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私も、カフカの「城」を翻訳者違いで4冊一気読み!

ただし、第1章のみです。

こちら↓は、ちゃんと全文読まれた方のnoteです・・・

こちら↑読んで、「城」を翻訳者違いで読んだらどうなんだろう(どうなっちゃうんだろう)と私も考えた。

発端

そもそもは
池内 紀(おさむ)さんが訳した「カフカ・コレクション 城」(白水社)を読み、
え? これ不用意に改行入れてない? と読みづらく思ったのが発端でした。


時系列的には・・・

・古本屋さんで文芸評論本「カフカの『城』」(創樹社・1985年)を買って(←お高い)読もうとする

・ああ、やっぱり元の「城」を読まんと、評論だけ読んだってしゃあないわ、と、青空文庫の原田訳を読もうとする(筑摩書房版)


・う~ん、やっぱり本物の本のほうが読みやすいわ~と、古本屋さんで 白水社・池内訳の「城」を買って(安かった)読もうとする・・・

・え? だれが、どのセリフしゃべってんのかわかんないんですけど!?

・青空文庫の原田訳を見れば、ちゃんと誰がどのセリフしゃべってるかわかるやん・・・

・原文どうなってる? と、ドイツ語の原文をダウンロード

・う~む、最初は どの訳で読んだらいいのかがわからないよ~ほかのかたの翻訳探すか・・・と図書館へGoGo!!

で、図書館にあった5冊の「城」

飛ばし読みでOKですよ~

その1(辻・中野・萩原訳)

昭和28年2月
カフカ全集1 城(マックス・ブロート編集)
新潮社
訳者 辻瑆 中野孝次 萩原芳昭
本文終わり:服
詳細な付録あり、別稿や、削除部分を収録。
マックス・ブロートによる「あとがき」あり(第3版、下記の「その2」よりは、本文も長くあとがきも多い)
Copyright of the original German text by SCHOKEN BOOKS INC.
copyright of the Japanese translation by SHINCHOSHA CO.
本書はシヨツケン書店との契約によつて、日本に於ける、独占翻訳出版販売権は新潮社が保有するものである。
※ブロート版としては、これでいいんじゃないかなあ、付録多いし。いや旧漢字ですけど。・・・1980年に決定版カフカ全集が出て、こっちのほうの訳者は前田敬作さん。いま新潮文庫から出ている「城」は前田訳。

はねか え した じゃねえ! Kも風呂にはいってんのかよ!
撥ねかす って動詞があるんだよ!(いま調べた)
親切のつもりで書き込みしたんだろうけど、迷惑行為なので止めましょう。まあ昔はよくやられてたらしいけどねえ・・・

その2(岡村訳)

昭和28年10月
現代ドイツ文学全集 第13巻
河出書房
ヴィーヒェルト 森林と人々 訳:野島正城
カフカ 城 訳:岡村宏
本文終わり:扉
マクス・ブロートによる「あとがき」あり(ただし第1版のもののみ)
双方、訳者による解説あり
※この翻訳はカフカの死の翌年1926年、マクス・ブロートが彼の遺稿を整理して、クルト・ヴォルフ書店から出版した城(Das Schloss)の初版本に拠(よ)った。…とのこと。
※出版社側の意向なのか、だいぶん余白のない紙面になっています。二段組。原田訳だと、改行を入れているところも、原文どおりにぎっちぎちに詰めてます(カフカらしいといえばそうなのですが)
書き込み多し・・・やめようね(昔の人に言ってもしょうがないけど)。

その3(原田訳)

昭和37年(1963)
世界文学全集29 カフカ
河出書房新社
 城・変身 訳:原田義人
解説:辻瑆
※これは借りなかった・・・ドイツ文学者の辻瑆さんは、つじ・ひかる って読むんですぜ お父さんが永とかいて「ひさし」、フランス文学者のお兄さんが昶と書いて「とおる」 永と日、お名前の漢字の継承が起こってますな)

その4(原田訳)

昭和41年(1966 ウルトラQ放送開始の年)
世界文学全集8 カフカ
集英社
 城 訳:原田義人
 ある闘いの記録・田舎医者・断食芸人・巣穴 訳:城山良彦
本文終わり:服
解説:カフカ氏との対話:小島信夫
※数ある原田訳のうち、これを借りてきました。カフカのほかの作品も読めるなあ、と思って(読んでない)

その5(原田訳)

昭和43年(1968)
カラー版 世界文学全集 第38巻
河出書房
カフカ
 城・変身 訳:原田義人
サルトル
 水いらず 訳:伊吹武彦
 部屋・汚れた手 訳:白井浩司
解説
 カフカ 辻瑆
 サルトル 白井浩司
※中学生の時に、図書館にあった本、再開できました。ちゃんと読んではいない気がするけど、挿絵はうっすら覚えていましたね。愛蔵するなら、これがいいなあ。
借りてはいません。

借りてきたのは1と2、そして原田訳の3・4・5のうち、書き込みが少なく、小型の4を。

余談・借りられなかった本

光文社古典新訳文庫の「城」(訳:丘沢静也)は、人気があるので借りられませんでした・・・
買おうかとも思ってるんですが、お高いのと(税込1562円)どうも自分は丘沢訳とは相性が悪いんじゃないかという気がするのです、「この人をみよ」「数の悪魔」を読んで(2冊だけやん)

で、今手にしている本

左から 池内訳 カフカの『城』 原田訳 岡村訳 辻・中野・萩原訳

池内訳

2006年
カフカ・コレクション 城
白水社
訳:池内 紀(おさむ)
本文の終わりは「(中断)」 ※未完で終わってる
Kritishe Ausgabe
herausgegeben von Malcolm Pasley
C 1982 Schocken Books Inc., New York, USA
※翻訳のもとにするテクストには、マックス・ブロート版(初版・2版・3版)、批判版、史的批判版があるらしいんですけど、これはマックス・ブロートの編集意図を除去した(のかな?)「批評版」なのだろうか あ、史的批判版は、ノートの写真+翻字です

これがねえ・・・自分には読みづらかったというか、セリフ前後に必ず改行入れてるんだけど、だれがどのセリフをしゃべっているのかがわかりづらい。
読書メーターでも、何人かの方は、そう書いてるみたいです。なおブクログではそんな意見、みつからなかった。

じゃあ、ちょっと長いですが、引用させていただきます。

 Kは身を起こして髪を撫でつけ、やおら下からじっと見上げた。それから口をひらいた。
 「どこの村に迷い込んだものやら。ここには城があるのですか?」
 「もちろんです」
 若い男がゆっくりと言った。あちこちでいぶかしげに首をかしげるものがいる。
 「ヴェストヴェスト伯爵さまの城ですよ」
 「泊まるにも許可がいるとおっしゃった?」
 さきに言われたことが夢ではなかったと、確かめるような口調でKが言った。
 「そのとおりです」
 答えが返ってきた。それから若い男は腕をのばして、主人と客に問いかけた。Kに対するわざとらしい嘲りがこもっていた。
 「それとも許可なんていらないのかな」
 「ならば許可を貰ってこよう」
 あくびをしながらKは毛布を引き下ろして、起き上がろうとした。
 「もらうって、誰から?」
 と、若い男がたずねた。
 「伯爵からだ」
 と、Kが答えた。
 「しょうがあるまい」
 「こんな夜ふけに伯爵さまから許可をもらってくるだって?」
 若い男は叫ぶように言うと、一歩下がった。
 「無理だというのか」
 落ち着き払ってKがたずねた。
 「じゃあ、なぜ起こした?」
 若い男はいきり立った。
 「流れ者の手口だ!」
 大声をあげた。
 「伯爵さまに仕えている者になんて口をきく!起こしたのはほかでもない、直ちにここから立ち去るように伝えるためだ」

白水社版 池内訳

原田訳

で、青空文庫で公開されている原田義人訳は↓こう。

 Kは身体を半分起こして、髪の毛をきちんと整え、その人びとを下から見上げて、いった。
「どういう村に私は迷いこんだのですか? いったい、ここは城なんですか?」
「そうですとも」と、若い男はゆっくりいったが、そこここにKをいぶかって頭を振る者もいた。「ウェストウェスト伯爵様の城なのです」
「それで、宿泊の許可がいるというのですね?」と、Kはたずねたが、相手のさきほどの通告がひょっとすると夢であったのではないか、とたしかめでもするかのようであった。
「許可がなければいけません」という答えだった。若い男が腕をのばし、亭主と客たちとに次のようにたずねているのには、Kに対するひどい嘲笑が含まれていた。
「それとも、許可はいらないとでもいうのかな?」
「それなら、私も許可をもらってこなければならないのでしょうね」と、Kはあくびをしながらいって、起き上がろうとするかのように、かけぶとんを押しやった。
「それでいったいだれの許可をもらおうというんですか?」と、若い男がきく。
「伯爵様のですよ」と、Kはいった。「ほかにはもらいようがないでしょう」
「こんな真夜中に伯爵様の許可をもらってくるんですって?」と、若い男は叫び、一歩あとしざりした。
「できないというのですか?」と、Kは平静にたずねた。「それでは、なぜ私を起こしたんです?」
 ところが今度は、若い男はひどくおこってしまった。
「まるで浮浪人の態度だ!」と、彼は叫んだ。「伯爵の役所に対する敬意を要求します! あなたを起こしたのは、今すぐ伯爵の領地を立ち退かなければならないのだ、ということをお知らせするためです」

青空文庫 筑摩書房版 原田訳

あれ、ちゃんと誰がどのセリフをしゃべったかが、わかるじゃないか。
「ウェストウェスト伯爵様の城なのです」(頭を振るものが言ったの?)
「それとも、許可はいらないとでもいうのかな?」(Kが言ったの?)
のところは、ちょっと、戸惑い感もありますけど、
基本、段落が変われば、話者も変わっていて、
「(短いセリフ)」と、誰々は言った。「(長いセリフ)」
というふうに、改行せずに話者を明確化しているので、読みやすい。
池内訳は、すべてのセリフを改行させ、しかも「と、」を省略することもあるので、
セリフと地の文との糊付けが、はがれてる感じなのですよね・・・

(ドイツ語原文)

気になったので、ドイツ語原文でも見てみました。(読まなくてOK 形を感じてね)

 K. hatte sich halb aufgerichtet, hatte die Haare zurechtgestrichen, blickte die Leute von unten her an und sagte: »In welches Dorf habe ich mich verirrt? Ist denn hier ein Schloß?«
 »Allerdings«, sagte der junge Mann langsam, während hier und dort einer den Kopf über K. schüttelte, »das Schloß des Herrn Grafen Westwest.«
 »Und man muß die Erlaubnis zum Übernachten haben?« fragte K., als wolle er sich davon überzeugen, ob er die früheren Mitteilungen nicht vielleicht geträumt hätte.
 »Die Erlaubnis muß man haben«, war die Antwort, und es lag darin ein großer Spott für K., als der junge Mann mit ausgestrecktem Arm den Wirt und die Gäste fragte: »Oder muß man etwa die Erlaubnis nicht haben?«
(以下略)

http://www.zeno.org/Literatur/M/Kafka,+Franz/Romane/Das+Schlo%C3%9F/Das+erste+Kapitel

うん、こりゃどうみても、原田訳のほうがが近いね。池内訳のセリフ前後に改行入っているのは、池内さんのポリシーによるものってことか。

辻・中野・萩原訳はこう。

「わたしが迷い込んだのは、何という村なんですかね? いったいここが城なのですか?」そういうKのことをいぶかって、そこここで頭を振る者がいたが、若者は、
「もちろんです」とゆっくり言った、「伯爵ヴェストヴェスト様のお城です」
(以下略)

これはわかりやすいですね。原文に比べると要素の順番を変えちゃったところがあるけど、「伯爵ヴェストヴェスト様のお城です」のセリフを若者が言ったとはハッキリわかる。
あと、
「(セリフA)」と誰々は言った、「(セリフB)」
てな感じで、「言った」の後に 読点(、)をいれる文体は、たしかに原文からしてそうなのですが、
誰が続けて話しているかはわかりやすいとしても、今の日本語としては・・・ハテサテ。
OK? だめ? 自分はOKですけど・・・

岡村訳はこう。

「許可が要ります」そう答えてから、若い男は腕を差しのべ、亭主や客たちに「それとも許可は要らないでしょうか、皆さん」とたずねたが、その言葉にはKに対する露骨な嘲りの調子が見えた。
(以下略)

(傲慢な)城がわの人間にしては、下々のものに丁寧ですけど、「皆さん」なんて原文にはないけど、
「それとも許可は要らないでしょうか」と言ったのがKだろうかという勘違いは防げます。

というわけで、4冊の翻訳を比べてみたんですが、自分としては、原田訳を読んでから、池内訳を読むと、セリフ応酬のドライブ感を感じられました。池内訳は、基本必要のない漢字はひらがなにするというポリシーもあるみたいなんで、そこは読みやすい。
カフカの城の翻訳は、最初にこれ一冊読むなら!
ってのを探していたんですが、それこそ、作中の城のように、決してたどり着けないものなのかもしれません。
(え? うまいことイッテナイヨ)

池内訳 リベンジ

だれが話してるのかがわかりづらければ、
その人の行為(話すも含む)の文と、セリフをグループ化すればいいんじゃないの?
と思い、やってみました。

Kは…(略)それから口をひらいた。
「どこの村に迷い込んだものやら。ここには城があるのですか?」

「もちろんです」
若い男がゆっくりと言った。あちこちでいぶかしげに首をかしげるものがいる。
「ヴェストヴェスト伯爵さまの城ですよ」

「泊まるにも許可がいるとおっしゃった?」
さきに言われたことが夢ではなかったと、確かめるような口調でKが言った。

「そのとおりです」
答えが返ってきた。それから若い男は腕をのばして、主人と客に問いかけた。Kに対するわざとらしい嘲りがこもっていた。
「それとも許可なんていらないのかな」

「ならば許可を貰ってこよう」
あくびをしながらKは毛布を引き下ろして、起き上がろうとした。

「もらうって、誰から?」
と、若い男がたずねた。

「伯爵からだ」
と、Kが答えた。
「しょうがあるまい」

「こんな夜ふけに伯爵さまから許可をもらってくるだって?」
若い男は叫ぶように言うと、一歩下がった。

「無理だというのか」
落ち着き払ってKがたずねた。
「じゃあ、なぜ起こした?」

若い男はいきり立った。
「流れ者の手口だ!」
大声をあげた。
「伯爵さまに仕えている者になんて口をきく!(以下略)」

この書き方、まんがのコマ割りが見えてきそうじゃない?
あと、あれだ、白水版の本に、鉛筆でグループ分けの線を入れれば読みやすくなりそうだな、と思ったんですけど、ええ、ひろさわは、本には書き込みを入れない人なんですよ! 入れられない、心理的に。

ひろさわ試訳

で、超訳(あんま好きじゃない)のエリアに入るかもしれませんが、こういうのどうですかね?

そこかしこで、Kに対してあきれたように首を横に振る者たちがいるのだが、「お城はありますよ」と、若者はゆっくり言った。「西西(ヴェストヴェスト)伯爵のお城なのです」
「だから、泊まろうとする人には許可証が必要?」と、Kは言った(略)。
「許可証が人には必要です」それが答えであり、(以下略)

人=Man(世間一般の人。ふつうは訳さない)。Mann(男の人)のほうじゃないよ

ダメだこりゃ

翻訳って、やっぱり難しいね・・・

さて、この勢いで、次の日もカフカの城について書こうかと思ったけど、やっぱり数日あいだ開けよう。
ようは、新しい丘沢訳が自分に合えば良いんだよなあ・・・そんならこんな苦労はしなくて済むんだ、きっと。