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【映画レビュー】『未来』

湊かなえ原作のミステリー。過酷な日々に耐える女性たちに未来はあるのか

かつてはピンク映画四天王と呼ばれ、その後一般映画に進出して「菊とギロチン」「64-ロクヨン」「ラーゲリより愛を込めて」「護られなかった者たちへ」など多数の作品を監督してきたベテランの瀬々敬久監督。以前に直接顔を合わせたことがあり、その後何度か酒席で一緒になったこともあったりするので、できるだけ彼の作品は観るようにしている。

というわけで、今回は湊かなえの小説を映画化したミステリー・ドラマだ。脚本は、「ある閉ざされた雪の山荘で」の加藤良太。


あらすじ
複雑な家庭環境で育ちながらも、祖母に育てられて教師になる夢をかなえた篠宮真唯子(黒島結菜)。ある日、彼女の教え子である佐伯章子(山﨑七海)のもとに、「20年後のわたし」と名乗る人物から手紙が届く。半信半疑のまま手紙に返事を書くことで、父(松坂桃李)を亡くした悲しみや心を閉ざした母(北川景子)との孤独な日々に耐える章子。だが、母の新しい恋人からの暴力やクラスメイトからの壮絶ないじめに容赦なく追い詰められた彼女は、ついに同じような境遇の親友・亜里沙と「親を殺す」ことを決意する。そんな章子を救おうとする真唯子だったが……。



映画の冒頭は、真唯子が疾走するシーン。一方、彼女の教え子だった章子と亜里沙は急いでバスに飛び乗る。真唯子はバスのところまで来るが間に合わない。章子と亜里沙を乗せたバスは出発する。

続いて真唯子が単身でこちらを向いている。どうやら証言をしているらしい。ドリームランドというテーマパークの話をしている。子供たちの憧れの場所。いわばディズニーランド的な場所だろうか。

一方、バスの中で章子は1通の手紙を手にする。それは「20年後のわたし」と名乗る人物から5年前に届いた手紙だった。

そこからドラマは5年前に飛ぶ。入院していた章子の父・良太が亡くなり、もともと精神に波があった母・文乃は心を閉ざしてしまう。そんな母を章子の担任の真唯子が励ます。ところが、真唯子が倒れかけた母を支える姿を目撃したクラスメイトは、あれこれと囃し立てて「真唯子が章子をひいきしている」と騒ぐ。それは章子に対するいじめの予兆であり、やがて真唯子の運命も大きく変える。

その後、ドラマはまた時間をさかのぼって真唯子の大学時代が描かれる。母が家を出て父が亡くなり、祖母に育てられた彼女は、同じアパートの青年・原田勇輝(坂東龍汰)と親しくなる。しかし、まもなく祖母が急死。生活が苦しい彼女は誘われるままに、いかがわしい仕事に手を出す。

時間は再び今に飛ぶ。文乃がようやく仕事を始め、そこで親しくなったシェフと一緒に暮らすようになる。章子もまたその家に住む。シェフは独立するが、あることから店に客が寄り付かなくなる。それをきっかけに彼は本性を現すようになる。同時に、章子には学校で壮絶ないじめが行われるようになる。

章子は「20年後のわたし」の手紙に返事を書くことで、どうにか過酷な毎日をやり過ごす。しかし、彼女はどんどん追い詰められる。そんな中、同じような境遇の同級生・亜里沙と親友になる。

こうやって時間を行き来して、章子や真唯子、亜里沙など様々な人物のドラマが描かれる。そこにはたくさんの個性的な人々が登場してドラマを賑わす。どのエピソードをとっても、それだけで1本の映画になりそうなほどである。なので、どうしても散漫な印象は拭えない。一応テロップで時間と場所が表示されるものの、私は話についていくのでやっとだった。

また、それらのエピソードは不幸に見舞われた女性たちの物語でもある。そこに横たわるのは、貧困、いじめ、売春、児童虐待などの様々な社会問題だ。このあたり、いかにも瀬々監督の映画らしいと感じたが、あまりにもたくさんの要素が入り込んでいて(しかもけっこうドギツイ)、それほど心を動かされなかった。極論すれば、「あらぁ、またまたそんな凄いことが起きるのね」と冷めた目で引いて観てしまったのだ。

原作は未読なのだが、このあたりは原作通りなのかもしれない。何しろ原作は「イヤミスの女王」湊かなえである。だとすれば、原作の特徴は十分に再現された映画ともいえるだろう。

それでも真唯子と勇輝の交流に、大島渚の「青春残酷物語」や小津安二郎の「東京物語」などの名作を出したり(これも原作通り?)、序盤でドリームランドのPV的な映像を流したり、章子と母のドラマでお菓子のマフィンを巧みに使うなど、様々な小技を駆使して観客を飽きさせない工夫をしている。映像的にも瀬々監督らしいこだわりの映像が随所に見られる。

終盤には、新たに文乃と良太の若き日の出会いのドラマが描かれる。ちょっとファンタジー色もあるドラマだが、これがまた壮絶すぎるのだ。吹越満が演じる文乃の父親が最低な奴なのである。よく考えれば、吹越や玉置玲央が演じるこの映画のワルは本当にひどいよなぁ。ここでもやや引いて観ている私。

そして、そこで起きるある犯罪が、現在進行形の章子と亜里沙による「親を殺す」計画とリンクしてくるという仕掛け。なるほど、そう来ましたか。ミステリー的になかなか秀逸な展開。

エンドロール前のラストシーン。章子と亜里沙の「叫び」がいい。エンドロール中に描かれる後日談ともども余韻を残す。タイトル通りに「未来」を感じさせるエンディングだった。

俳優たちの奮闘ぶりも見もの。黒島結菜、北川景子ら大人の俳優たちの演技も良いが、「渇水」でも素晴らしい演技を見せていた山﨑七海をはじめ近藤華、野澤しおりなど若手俳優の演技が出色。

原作を読まずに観たことが私の失敗だった。この映画は、原作を読んでから観るべきだろう。それでも湊かなえらしさはきっちり押さえてあるし、複雑な話の原作を2時間強のドラマにきっちりまとめたところは評価できる。

原作を読んでからまた観ようかしら。でも、私、湊かなえの小説って苦手なんだよなぁ(笑)。

◆「未来」
(2026年 日本)(上映時間2時間10分)
監督:瀬々敬久
出演:黒島結菜、山﨑七海、坂東龍汰、細田佳央太、近藤華、玉置玲央、野澤しおり、吹越満、松坂桃李、北川景子、西野七瀬(声の出演)
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開中
公式ホームページ 
https://mirai-movie.jp/
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●鑑賞データ
2026年5月18日(月)TOHOシネマズ 池袋にて。午後12時35分より鑑賞(シアター7/d-8)

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