小学生の頃からイタリアで最も行きたかった、憧れの場所に行った時の話。
こんにちは。いつもはTALESにコツコツと小説を書いております、紘野流(ひろの ながる)と申します。 時々、気晴らしにnoteに登場します。
今月から、TALESの「お仕事・人間ドラマ」のジャンルで、『靴磨き師のヴィジオーネ』という漫画原作を想定したお話を掲載しています。

これは、昨年6月〜10月に連載し、「創作大賞2025」ミステリー小説部門で入選となった『靴音はラプソディアのように』という「小説」を「漫画原作」用にリライトしたものです。第一章は両方とも同じストーリーなのですが、第二章からは別のお話になる予定です。

さて、この『靴音はラプソディアのように』というお話で、主人公がイタリアのサン・ジミニャーノという街に行くシーンがありまして、読んだ方から「架空の街かと思ったら実在の街だった。wikipediaにあって驚いた」と感想来ました。
今の時代はwikipediaどころか、Googleのストリートビューで現地の様子を参考にできる良い時代ですが、基本的に紘野流の作品で描かれている場所は、紘野流が実際に行った場所でちゃんとイメージできている、というケースが大半です。もちろんサン・ジミニャーノも行ったことがあるし、気に入った場所だから作中に使いました。
この下の写真が、作中でも出てくるサン・ジミニャーノのチステルナ広場。左側に人が集まってますが、そこが、作中で伊能羅磨と足立進道が食べていた世界一の称号を持つジェラート屋さんです。(世界大会で2連覇したお店らしい)



私は海外旅行をするなら特にヨーロッパ旅行が大好きで、ヨーロッパの文化がとてもお気に入りです。しかも首都のような大都市よりも、このサン・ジミニャーノのような小さい街の方が、街全体が世界遺産だったりしてすごく好きです。(サン・ジミニャーノも旧市街地全体が世界遺産です)
『靴音はラプソディアのように』はイタリアに行ったりイタリア語が散りばめられたりと、イタリアの雰囲気を味わえる作品ですが、イタリアといえば、私は小学生の頃から「いつか、イタリアのあの場所に行ってみたい!」と憧れていた場所がありました。
「イタリアに旅行に行ってきた!」という人にはこれまで死ぬほどお会いしましたが、みんなローマとかフィレンツェとかベネチアとかミラノとかの話ばかりで(しかもみんなほぼ同じ観光スポットばかり)、その場所に行った日本人に会ったことがありませんでした。
今日は、そんな「小学生の頃から憧れていたイタリアのあの場所」のお話。
そのきっかけとなったのが、小学校の時に読んだこの漫画。

中央公論社の中公コミックス『世界の歴史』第3巻「大いなる理想 ギリシャとローマ」です。「これ、読んだことある!」という人は、めちゃくちゃツウ!(会ったことない)
私は幼少期は実家がすごく極貧で、家も狭く、マンガを買ってはいけないという家庭でした。でも、学習漫画の先駆者である『マンガ日本の歴史』だけは揃えることを許され、その延長線上で『世界の歴史』も買ってもいいよとなりまして。このシリーズ、8巻ぐらいまで持っていました。他に読む漫画のない家でしたから、何度も繰り返し読みました。
なんと、手塚治虫先生が監修という超絶すごいシリーズなのですが、全然売れなかったのか、地元ではそれ以降が全く手に入らなくて。それ以降が出版されたのかどうかも、当分知りませんでした。出版社も無くなってたし。
そういえば昨年、この『世界の歴史』シリーズ、最終巻まで全巻を古本屋で激安で見つけたんですよ! 1冊各100円で。もちろん即買いで、念願の全巻コレクション達成!

東京在住時代には神保町などを巡っても一切見なかったこのシリーズが、九州に来てから、人気ブロガー・山田全自動さんの経営する福岡の「ふるほん住吉」で見つかりました。(最近閉店しちゃいましたが・・・)
で、話はその第3巻『ギリシャとローマ』ですよ。

これ、表紙に書かれている2人の少年が主人公で、右がローマ帝国を建国し初代皇帝アウグストゥスとなるオクタビアヌス、左の黒髪がその幼馴染のアルゴスという架空の人物(たぶんモデルは将軍アグリッパ)。この巻がシリーズの中でも最も好きで、幼い頃に何度も何度も読んだのです。
それで、幼少期の私がずっと憧れていたのが、その冒頭のシーンですよ。
オクタビアヌスの大叔父にあたり、ローマの独裁官となるかのユリウス・カエサルことジュリアス・シーザーが、ガリアを平定してローマへと帰還するシーン。

詳しくない方のために説明しますと、シーザー(カエサル)というのは戦の天才で、ローマより北の広大なガリア(フランスとかオランダとか)を平定するも、その間にポンペイウスなど他の政治家がローマを牛耳って、ローマを封鎖してシーザーを追い出してしまうのです。
それでこのシーンは、ローマの外で孤立していることを知ったシーザーが、ローマに攻め入るのを決断する、有名なルビコン川のシーンです。ここで決意し言ったとされる「賽(さい)は投げられた」の名言や、「ルビコン川を渡る」という慣用句なども、とても有名です。

で、その史実のとおり、このページの最後のコマでウォォォッとシーザー軍がルビコン川を渡ってますよね。このシーンがすごく好きで、いつかルビコン川に行ってみたい!と紘野は憧れたわけです。
でも、この最初のシーン、もう一度見てください。アントニウスという副官がシーザーのところに駆けてきます。ちなみにこのアントニウスは、シーザーの死後、エジプトのクレオパトラと結婚し、オクタビアヌスと「アクティウム海戦」で決戦する最大のライバルとなる人物。

アントニウスはローマ方面に偵察して行ってたから、先にルビコン川を渡っていて、向こうからまたルビコン川を渡って戻ってきているわけですが……
ルビコン川、めちゃくちゃ浅くね? と思ったわけです。
馬の足首ぐらいしかない深さみたいな描かれ方じゃないですか。あの有名なルビコン川を、どうしてこんな小川みたいな描き方するんや? と当時すごく不思議で。こんな小川だったら、全然「いざローマへ!」みたいな決心のシーンとしては小さすぎる気がしたんですね。
だから、いつか行ってみて、「実際にはルビコン川ってどれぐらい大きな川なのか、見てみたい!」と、ずっと憧れていたわけです。
それで今から数年前なんですが、イタリアに初めて行くことになりまして。その時に絶対にルビコン川を見に行くことにしました。というか、ルビコン川を見に行く余裕ができるまでイタリア旅行をずっと断念して、他の国で我慢してました。
と言っても、ルビコン川の場所は昔から諸説ある。一応、戦前にムッソリーニ首相が「ここにしよう」と定めたサヴィニャーノ・スル・ルビコーネという小さな街があるとのことで、そこに行くことにしました。
ただ、そこに行くにはどうしても車が必要。そこで、日本から到着したローマの空港でレンタカーを借りて、帰国便が出るミラノの営業所で乗り捨て返却することにし、その途中で寄ることにしたんです。
前の日はサンマリノに泊まりました。サンマリノはれっきとした共和国で、正確にはイタリア国外になるわけですが(レンタルしてたイタリア専用のモバイルwi-fiも、サンマリノに入った瞬間に繋がらなくなる)、サンマリノからなら、車で1時間ほどでサヴィニャーノ・スル・ルビコーネに着くはず。


サンマリノ城のここの階段、分かりますかね……。『ルパン三世』のPART-4の第1話でめちゃ激走してた場所ですよ。架空の国の話だから私には『カリオストロの城』は1mmも面白くない、とこの記事で書いてましたが、ここの階段やサン・レオ城なんかは実在してますから、PART-4はとにかく本当に面白かった。カリオストロの140倍ぐらい。
で、サンマリノ城下のホテル(『ルパン三世』ではニックと対決した場所のすぐ近く)に一泊して、次の日の朝、車で現地に向かいます。
この時、2月という真冬でして、全然晴れていなかった。ここからも曇り空の写真が続きます。
それでGoogleMapを頼りに、現地に到着したわけですが……。近くの駐車場に車を停めて、歩いてきたら、こんな感じ。この橋のようです。

つまり、この橋の下がルビコン川ということですね。見下ろしてみると……

ルビコン川、小さっ……! え、想像よりもめちゃくちゃ小さい! 右側に、下に降りる道が見えるので、降りてみたら……

なにこれ、ジャンプしたら向こう岸に行けるぐらい小さい! 『世界の歴史』3巻の浅いルビコン川の描写はほぼ合ってたということか……っ!

本当になにもない! ただの田舎の、ただの小川。これ、何の事前情報もない人が連れてこられても「何ここ?」で終わるでしょう。
ただ、カエサルの渡ったルビコン川だとイメージできるものは、先ほどの橋の袂にありました。橋に戻ってみると……

橋の袂に、古代ローマの格好をした銅像が建っていますね。よく見ると……

そう、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)の銅像が建っているんです。地元の有志で建てたらしいんですけど、これがあるおかげで「シーザーゆかりの場所に来たなあ」という気にはとりあえずさせてもらえます。
そして、その前に建っている道路標識にもご注目。

一方通行で侵入禁止の下、川のマークと「ルビコーネ(ルビコン川のこと)」と書いてありますね。そして、一番下なんですけど、「GALLIA」と、斜線を引かれた「ROMA」と書かれてあります。
イタリアの標識では、地名があると「ここから先がその場所」、地名に斜線があると「ここまではその場所」という意味。つまりこの下の2枚の看板で、「ここまではローマ、ここから先はガリア」ということを表しているんですね。ガリアとは今は使わない地名ですから、まさにこの歴史のために表示してあるもの。
他の人からすると「なにも無い田舎じゃん」と思う場所でしょうが、私にとっては小学生の頃から憧れていた場所なので、かなりジーンと来てしまって、しばらくここで時間を過ごしていたほどです。行ってよかった。
この後も、イタリアでルビコン川を見てきたよ!という人には会ったことはないですが、ただお一人だけ。本業のほうで面識があった、靴の買い付けのためにイタリアに自らバイヤーとしてよく行かれている靴販売会社の社長だけは、この話をした数ヶ月後に「自分も紘野さんを真似して、レンタカーでそのルビコン川に行ってみたよ!」とおっしゃってくださって。さすが観光ではなく仕事で何度も行っている人はフットワークが軽い!
しかも、この橋のもう少し先まで歩いたところには、名言通りに「賽を投げようとする手のオブジェ」がありましたよ、とのこと。わー、行けばよかったっ! 次は絶対行ってやるっ!
ちなみに、「創作大賞2025」の入選作『靴音はラプソディアのように』を書くことが決まった時に、イタリアをモチーフにしようと思ったのは、そのイタリア靴の販売会社の社長とのお話で「靴といえばイタリア」というイメージがあったから。
安い市販靴ならドイツの見本市、シブい靴ならイタリアの街に直接買い付けという感じ、なんですって。ちなみにその社長はそれまで、イタリアでの買い付けは現地の方に車をアテンドしてもらってたけれども、私のレンタカー旅行の話を聞いた後は自分でレンタカーで行くようになったそうで、今ではヨーロッパに移住されてます。
そんなわけで今回、『靴音はラプソディアのように』『靴磨き師のヴィジオーネ』絡みの、イタリアに関するお話を書いてみました。
ちなみに『靴音はラプソディアのように』で、「卒業旅行でローマ、フィレンツェ、ベネチアの3都市に行った」と歩乃歌が言って、伊能に鼻で笑われるシーンがありますが、これも作者の私が、イタリア旅行で行った印象的な街が、実はローマ・フィレンツェ・ベネチア・ミラノ以外の街ばかりだったという経験から来てたりします。
いやローマなどももちろん良い都市なんですが、それら大都市以外の街があまりにも良すぎて。いずれまたここで、印象的だったイタリアの街、いやそれ以外のヨーロッパの街の話なんかも、読みたい人がいれば書いてみようかなとも思ったり。

これからも、紘野流の作品をどうぞよろしくお願いいたします。
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