税務署がAIを使って税務調査?~AI時代の税務リスク管理と会計事務所の役割~
(登場人物)
山田くん:入所2年目。税務だけでなくITにも明るい、好奇心旺盛な若手スタッフ
所長先生:開業40年。税務調査にも強く、顧問先からの信頼が厚いベテラン税理士
「所長、国税庁がAIを使って税務調査をする時代って…ちょっと怖くないですか?」
ある日の午後、申告書の作成を終えた山田くんが、ふとつぶやいた。
山田くん:
「所長、最近ニュースで見たんですけど、国税庁がAIを使って申告内容を分析して、怪しい申告を選び出すって…まさに“機械に見張られてる”感じがして、ちょっと怖いですよね」
所長先生:
「お、AIの話か。確かに今の国税はAIをフル活用している。特に申告内容のチェックや調査対象の選定は、昔と比べて格段に精度が上がっているよ。でもな、怖がることはないんだよ」
山田くん:
「えっ、本当ですか? てっきり、“これからは小さなミスでも全部バレる”ような時代になるのかと…」
所長先生:
「いや、それは違う。AIは、数字の“異常”を見つけるのは得意でも、その“背景”までは読めないからね。たとえば、利益率が業界平均と比べて極端に低いとか、役員報酬が突出しているとか、そういう“定量的なズレ”に反応するだけなんだ」
「AIに説明できる申告」が、これからの標準になる
山田くん:
「なるほど…確かに、異常に思える数字であっても、理由がきちんと説明できれば問題にならないケースもありますもんね」
所長先生:
「その通り。“何が異常なのか”と同時に、“なぜ異常なのか”をきちんと説明できるかどうか。そこが肝心なんだ。だからわれわれの仕事も、単なる記帳や税金計算じゃなくて、『説明可能な申告書を作成すること』にどんどんシフトしてきている」
山田くん:
「じゃあ、たとえば33条の2の添付書面制度なんかも、その“説明するためのツール”ってことですよね?」
所長先生:
「うん、いい着眼点だ。添付書面は、税理士が“この申告内容はこういう判断で整理しました”と示す公的な文書。これがあるだけで、税務署側の“疑問リスト”が減るし、AIが異常値を検知しても『説明済み』として調査対象から外れるケースも少なくない」
山田くん:
「つまり、“ごまかす”より、“きちんと説明する”方が安全で、調査のリスクも下がるということですね」
所長先生:
「そういうこと。AI時代の税務は、“正直に、丁寧にやること”で報われる仕組みに変わってきている。これはむしろ歓迎すべきことだよ」
税務調査は、予測できる“リスク管理”になった
山田くん:
「AIが税務調査を選ぶ時代になると、“たまたま調査に当たる”っていう昔の感覚は、もうなくなるんですか?」
所長先生:
「まさにそのとおり。昔は税務調査って“突発イベント”だったんだ。いきなり電話が来て、『調査に入ります』なんて言われたら、みんなあわてて帳簿をかき集めてた。でも今は、申告内容をAIが定量的に分析して、リスクの高い事業者をピックアップする時代。調査対象の選定も“統計とロジック”に基づいて行われている」
山田くん:
「へぇ…ということは、業種や会社の規模、過去の申告の傾向から、“どんな会社が狙われやすいか”も、ある程度見えてきたりするんですか?」
所長先生:
「そう。つまり、税務調査も今や“予測可能なリスク管理課題”になっている。事前に備えておけば、調査を避けられる可能性は高いんだよ」
山田くん:
「それって、まさに“リスクマネジメント”ですね!」
所長先生:
「そのとおり。われわれ会計事務所も、「税務リスクマネージャー」として、クライアントの経営を支える存在であるべきなんだ。単なる記帳代行では、もう時代についていけないよ」
「AIで狙われにくい申告」のために、今できること
山田くん:
「具体的に、税務調査のリスクを下げるには、どんな対策をしておけばいいんですか?」
所長先生:
「例えば、以下の5つは今すぐ始められる有効な対策だ」
業種平均や過年度比と整合する収支構成
→ 「なぜ今年だけ異常なのか」を説明できるように準備する。帳簿・証憑の整備と透明性の確保
→ 領収書や契約書の保管、支出の稟議書などを整えておく。AIが注目する論点を事前にチェックする
→ 過大な役員報酬、過少申告、怪しい経費処理は徹底的にクリアにする。経理のデジタル化と証拠性の強化
→ クラウド会計や電子帳簿保存法への対応で、証拠性を高める。税理士による申告前レビューの強化
→ 添付書面を活用し、リスクの説明と見解の明示を行う。
山田くん:
「こうした対策って、普段から顧問契約を結んで月次サポートしている企業なら、自然に実践できそうですね」
所長先生:
「そう、それがポイントだ。税務署に見られる前に、われわれが“AI目線”でチェックできる。それが顧問税理士の強みなんだ」
税務の安心は、経営の自信につながる
山田くん:
「クライアントからすると、こういう対策をして“調査リスクが低い”ってわかると、経営の不安が減りますよね?」
所長先生:
「その通りだよ。そして税務に対する不安がなくなれば、経営者は“後顧の憂い”なく、本業や事業拡大に集中できる。余計な心配をせずに、前向きな経営判断ができる。その安心こそが、われわれが提供できる最大の“価値”なんだ」
山田くん:
「税務リスクを“可視化”して、“安心材料”に変える…その支援ができるのが会計事務所なんですね」
所長先生:
「そう。経営者のパートナーとして、“数字”だけじゃなく“気持ち”のサポートもできる存在でありたいと思ってるよ」
【まとめ】
税務署がAIを導入したことで、税務調査は“予測できない恐怖”ではなく、“予測して備える管理対象”へと変わりました。
これからの税務は、「正しく整え、きちんと説明できる」ことが前提になります。
そしてそれを支えるのが、「数字を見る力」と「説明する力」を併せ持つ会計事務所です。
税務の安心は、経営の自信を育てる土台になります。
「そもそも税務調査が入らない税務申告を行う」「経営者が経営に専念できる環境を整える」――それこそが、AI時代の新しい「会計事務所」の在り方なのです。
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