【海外の法律】英最高裁が「女性」を「生物学的性別」とした判断理由
トランス女性には男性トイレ 最高裁判断受け 英担当相(時事通信) - Yahoo!ニュース
こちらが、イギリス最高裁公式のサマリーです
For Women Scotland Ltd (Appellant) v The Scottish Ministers (Respondent) - UK Supreme Court
判決の要約などは、こちらでも読めます。
英国最高裁が「生物学的」な女性の定義を支持|女性スペースを守る会
第1 判決理由
英国最高裁判所が「女性」を「生物学的性別」を意味すると判断したのは、具体的には、「平等法」という各種差別を禁止する法律の、性別による差別禁止や女性保護に関する規定の「性別」「女性」の意味についてそう判断したものです。これにより、女性向けの保護や、性別による合理的な区別(トイレなどの男女区分など)は、生物学的性別を基準に行われるということになります。
その理由を、要約となりますが、以下の順で説明します(AIの要約と翻訳をベースにしており、一部不正確かもしれません)。
1. イギリスの法的背景
英国における性別に関する法的保護は、1975年の性差別法(Sex Discrimination Act 1975)に始まりました。この法律は、性別による直接差別や間接差別を禁止するものだが、「男性」と「女性」という用語が生物学的性別を指すものとして使用されていたことは明らかとされていました。その後、1999年の性差別(性別変更Gender Reassignment)規則により、ジェンダー変更を行った人々に対する差別が禁止されましたが、「男性」「女性」の定義自体は変更されませんでした。
2010年に制定された平等法(Equality Act 2010, EA2010。成文憲法のないイギリスで、平等・差別禁止などについて定めている法律)は、これらの法律を統合し、性別やジェンダー変更を含む保護対象を明確化しました。しかし、EA2010の文脈においても、「男性」「女性」「性別」は生物学的性別を指すものとして解釈されていました。
以上を踏まえて、平等法の背景として、SDA1975の「男」と「女」の定義が生物学的性別に言及しており、トランスジェンダーはジェンダー変更という保護特性を持っているとしています。つまり、平等法(イギリスの法の下の平等)では、生物学的な性別に基づく差別の禁止や、ジェンダー変更したか否かでの差別の禁止、といった法律の流れが背景にある、ということです。
2. ジェンダー認識法(性別変更に関する法律)の解釈
ジェンダー認識法(Gender Recognition Act 2004, GRA2004)は、トランスジェンダーの人々が法的に性別を変更できる制度を導入しました。この法律に基づき、ジェンダー認定証(Gender Recognition Certificate, GRC)を取得した人は、法的に「後天性の」性別(変更後の性別)として扱われることになります。
しかし、同法第9条(Section 9)(1)では、「GRCを取得した性別は、すべての法律に適用される」と定められているものの、 第9条(3)は、第9条(1)の規定がGRA 2004または「他の制定法または下位法」の規定によって適用を除外されることを認めています。
第9条(3)の解釈として最高裁は法律上第9条(1)の規定を明示的に不問に付すことや、この不問が必要的含意によって生じることを要求しておらず、関連する法律の条項、文脈及び趣旨が、明らかに非両立であるため、又はその規定が第9条(1)の規定を適用すると支離滅裂又は実行不可能となるため、除外されることを示している場合としました。
つまり、法律による性別変更は、別の法律で例外があれば除外(結果、生物学的性別で区別する)するところ、文章の意味としてはっきり除外されてなくても、趣旨や解釈として除外すべき場合は除外して、生物学的性別で判断する、ということです。
3. EA2010(平等権に関する法律)の解釈
最高裁判所は、EA2010の文言を詳細に分析し、「性別」が生物学的性別を指すことを示す複数の要素を挙げました。
妊娠・出産に関する規定(EA2010の第13条、第17条、第18条)では、妊娠できるのは生物学的女性のみであるため、「女性」は生物学的性別を指すと解釈されるべきである。
性別を認定に基づき解釈することは、ジェンダー変更した人の中で、認定された(性別変更を認められた)トランスの人々に、そうでない人々よりも大きな権利を与えることになる(法律上変更が認定されているか否かで不平等が生じる)。 また、平等法の下で義務を果たそうとする者は、この2つのサブグループを区別する明白な手段を持たない(例えば、更衣室の使用などで、いちいち法的な性別変更の有無を確認して判断を分けるということは非現実的、といったことが想像されます)。
認定を受けたジェンダーで判断することは、性的指向という保護特性を持つ人々に与えられる保護を弱めることになり、例えば、レズビアンだけのスペースや団体を持つことを妨げることになる。(認定で判断すると、心は女性で女性が好きな身体男性も含まれることになる)。
単一性別の施設(例:更衣室、宿泊施設、女子大・男子大)に関する規定では、生物学的性別に基づく区分が整合的に機能させる上で必要。また、一つの性別を特徴とする団体・慈善事業、スポーツへの女性の公正な参加、軍隊に関する規定の運用などでも、認定を受けたジェンダーでの判断により「類似の混乱や非実用性」が生じる。
「性」「女性」という言葉の意味は、同法律の中で一貫していなければならない(同じ法律の中で場所ごとに分けて意味を解釈するのは不適当)
結論として、裁判所は、平等法の規定は、性別認定の適用除外が適用される規定と結論づけて、同法における「性」、「男」、「女」という用語の意味は、生物学的性別を意味するものであり、それ以外の解釈はEA2010を支離滅裂で実用的でないものにしてしまうとしました。
4.性別変更の保護
EA2010のこの解釈は、GRCの有無にかかわらず、トランスの人々からの保護を取り除くものではない。 トランスの人々は性別変更を理由とする差別から保護されている。 また、直接的差別やハラスメント、性別を理由とする間接的差別に関する規定を行使することもできる。 関連規定に関する判例上、トランス女性は女性であると認識されるため、性差別を訴えることができる。 この保護を与えるために、認定されたジェンダーを読み込む必要はない。
第2 日本法との関係
日本の「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」でも、イギリスの法律と同様、法律に別の定めがある場面では、性別変更の審判があっても法律上性別変更があったとみなされません(4条)。
これに関してですが、同法が「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」を性別変更の要件としていることを違憲とした最高裁判決(裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan)の中で、一部の裁判官の反対意見が、「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。」という要件も憲法違反とする中で、法律に別の定めができることに言及しています。つまり、例えば女子浴場に、女性となる外観要件を満たさない男性が入ることは、(法律に特例があれば性別変更が適用されないので、)別の法律などで禁止できる、そのようなことまで想定して法律上の性別変更のハードルを上げるのは憲法に反する、というような意見が示されています。
この点、イギリス法(2004年性別認定法)を見る限り、性別変更の要件としては精神的な性別不和が医学的に認められることや変更後の性別で生きる意志などで、外観・身体的なところは要件になってないようです。
つまり、今回のイギリス最高裁の判断は、上記の日本の最高裁の一部意見がこうすればよいと述べた理屈を、法の適用で示した、ということになるかもしれません。(感想としては、もしも日本でそれをやろうとするには、イギリスでは法の下の平等について法律で決めているが日本だとまず憲法があってその下に必要に応じて法律がある(法律がない領域でも憲法で直接平等を主張できる)、という構造的に、法律でしっかり準備が必要になる気がします。いきなり違憲判決とかでだと、だいぶ争いが生じそうです)
