ねこねこネットワークからの贈りもの
旅の途中で、バトンを受け取った。
「新しい年度に向けて、春のバトンをつなげよう!」というSaka.先生のnoteリレー企画に参加している。
私は24走者。
前の走者は七海真砂さん。
命の尊さと再生、そして人と馬との深い絆を、温かく丁寧に描いており、馬と人との静かなドラマを綴った文章に、胸がじんわりあたたかくなった。
読んでいるうちに、わたしが経験した事と、どこか繋がるものを感じて、24番目の走者として私が書きたいことがすぐに決まった。
それは、猫のトラちゃんと命の小さな物語で、2017年の春の夜中、私のベッドで始まった。
猫好きのあいだで、ひそかに語られている都市伝説がある。
「ねこねこネットワーク」、略してNNNという名前で、猫たちがこっそりと情報を交換しながら、人間の家を選んでいるらしい。
“この家は安心できるにゃん”
“ここの人間はまあまあ良さそうにゃん”
なんて評価をつけながら、必要なタイミングで必要な家に猫を送り込むなのだとか。
トラちゃん(本名 トラ子) がうちに現れたとき、私はふと「うち、合格したのかもしれないな」と思った。
2016年の秋の終わり頃だった。毛並みの美しい長毛の猫が、うちにふわりと現れた。
家族と夜ご飯を食べているときに、本当に突然窓辺に現れた。

人懐っこくて、おしゃべりで、名前を呼ぶと「にゃあ」と返事をしてくれる猫だった。ゆっくり、少しずつ距離を縮めて、、というわけではなく、もう出会った時から人懐っこい猫だった。
当時、猫が飼えない事情があったので、家の中にあげることはできなかった。
しかし、トラちゃんと私はすぐに仲良くなった。
私の車もすぐに覚えて、帰ってくるとどこからか、ニャーニャー言いながら必ず来ていた。

そして春。夜中の2時半ごろ、外からか細い声が聞こえてきた。
何度も鳴いている。しつこいなあ…と思いつつ、窓を開けて入れてあげると、トラちゃんはそわそわと落ち着かず、部屋の中をぐるぐる歩き始めた。
そのうち、私のベッドにぴょんと乗り、私の体と腕の間にすっぽりとおさまった。
ふと違和感を感じて手を当てると、布団が濡れていた。
破水だった。
急いで、トラちゃんのために用意していた段ボール箱へと移動させる。
その中で、トラちゃんはゆっくりと、力強く、小さな命たちを産み落とした。
ベッドの中で始まり、段ボールの中で誕生した、春の命。気づいたら、朝だった。



出産からしばらくして、私はトラちゃんを避妊手術に連れて行こうと思っていた。
これからはずっと一緒に暮らしていくつもりだった。あと10年、いやそれ以上。そう信じて疑わなかった。
だからある日、急にトラちゃんの体調が悪くなって、病院に連れて行ったとき、
「この子、今日亡くなるかもしれないよ」と獣医さんに言われたときには、
頭の中が真っ白になった。信じられない、というより、理解が追いつかなかった。
点滴を受けることになり、私はいったん帰宅した。
すると、間もなくクリニックから連絡が入った。
トラちゃんは、そのまま亡くなった。
その夜、私はトラちゃんと一緒に寝た。冷たくなった体を毛布で包みながら、
まだあたたかいような気がして、どうか夢であってほしいと願いながらも、なかなか眠れなかった。
けれどその横で、トラちゃんの子どもたちは、まるで何も知らないように無邪気に跳ね回っていた。
母親がもういないという現実を理解できるはずもない。
とにかく私は、ミルクを買いに走った。育てなければと思った。
ところが、子猫たちは2日ほどでミルクを卒業した。
まだまだ小さいのに、もう離乳食に移っていった。
トラちゃん、乳離れするまでちゃんと見届けていたんだね。
すごいよ。ちゃんと最後まで、お母さんしてたんだね。
誰も教えていないのに、ちゃんと自分で出産して。
私はそのあと、トラちゃんの代わりに子猫たちを育て、
それぞれの新しい家を探した。
みんな、やさしい里親さんに出会うことができた。
そして、私は今でもそのうちの1匹と一緒に暮らしている。
トラちゃんの忘れ形見。あの春にやってきた、命のバトン。
トラちゃんが虹の橋を渡ったときの、あの悲しさと寂しさは、今でも忘れられない。
短い間だったけれど、彼女はたくさんのものを残していってくれた。
今日はこの記事を書きながら、無性にトラちゃんが恋しくなっている。
あれからもう8年。けれど、今でも大好きで、今でも思い出すたびに心があたたかくなる。
美しいトラちゃん。あのときの命たちを、ありがとう。
安全なところで生んでくれたから、出産後は少し息抜きに外出してたよね。
でも、トラちゃんズが鳴くと、すぐにかけつけていたよね。
リラックスしに行ってる顔、ちゃんと覚えてるよ。ふふ。
2022年の夏。
家族で母のお墓参りに出かけた。お盆の時期だった。
そのとき、墓の下に、生まれたばかりの子猫が捨てられていた。
私たちは迷うことなくその子を保護し、家族の一員に迎えた。
おばたちからは
「お母さんが帰ってきたのかもしれないね」
なんて言われている。
トラちゃんも、あの子も。
命は、きっと、つながっている。
バトンのように、静かに、でも確かに、手渡されていくものなのだと思う。
このバトンを、次は すみひろさんにお渡しします。
脚長・美脚のマンチカンと暮らしているとのこと。
……それって、ねこねこネットワークの選抜されたエリート猫なのかもしれません。
どんな物語が綴られるのか、楽しみにしています。
いいなと思ったら応援しよう!
応援よろしくお願いします^^いただいたチップは創作活動としての活動に使わせていただきます!