「文化財に泊まりたい。」No.6-2 飛騨古川散策と「八ツ三館」宿泊記 2025.5.19-20
(No.6-1からのつづき)
八ツ三館の門をくぐり玄関に入ると、大きな一枚板に八ツ三館の文字。その横には五月らしく、三段飾りの武者人形。緑の敷布が玄関の雰囲気に合っている。

そして、なんと着物姿の若い仲居さんが二人、正座してにこやかに迎えてくれた。
「おあがりください」と案内されて靴を脱いでスリッパを、、、あれっ、見当たらない。すぐに合点がいった。上がり框を跨いだら畳なのである。なるほど、見える範囲は廊下もすべて畳(敷物)である。後で知ったが、冬は床暖だそう。

チェックイン待ちのため通されたのはフロントの斜向かいの「月の間」。和風のラウンジである。部屋には他には誰もいない。どこに座ろうか迷ったが、大きな切り株のテーブルがよさげ。

ほどなく仲居さんさんが抹茶とお菓子を運んできてくれた。一服したところでタブレットを使ってチェックイン完了。
仲居さんの先導で、風呂場、食事処などを一巡。まるで迷路。酔っぱらわなくても迷子になりそう。ちなみに八ツ三館の建屋のうち、登録文化財になっているのは大広間棟と本館及び土蔵の3棟。

大広間棟は1階に現在の玄関・フロントや月の間等があり、2階に大広間がある。本館は今回宿泊する招月楼だ。1階が旧玄関で、2階が客室。映画「あゝ野麦峠」の舞台にもなった建物だ。

左から観月楼(新館)、大広間棟(現玄関)、土蔵、本館(招月楼)

その2棟の間に土蔵がある。なのでフロントから招月楼までの廊下が土蔵の大きさの分長い。

だが、いたるところに配置されたレトロな調度品や壁の装飾など非日常的な空間に気分が高揚し、距離を感じさせない。むしろ博物館の様でおもしろい。廊下横のトイレの中までレトロ調だったりする。



長い廊下を抜けると本館・招月楼の旧玄関に出る。

入口のたたきからそのまま囲炉裏のある畳の広間に上がれるようになっている。昔の商家はさもありなんといった造りである。

左の赤い壁のところを曲がると玄関・フロントへの廊下

脇役の置物や壁の書、柱にかかった丸い古時計もいい味を出している。

となりの小部屋には映画「あゝ野麦峠」にまつわる資料なども展示されている。映画は見たことがあったかどうか定かではないが、タイトルと「女工哀史」という切ない言葉のイメージはセットで頭の中に残っている。

次はいよいよ客室のある2階だ。1階から天窓の屋根まで吹き抜けになっているので明るく開放的だ。広間の隅に階段がある。

階段のすり減った踏板が経た年月の長さを物語っている。階段を上ってすぐの2階の廊下から1階の旧玄関の広間が見渡せる。いい趣向だ。

さて、自分の部屋はどこだろう。期待が高まる。今回の予約では、招月楼を指定したが、どの部屋になるかはお任せだ。客室の扉の上には七福神の名と小さな面がついている。案内の仲居さんはズンズン進む。

「毘沙門」、「布袋」、「大黒」を通り過ぎ、どうやら一番奥の部屋らしい。ということは「恵比寿」だ。

扉を開けて仲居さんが部屋を簡単に説明してくれる。

なんと襖には山岡鉄舟などの古文書(もちろん本物)が装飾として貼られている。そっち方面には審美眼も興味も持ち合わせていないので、とりあえず「へーッ」と唸るのみ。

広縁の椅子に座ると、窓からは向かいの荒城川を挟んで本光寺が望める。

さらにこの部屋には小上がりの小部屋がついている。しかも囲炉裏もある。使い方は自由だが、「囲炉裏端で静かにお酒を飲むのもいいですよ」と仲居さん。

ちなみに昔は布団部屋だったらしい。結局この小部屋は使わなかったけどね。もったいないけど、おひとり様だから本間だけで十分。
仲居さんが出て行くのを待って、とりあえずビールだ。

ちなみにTHE BITTER-ISTは最近発売らしい
今回買ってきたのはアサヒのTHE BITTER-IST(ザ・ビタリスト)。黒ビールだと勘違いして買ったのだが、うれしい誤算で、なかなか美味い。名前の通り、苦みが効いていて、キリっと爽快という感じ。もう1本の赤ラベルは最近の定番SPRING VALLEY。


ビールと共にしばし部屋の雰囲気を楽しむ。なお、この部屋は音でも楽しませてくれる。一歩一歩に床(畳)が軋み、建物の歴史を奏でてくれるのだ。文化財の宿はいくつか訪れているが、ここまでのは初めてである。楽しい(笑)。
つづく
※画像は2025.5.19-20の滞在時に筆者撮影
