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【創作大賞】『エレナ婦人の教え』 スピンオフ 源三から応募に寄せて

〇はじめに
【創作大賞2024】に応募したのをきっかけに、第三話に登場させた源三さんにふと、語りかけたくなった。小説の主人公がイキイキと動き出すのを通じて当時、ぼくは救われたからだ。

あれから20年――、ぼくもずいぶんと成長した。
note【創作大賞】に応募するくらいになれたから、源三さんもきっとほめてくれるだろう。いまごろどうしているかな。まだ漁に出てるのかな。ちょっと逢いたくなったなぁ。ちょっと電話してみよう。

ルルルル呼び出し音
源三は出ない。海へ出ているのだろうか。しかたなく留守電を入れておいた。

<あ、源三さん、ヒロです。覚えてます? あの時はお世話になりました。ぼくもずいぶんと大人になれて、いま本も書いています。あのときの思い出はいまも生きてます。ピーっ>

返事はなかった。もしかして万が一のことでもあったのかな。気が気でなくなった。どうしているんだろう……。

2日後、突然電話が鳴った。かけてきたのはゆきえさんだった。もしかしてゆきえさんあれからずっと一緒になったのかな。

「あ、ヒロさんね、久しぶりじゃない。あん人? うん一緒になったんよ。あれから……。紆余曲折あってね。元のダンナは別れないって言ってもめて親権は渡さないと意地を張ったけど、なんとかね。ケリがついたの。

源三さん優しいから何も言わないのよ、そのことに。だから安心して私もいられるの。でも籍は入れた訳じゃないのよ。あくまで内縁の妻扱いってとこかしら」

「そうなんですね。よかった無事で。でも元気そうなら安心しました。あのときはおふたりのお世話になってそのお礼が言いたくて」

「あらそうだったの。源三さんときどきヒロさんのこと思い出したように懐かしく語っているわよ。元気にしてるかなって。横にいるから代ろうか」
「はい、お願いします」

「おう、久しぶりやな。元気にしてるか。俺はもう直接海に出るこたぁなくなったよ。漁からは足を洗った」
「なに言ってるの、アナタ。弟子が出るときに任せるわけにゃいかんって言って着いていくくせに」

横からゆきえさんがたしなめるように、子どもを叱るように言った。けれどもそのことばには愛情が感じられた。

「そうだったんですね。まだ海に出てると……。なら安心だ。海は源三さんの母であり、守り神でもあるからね」
「なにを偉そうなこと言っとるんだ。いっちょまえに」

「ごめんなさい。でもほんとうのことですよっ。あ、それから僕いま本を書いているんです。あのときの記憶を頼りに。要望や断れなかった自分への鎮魂歌として」
「そうかい。そりゃよかった。役に立ったのなら。アンタはなまっちょろいヤツだったがな、それだけじゃ終わらないと思ってたよ。なにか事を起こすとね」

「ありがとうございます。それと報告があるんです。いま、インターネットが普及してるじゃないですか。あのときからすると比べ物にならないほど。そこでですね、noteという媒体があってですね。【創作大賞】というのがあるんです。作家やアーティストなど創造する人たちへの門戸として。それでそこへ応募することにしたんです」
「なんだいそのノーっとっちゅうやつは。本とノートのノートかい」

「ま、そういう意味ですけど、紙ではなくネットに書き留める点が違います」
「まぁいい。アンタが元気でやってるんなら。きょうは声を聴けただけで本望さ」

<源三さあん、そろそろ出ますよ>
弟子とおぼしき男たちの声が電話越しに聴こえた。海に出るらしい。

<おう、もう少しで終わる。待っとけや>
「ヒロさんよ、これからもいろいろあるだろう。もしかすると想ったような成果につながらないかもしれない。だがな、それは漁と一緒だ。どんなに釣れると思ったってそうはいかない。海にも機嫌ってもんがあるからな。

待つことだ。待てば海路の日よりあり、だ。やることやっていれば。行ってる道が正しいなら、いつかは必ず実がなる。それまで待つことだ。焦るなよ」
「はいっ! わかりました。でも源三さん、相変わらずですね。最後は説教くさくなるのは。でも元気そうでよかった。ありがとう源三さん、ゆきえさん」

「なにを偉そうなことを言いやがって。まぁいい。その調子だ。経験を積んだろうから少し厚かましいくらいがちょうどいい。じゃあな。元気でな」
「はい。源三さんこと。じゃまた」

時間にして10分もあったろうか。それとも30分だったろうか。ただそのときを忘れるほど、濃密な時間だった。あのときの海での対話を思い出させるほど、源三さんは変わらなかった。それはゆきえさんも。

あれから僕はずいぶんと成長した。けれども昔のまんまな部分だって残っている。note【創作大賞】に初めて自分の作品を持ってチャレンジすることになってきっと源三さんも、エレナさんもそしてカレンも喜んでくれるだろう。海に出ることがいちばん大事なのだから……。

源三、語らない姿』に登場した源三さんからのメッセージ


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