見出し画像

第4話 若草山の「不良少年」|若草山で転んだ私に、彼が差し出したもの


私が、中学生の頃の話です。
 
学校からの郊外学習で、
奈良の若草山に行きました。
 
自由行動が終わって、集合がかかりました。
山の下の方にいた学生は、
すでに、集合して並んでいました。
 
私は、友達と結構上の方まで行って、
遊んでいました。
 
集合場所で、
すでに大勢が並んでいるのを見て、
焦ってしまった私は、
思わず走ってしまったのです。
そう、若草山の下り坂で。
 
「走ったらダメ!」
という声が聞こえましたが、時すでに遅し。
私は、止まろうにも止まれなくて、
どんどん加速していきました。
 
そして、案の定、
すってんころりん、転んでしまいました。
 
その時、
真っ先に寄ってきて、
自分の帽子を差し出してくれた
クラスメートがいました。
 
紺色の制服についた泥や草を、
「この帽子で拭いたらいい」
と差し出してくれたのです。
 
そのクラスメートは、
学校でも「不良」と噂されて、
ちょっと怖がられていました。
 
私自身は、彼の怖い面など
見たことはありませんでしたが、
噂から、やはり、
「不良」なのかなと思っていました。
 
でも、若草山の一件で、
私は、誰よりも優しい彼を見ました。
 
彼は、怖い不良だったのでしょうか?
それとも、優しい少年だったのでしょうか?
 
私は、彼がその後どんな人生を歩んだのかは
わかりません。
 
でも、少なくとも、私には優しかったのです。
それだけは、確かです。

私は、彼を、優しい人だと言っても
いいでしょうか?




こんな記事も書いています


いいなと思ったら応援しよう!