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視力3.0を求めて 〜最高の黒、Vanta Black(ベンタブラック)〜

2025年は「視力3.0」の実現へ向けて研究しています。

前回投稿では、既存の視力表の問題点について投稿しました。
現在広まっている視力検査表は、視力2.0までしか測れません。
また、検査の仕様を満たしていればいいので、必ずしも高い視力を計るための、ベストな材料を使ってないんです。黒はあんまり黒くなく、白はなんだかくすんでいる…

今回はその問題点のうち、「最高に黒い塗料」について投稿します。

最強の暗黒物質「ベンタブラック」
最高に黒い物質について、ネットで調べると、真っ先に検索に引っかかるのは「Vantablack」(Vertically Aligned NanoTube Arrays 垂直に配列したカーボンナノチューブ)ですね。非常に有名なので、wikipediaにも掲載があります。イギリスのサリーナノシステムズ社で製造しています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF

可視光(目に見える光)を最大99.965%を吸収するのだそうです。0.035%しか光が返ってこない。光がほとんど返ってこないということは、目にはほとんど何も見えません。

参考に、木炭は4%を反射します。ちょっと見えるんですね。

wikipediaより引用。確かに凹凸などが見えません。

なぜすごく黒いか?その原理としては、縦に並んだカーボンナノチューブに光があたり、その光はチューブ間に閉じ込められ、継続的に屈折して吸収され、最終的に熱として放散されるのです。

普通の黒い塗料だったら、光はいくらか反射してしまう。カーボンナノチューブというナノサイズ(1ナノメートルは、1メートルの1/1000000000分の1大きさ!)の物質を使ったことによる特徴ですね。

マサチューセッツ工科大学にもさらに黒い、光吸収率99.995%の物質ありますが、こちらは日本では商用で入手はできないようです。
https://news.mit.edu/2019/blackest-black-material-cnt-0913

何に使われているのか?どうやって作るのか?
Vantablack、何に使われているのでしょうか?そして、どうやってつくるのでしょうか?視力表に使える?サリーナノシステムズ社の日本代理店である、オーシャンフォトニクス社を訪問して、聞いてみました。

Vantablackにはいくつかグレードがあるようで、オリジナルのCVD(chemical vapor deposition 化学堆積法)で作る方法は約400℃くらいに加熱しなければいけないようですが、商用販売しているものはもう少し低い温度でもよく、またスプレータイプもあるようです。でも、こちらは光吸収率が少し下がるようですね。加工方法と光学特性に違いがあります。
 撮影、SNS掲載許可をいただけたので、以下に掲載します。

ベンダブラック グレード一覧

一番右の2つ、青ピンでとめられているものがオリジナルに近いSシリーズ、99.965%の光吸収率を持ち、CVD法で300℃で形成します。赤ピンのものがS-VISシリーズで、99.8%の光吸収率を持ち、CVD法で100℃で形成します。一番左の緑ピンでとめられているタイプはVBXー2シリーズ、99%の光吸収率を持ち、スプレー法で100℃で形成します。
 スプレーでできればいいのですが、やっぱり99%の光吸収率では少しムラが見えますね。

光吸収率99%のものは、凹凸が見える。

どんな用途に使うんですか?と聞いたところ、一番大きなビジネスになっているのは、宇宙用望遠鏡の内部の迷光防止膜とのこと、宇宙の観察に使われているようです。

レンズから入ってきた光が、望遠鏡内部の壁に当たって撮像素子にあたると、ノイズが増えて鮮明な画像が撮影できなくなるので、ベンタブラックでコーティングして、余計な光を吸収しているのですね。

視力検査表に使えるのか?
さて、この「最高に黒い物質」を視力検査表のランドルト環に使っていいのか?というのが私の取り組みなわけです。試験費用はどのくらいか、質問したところ、300万円~、とのことです。うん、高い。

科学研究費で300万円というのは決して高い価格ではありません。英国に輸出してCVD法で作るのであれば、真空チャンバー、装置が必要ですし、プロフェッショナルの人件費がかかります。半導体業界では妥当な値段と言えるでしょう。しかし、個人で研究する零細企業の私には、なかなか出せる額ではないですね。研究助成などに応募する必要がありそうです。

ホビー用途で利用したいという人が来るケースもあるが、価格を聞いて断念するのだとか。宣伝では時計や自動車などに塗布していますが、あくまで展示用だそうです。

使用制限や特許について聞いてみたところ、特に何に使っても制限はなく、少なくとも視力検査表の用途では、前例がないし聞いたこともない、とのことでした。

製造法自体は、問題がなさそうです。CVDやスプレーであれば、ランドルト環のC型をくりぬいたマスクを作り、その上から形成すればいいのです。

実際はマスクと基材のすきまから潜り込まないか、濡れ性はどうか、など気にする必要はあるのですが。

また、マスク自体、視力3.0のランドルト環を作れるほど小さく加工できるのか?という問題も生じます。確認しなければいけない問題が多いですね。

しかもこのベンタブラック、触ってしまうと光学特性が失われる、というのです。カーボンナノチューブの配列が壊れてしまうんですね。なるほど、取り扱い注意で、表面を保護しないといけないのか。

まとめ

暗黒物質ベンタブラックを視力検査表に使うことは、原理的にはできそうです。加工の試験や、何の基材を選ぶか、試験費用(研究費)を捻出する方法など、課題がいくつか見つかりました。一つ一つ解決していきましょう。

なおベンタブラックの写真や情報をSNSに掲載する許可はいただいております。オーシャンフォトニクス様、ご快諾いただきありがとうございます!

次回は、このベンタブラックを形成する「最高の白い物質」、について投稿しようと思います。どうぞお楽しみに!

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研究者など、本件にご関心ある方、コメントも歓迎します。

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