニオンソースを回しかけた。
「夢も何も、いい大人がこんなんではしゃぐ方がおかしいだろ」
「ちっ……ユウ、お前マジでそういうとこだぞ」
「可愛げがねえのは昔からだ」
「ったく」
「素直で可愛いのが良ければ、何時でもそっちに乗り換えろ」
「あーもういい。やめやめ。飯が不味くなる」
マサトは面倒臭そうな顔で、強引にこの会話を終わらせた。
ま、それもそうだな。
折角のハンバーグだ。
それも、ネットで美味いと評判の店のやつだ。
俺たちは気を取り直したように、ただただ目の前のハンバーグに挑みかかった。
「んっ!うまっ!」
マサトの目が、再びきらきらと輝く。
「肉汁すげえ。ソースとの相性も抜群!」
「で、何より肉々しい、だろ」
「んお、ほへな!」
マサトは口の中をハンバーグで一杯にしながら、本当に嬉しそうに笑っている。
こいつはこうやって、肉食ってる時が一番幸せなんだろう。
俺は、ビールを喉に流し込むと、ふと空を見上げた。
ここはテラス席。
見上げた先には、夜空がある。
街灯りのせいで、星は殆ど見えないけど。
「何だよ。何か飛んでるのか?」
「何も。明るすぎて星も見えねえ」
「そっか。テラス席選んだけど、イマイチだったな」
「んー……でもねえけど」
「ん?」
「風が気持ちいいし」
「うん」
「ここ、俺達だけだし」
「……」
何故だか、マサトは黙ってしまった。
俺、なんか変なこと言ったかな。
「ユウ」
「なに?」
「飯食ったらさ。どっか星の見えるとこ行かね?車出すから」
「え、ビール飲んじまったし、駄目だろそれ」
「あーそっか」
マサトは、最後のハンバーグを頬張ると、もぐもぐと口を動かしながら考えるような素振りを見せた。
「じゃあさ」
「うん」
「星に近いとこの、あのご機嫌なバーラウンジなんてどう?」
「お、それ乗った。マサトにしちゃ考えたな」
「おい、マサトにしちゃ、は余計だろ」
マサトは「あはっ」と、口を開けて笑った。
そのご機嫌なバーラウンジの名前は。
Bar BLUE MOON
(おわり)
今回も、みくまゆ会さまの「チャレがや」に参加させて頂きました。
で、今回はコッシ―御大の
「余は恋愛小説を所望致す」
とのお下知に従わせて頂きました。
ただ。
ご期待に添えたかどうか、全く自信ございませぬがっ!
空気読まない攻めとツンデレ受けのカップルなので!
