しくじり日記#2:パキスタンで財布を落とした時の奇跡
パキスタンの空港で、記者証の入った財布を紛失・・・直後から訪れるアフガン行きが危ぶまれたものの、謎の裏路地印刷店に助けられた話。
さて、その続きなのですが、だいぶ時間が経ってしまいました。よかったら最初の回にも、もう一度目を通していただけますと幸いです。
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謎の裏路地印刷店のオヤジに助けられ、偽造記者証でアフガン入り。
ホログラムこそ再現されていないものの、ほぼ完璧な出来だったので、イミグレでタリバンに気づかれることもなく無事入国できた。ところが、税関の荷物チェックで、検査員をしていたタリバンの目が光る。
怪しいものなんて、何一つないはずだ。防弾チョッキも事前に説明している。
ところが、この胸騒ぎはなんだ?
タリバンがゴソゴソと荷物の中から取り出したのは、円錐形のクッキー缶だった。タリバンがそれを手に、睨みをきかせてくる。
しまった。
そう、このクッキー缶、見方によっては酒の入れ物に見えるのだ。後ろのラベルを見ればすぐにわかるはずなのだが、タリバン戦闘員はおそらく英語が読めない。彼らも、形で判断するしか無い。
「これはクッキーなんだ、食べ物だよ」
ゆっくりと説明するが、聞く耳を持たない。まぁまぁデカい声で色々と言っって来る。トラブルは起こしたくない。そこに上官が現れた。「ふむふむ」と担当官の話を聞き、おもむろに私に向かって小さな声で囁いてきた。
「酒だろ?いくら払える?」
おいおい、まさか酒が禁忌だっていうのに賄賂かよ。しかも酒じゃねぇし。缶を開けてしまえば問題ないのだが、これは外務省報道官への“お土産”だった。仕方ないから、予備に持ってきた同じ缶があったので、それを開けて中を見せる。
缶の中を一瞥した上官は、みるみる興味を失い、シッシッというジェスチャーをして私たちを行かせてくれた。「酒」を発見した功労者のタリバン兵も、なんとも残念そうだ。
一悶着して、なんとかアフガン入りだ。
前政権が崩壊した後のアフガンだから、さぞ混乱していて、事務作業とかめちゃくちゃだろうと想像する方もいると思うが、実は、こうした空港や港の機能というのはちゃんと動いている。
それこそ地上係員もいるし、荷物にX線をかけて中をちゃんと見る人もいる。驚くことに、売店などもしっかり営業している。内戦中であったり戦争中、もしくは政権が崩壊した直後の国は、間違いなく混乱状態にはあるのだが、末端は意外と機能しているのだ。
さて、そこからの取材記については、また後日。
今回は、財布の奇跡についてである。
取材が始まって2週間ほどたち、私以外のクルーがアルコール欠乏症になってきたころだ。私はもともと酒を飲めないのでストレスフリーなのだが、それこそ連日のハードな取材が続くと、酒飲みにはつらい。賄賂を払ってでも酒を持ち込んでおきたかった、と考えていたかどうかは知らないが・・・
取材後、クルーたちと部屋でくつろいでいたところ、ふと、あの財布を落としたであろう飛行機はロンドンに戻ったはずだから、ロンドンの機内清掃で見つかってはいないだろうか、とよぎったのである。
そこで、アフガンからロンドン・ヒースロー空港の「Lost and found」に国際電話かけてみた。ダメ元である。
自動応答のあと何分か待たされ、電話口にハキハキした女性の声が出た。事情と便名を伝え、フルネームを伝えたところ、その女性が突然日本語で、
「あれ、日本人の方ですか?びっくり!」
と聞いてきたのである。いや、びっくりはこっちである。
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