夏至過ぎる日々
「夏至過ぎる日々」
月曜の朝から雨の音つよくぼんやりとして耳をかたむけ
母親に右手を引かれ動けない記憶なんども肘抜けをした
雨の日に夏至を迎えて回れ右一日ごとにやがて冬至へ
ぶ厚くて焼けそうもなきマグロの鎌を塩焼きにしてつつく夏の夜
相談があるといはれし部屋の隅たたずむひとの肩ほそくみゆ
魚には肩がないねといふ彼にタイのタイてふものをしめせり
タタキすら融けてしまへるこの土地に太平洋の魚は遠し
ゲヴェルツトラミネールの味濃くて食前酒にして包丁を持つ
つぶらな目見上げるひよこの頭から噛じりながらの朝のコーヒー
ていねいに巻き戻しゆく大輪のハイビスカスにさやうならいふ
たおやかな声のつづきはすれ違う列車に消され鉄女の真顔
夏が来て白神の峰の空にわく積乱雲の列をなす午後
横たわるシングルベッドに猫暑し寄り添うことの容易くなけれ
秋田道制限速度で走りたる公団パトカーは次々抜かれ
秋田にもやうやく梅雨の雨きたる脳も除湿のモードにいれる
風のなき宵に旅だつ蛍火の消えゆくごとくひとを見おくる
晩年に奇行ありしと聞きしかど白き頭の穏やかに見ゆ
南天の雲間に星の瞬きてここに過ごせし日々を見まもる
