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第8回 記憶媒体や再生環境によって聴こえ方がどのように変わるのか

※本記事は連載で、全体の目次はこちら(第0回)になります。第1回から読む方はこちらです。

ひとつの音源でもCDがたくさん販売されているのですが

 クラシック音楽のCDを買おうとしたときに、同じ録音なのにもかかわらずCDが複数あることに気がつくと思います。通常のCD以外にもSACD、SHM-CD、Blu-spec CD2、UHQCDなどの記憶媒体があるのです。ややこしいですよね。
 まず、SACDというのは、いうなればDVDの記憶容量を贅沢に使って音楽情報だけを入れたものです。それに入っている音楽情報は専用のプレーヤーを使わないと再生できないので、オーディオにこだわる人以外は手を出さなくてもいいと思いますが、SACDのほとんどは「SACDハイブリッド」という形で販売されています。このハイブリッドというのは、SACDにしか入らない高音質の音楽情報以外にも通常のCD並みのデータ量の音楽情報が含まれていることを意味しています。そして、この情報に限れば通常のCDプレーヤーやパソコンで読み取ることが可能です。しかもSACD化されるときには、大体CDとして持っている音楽情報も、すでに発売されている音源と比べて高音質になるような処理(最新のリマスタリング等)が施されています。そのため、好きなCDがあって「SACDハイブリッド」としても出ているのであれば、買っておくべきでしょう。
 また、SHM-CD、Blu-spec CD2、UHQCDというのは、音楽情報をより正確に読み取れるような技術で作成された高品質CDのことです。これらは通常のCDプレーヤーやパソコンで読み取ることが可能ですので、買っておいて損はありません(ちなみに、パソコンに音楽データを取り込む際には、ロスレス圧縮形式のFLACファイルもしくはALACファイルで取り込むと良いでしょう)。
 私はこれらの音源を聴き比べてきましたが、重要なのはこういった記憶媒体の違いよりもむしろリマスタリングの違いの方が大きいと思っています。自分の好きなCDが複数の記憶媒体で世の中に出ていたら、どれがリマスタリングが違うのかを調べたうえで、それらを一通り揃えてみて一番好きな味付けをしているCDを愛聴盤にするといいでしょう。いくつかの録音でこれを試してみれば、CDメーカーごとの特徴や味付けの相場感ができてきますので、それ以降は一通り揃えなくとも狙い撃ちで買っていけるようになると思います。
 
 クラシック音楽の世界は奥が深く、CD以外にもレコードやデジタル販売しているハイレゾ音源があります。ただ、これらの音楽情報を引き出し再現するのは相応のスピーカー、レコードプレーヤー、フォノイコライザーなどが必要になるので、SACDと同じかそれ以上に敷居が高くなるでしょう。そのため、これらの説明はオーディオ入門書などに譲りたいと思います。
 
 パソコンでクラシック音楽のCDを楽しむ際には、CDドライブにもこだわりたいものです。以前に、図書館で借りることができるCDには読み取り面に傷が多く付いているので、読み込んだ音楽データは音質が劣化したものになりやすいという話をしました。CDドライブがCDからうまく情報を読み取れなかった音楽データを聴いてみると、読み取れなかった箇所が“ブツッ”と飛んで聴こえます。CDを読み取るソフト(iTunesなど)で「エラー補正」という機能を有効にすると、このように読み取れなかった箇所を前後の音楽情報で内挿して補いますが、その分その箇所の音質が下がります。怖いのは、聴いているだけだと音が途切れるわけではないので、音質が落ちた箇所がどのくらいあったのかがわからないということです。
 このようなことをなるべく避けるには、

・新品のCDを買って大事にしておくこと
・ちゃんとしたCDドライブを使うこと
・そもそもCDからの読み取りに影響されないデジタルダウンロードで購入すること


が大事です。例えば、パイオニアのCDドライブには「PureRead(ピュアリード)」という機能が付いているものがあります。この機能は、指紋や傷、ディスクのそりなどによって、音楽データが正確に読めなかった場合に発生するデータの補間を様々な読み取り方法によって防ぐ機能ですので、音楽を愛する人に適したCDドライブだと言えるでしょう。

イヤフォンやスピーカーはどれを選べばいいの?

 以前にも話をしましたが、クラシック音楽を聴いていると、やはり普段聴いているイヤフォンやスピーカーがフルオーケストラをちゃんと再現できるのか、と思えてきます。そこで、自分に合った再生機器を探す方法について、ご紹介したいと思います。
 まず、手軽にどこでも音楽を愉しめるイヤフォンやヘッドフォンについてですが、これは大型の家電量販店にいけば、(超高級品を除けば)様々な製品を聴き比べることができますので、自分が普段から聴く音楽をかけてみて、自分の耳で選べばいいと思います。とはいえ片っ端から聴いていくのは大変なので、ある程度当たりをつける必要があります。そこでおすすめなのが、音元出版が毎年主催している「VGP」です。これは国内最大級のオーディオビジュアル機器の総合アワードで、ホームページ上にて価格帯ごとに優れたイヤフォンやヘッドフォンが紹介されています。ここで高く評価されている製品に絞って試聴してみるとよいでしょう。
 イヤフォンやヘッドフォンが決まったら、今度は店頭に並んでいるポータブルデジタルオーディオプレーヤーに購入したイヤフォンなどを差して、どのプレーヤーがいいか選んでみてください。普段スマホで音楽を聴いている人も、ある程度高価なポータブルプレーヤーを試聴してみれば、音楽の表現力やアタック感が全然違うので驚かされることになるでしょう(クラシック音楽よりもポップスやロックの方が違いが顕著でわかりやすいと思います)。私も「別に普段のスマホで再生しようが、そんなに変わらんやろ」と昔は思っていたのですが、音楽再生に特化したポータブルデジタルオーディオプレーヤーの実力を知ってからは「もっと早く気づいていれば…」と後悔することになりました。それに無理にスマホでクラシック音楽を愉しもうとしても、日に日に愛聴の音楽データが増えていって内部ストレージを圧迫するようになることが目に見えています。ポータブルプレーヤーを購入する際も内部ストレージに余裕のあるものを選んでおくとよいでしょう。
 また、ポータブルプレーヤーには、「アップサンプリング」「デジタルフィルター」「ロックレンジ調整」など様々な音質設定が可能なものがありますので、購入した後に説明書を読みながら、自分の好きな音源をベースにしてあれこれと微調整してみるといいと思います。
 
 続いて、スピーカーやアンプ、SACDプレーヤー、レコードプレーヤーの購入については、先ほどの音元出版が毎年主催している「オーディオ銘機賞」の他、これらの製品を紹介するオーディオ雑誌が参考になるでしょう。『ステレオ』『ステレオサウンド』『アナログ』などの雑誌がそうなのですが、これらはだいたい年末年始に優れた新製品を表彰するグランプリを開催していたり、ベストバイコンポーネントを選出しています(ちなみに、私がもっとも信頼を置いているのは、雑誌『無線と実験』が毎年開催している「MJテクノロジー・オブ・ザ・イヤー」です)。これらで高く評価されている製品については、誌上での評価を鵜呑みにせず、自分の耳で確かめてみてください。確かめる場所としてオススメなのは、国内外のオーディオメーカーが一堂に会する「インターナショナルオーディオショウ」です。毎年、東京国際フォーラムで行われ、各メーカーのフラグシップモデルの実力を直に確かめることができます。
 
 このように、再生環境についてあれこれ悩むこと自体も楽しいのですが、再生環境をちゃんと整えた後に自分が好きな演奏を聴いてみると、見違えるように解像度が高くなり、音一つ一つが艷やかで甘美に鳴るようになります。そして、今まで聴いてきたCDや音源に、こんな豊かな音が含まれていたのかと驚かされるのです。
 ただし、どれだけ再生環境を整えても生の演奏にはかないません。生のコンサートに行くと、音によって私達の髪や服、横隔膜が揺れることがありますが、スピーカーでいくら音量を上げてもこのような臨場感までは再現できないと思います。ちょうど、テレビが太陽の眩しさを再現できないのと同じように、実演の輝かしさや臨場感をそのまま再現できるスピーカーは今のところありません。

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