インバウンドで儲かっているのは誰?日本のホテルから海外へ流れるお金



日本のインバウンド市場が相変わらず拡大しています。
 
外国人旅行者が日本へ来て、ホテルに泊まり、食事をして、買い物をする。
 
普通に考えれば、外国人旅行者が増えるほど、日本の観光産業に海外のお金が入ってきます。
 
ただ、ホテルを経営する側からお金の流れを追ってみると、少し違った景色も見えてきます。
 
外国人が日本のホテルを探す。
 
Googleで検索する。
 
Instagramでホテルを知る。
 
Booking.comやAgodaで予約する。
 
VisaやMastercard、American Expressなどを使って決済する。
 
そしてマリオットやヒルトンなどのホテルに宿泊する。
 
こうして並べてみると、旅行者がホテルを知り、予約し、決済し、宿泊するまでの重要な部分に、海外企業がかなり入り込んでいることが分かります。
 
インバウンドが増えていることと、その経済的な果実を日本企業が取れていることは、必ずしも同じではないのかもしれません。
 
 

ホテルを探すところから海外企業がいる


日本のホテルや観光地を探す際にはGoogleやインスタグラムを活用している


 
外国人が日本旅行を計画するとします。
 
例えば京都へ行きたい。
 
Googleで「Kyoto hotel」「Kyoto ryokan」などと検索したり、Instagramで宿泊先を探したりする人もいるでしょう。
 
Googleはアメリカ企業です。
 
Instagramを運営するMetaもアメリカ企業です。
 
日本のホテルが検索広告やInstagram広告を使って外国人旅行者へ情報を届ければ、そこには広告費が発生します。
 
もちろん、すべての宿泊予約に広告費が発生するわけではありません。
 
ただ、外国人旅行者へ情報を届ける入口として、海外の巨大プラットフォームが大きな影響力を持っています。
 
 

予約を取れば、今度はOTAがいる


ホテルは訪日旅行者の予約獲得について、大部分は海外OTAに依存している


 
次は予約です。
 
Booking.com。
 
Agoda。
 
Expedia。
 
Airbnb。
 
世界的に利用されているオンライン予約サービスの多くも海外企業です。
 
ホテル側にとってOTAは非常にありがたい存在です。
 
自社だけでは届けられない世界中の旅行者へホテルを販売してくれるからです。
 
特に海外で知名度の低い日本のホテルや旅館にとって、その集客力は大きな武器になります。
 
一方で、予約が成立すればホテル側には手数料が発生します。しかも国内OTAより高いケースも多い。
 
外国人旅行者が日本のホテルに10万円を支払っても、その10万円がそのままホテルに残るわけではありません。
 
集客をOTAに頼れば、その一部を手数料として支払うことになります。
 
 

決済にも海外企業がいる


訪日旅行者は圧倒的にカード決済が多い。ここでも海外企業にコストを支払う構造になっている


 
そして宿泊代を支払います。
 
ここでも、
 
Visa。
 
Mastercard。
 
American Express。
 
などの国際的な決済ネットワークが登場します。
 
決済の仕組みは複雑なので、ホテルが負担する決済手数料のすべてが海外企業へ渡るわけではありません。
 
カード発行会社や加盟店契約会社など複数の事業者が関係しています。
 
ただ、インバウンド市場において国際的なカード決済が重要なインフラになっていることは確かです。
 
検索。
 
広告。
 
予約。
 
決済。
 
ホテルへ宿泊する前の段階だけでも、海外企業のサービスが何度も登場します。
 
 

宿泊先が外資系ホテルなら、さらに構造が変わる
 

外資系ホテルのビジネスモデル
建物や土地の大きな投資、日常の運営コストは日本企業が負担。


そして宿泊するホテルがマリオットやヒルトン、IHGなどの海外ホテルチェーンだった場合です。
 
ここには日本のホテル会社とは少し違うビジネスモデルがあります。
 
マリオットやヒルトンなどの巨大ホテルチェーンは、世界中のホテルの土地と建物をすべて自分たちで所有しているわけではありません。
 
長い時間をかけてアセットライト化を進めてきました。
 
土地や建物への投資は、不動産会社や投資会社など別のオーナーが行う。
 
ホテルチェーン側は、ブランド、予約システム、会員組織、マーケティング、運営ノウハウなどを提供する。
 
そしてロイヤルティやフランチャイズ関連のフィーなどを受け取ります。
 
つまり、
 
「ホテルという不動産を増やす」
 
というより、
 
「ホテルを動かす仕組みを増やす」
 
ことで世界中へネットワークを広げているわけです。
 
 

訪日旅行客が日本に来るまでに何度も外資系企業にコストを支払う構造になっている


日本側が担っているのは「重たい部分」


 
一方、ホテルそのものを所有・運営する側には、大きな投資と日々の仕事があります。
 
土地を取得する。
 
建物を建設する。
 
資金を調達する。
 
従業員を採用する。
 
毎日客室を清掃する。
 
料理を提供する。
 
設備が壊れれば修理する。
 
10年、20年経てば大規模修繕も必要になります。
 
ホテル経営の中でも、簡単にはスケールできない「重たい部分」です。
 
一方で、広告、予約プラットフォーム、決済ネットワーク、ホテルブランド、会員組織などは、一度大きな仕組みを作ることができれば世界中へ展開できます。
 
この違いはかなり大きいと思います。
 
 

マリオットが強い理由は、ホテル数だけではない


 
海外ホテルチェーンについて調べていて特に興味深かったのが、会員プログラムです。
 
マリオット・ボンヴォイやヒルトン・オナーズというと、
 
「ホテルに泊まればポイントが貯まるサービス」
 
というイメージがあります。
 
しかし実際には、もっと大きな役割を持っています。
 
宿泊を重ねれば会員ランクが上がり、アップグレードやレイトチェックアウトなどの特典を受けられる。
 
すると利用者は、
 
「せっかくなら次も同じ系列に泊まろう」
 
と考えるようになります。
 
さらにクレジットカード会社との連携があります。
 
提携カードをスーパーやレストラン、ネットショッピングなどで利用してもホテルのポイントが貯まる。
 
ホテルに泊まっていない間にも、
 
「次はこのポイントでどこへ旅行しよう」
 
という動機が生まれます。
 
ホテルチェーンが旅行者と接触するのは、宿泊している数日間だけではないわけです。
 
 

日本へ来る前から顧客になっている


日本に来る前からホテル同士の予約獲得競争の勝負は決まっていることも多い


 
ここがインバウンドを考えるうえで非常に興味深いところです。
 
例えば、アメリカ人が日本旅行を計画するとします。
 
東京3泊。
 
京都2泊。
 
大阪2泊。
 
その人がすでにマリオット・ボンヴォイの会員で、ポイントや会員ステータスを持っていたらどうでしょう。
 
日本へ来てからホテルを探す必要はありません。
 
アメリカの自宅でアプリを開き、
 
東京のホテルを探す。
 
京都を探す。
 
大阪を探す。
 
ポイントも使える。
 
会員特典も受けられる。
 
普段から利用しているブランドなので安心感もあります。
 
場合によっては、日本へ出発する前にすべて系列ホテルで予約が完了します。
 
日本のホテル会社が「インバウンド客をどう獲得するか」と考えるより前から、海外ホテルチェーンはその旅行者との関係を持っている
 
この差はかなり大きいと感じます。
 
 

インバウンドが増えれば、日本企業も同じように儲かるのか


 
ここまでお金の流れを追ってみると、
 
「インバウンドが増えれば、その分だけ日本のホテル会社も儲かる」
 
というほど単純ではないことが見えてきます。
 
検索やSNSにはGoogleやMetaがいる。
 
予約にはBooking.comやAgoda、Expedia、Airbnbがいる。
 
決済には国際的なカードネットワークがある。
 
さらに宿泊先が外資系ホテルなら、ブランドや予約システム、会員組織などにも海外企業が関わっています。
 
もちろん、これらの企業が悪いわけではありません。
 
むしろ世界中から旅行者を日本へ連れてきてくれる非常に便利な仕組みです。
 
日本のホテル側も、その恩恵を大きく受けています。
 
ただ、
 
「外国人旅行者が日本で100万円使った」
 
という数字だけでは見えないお金の流れが、その裏側にはあります。
 
 

日本側に残せる価値をどう増やすか


日本企業も利益の最大化に向けて、自社でできる対策をとっていく必要がある


 
日本には、海外企業が簡単にはコピーできないものもあります。
 
歴史ある旅館が持つ立地。
 
その土地から湧く温泉。
 
旅館文化。
 
地域の食材。
 
料理人の技術。
 
何十年、場合によっては100年以上前から営業している旅館には、今からお金を出しても手に入らない立地があります。
 
温泉の源泉も同じです。
 
小規模なオーベルジュなら、地域の食材と料理人の技術を組み合わせ、一組ずつ丁寧に料理を提供することもできます。
 
こうした価値は、世界規模で標準化された仕組みとは違う強さがあります。
 
 
だからこそ、今後はこの価値そのものを磨くだけでなく、それをどうやって自分たちで発信し、直接顧客とつながるのかも重要になってくると思います。
 
 ↓ 別記事でもインバウンド集客について紹介していますので、よろしければ参考にしてください。

 
インバウンドが増えることは、日本にとって大きなチャンスです。
 
ただ、外国人旅行者が増えることと、日本のホテル会社が強くなることは同じではありません。
 
旅行者が日本を知り、検索し、予約し、決済し、宿泊する。
 
その一連の流れの中で、誰が顧客との接点を持ち、誰が利益を得ているのか。
 
ホテルそのものだけでなく、その前後まで含めて考える。
 
インバウンド市場が大きくなるほど、そんな視点が重要になってくるように思います。



生成AIが新しいチャンスになる

そして今、大きな転換点が来ています。

生成AIを使って旅行やホテルを探す人が増えており、海外では3〜4割に達しているという調査結果もあります。

これは日本のホテルにとってチャンスだと思います。

SNSで外国人向けの情報を低コストで発信する。同時に、自社サイトにも詳しい情報を蓄積し、生成AIに見つけてもらいやすくする。

この二つを両輪で回せば、海外OTAだけに頼らず、海外から直接予約を獲得できる可能性があります。

生成AIでホテルを探す人は国内外で増加している
OTAの呪縛を逃れられる最後のチャンスかもしれない

ホテルの探し方が変わる今だからこそ、新しい集客の仕組みを作っていきたいと考えています。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー