【小説】燃えろ氷河〜第2話 はじまりの終わり〜
この物語は、氷河期を乗り越え、熱く生きた3人のエンジニアの物語である。
前回までのお話
会社の先輩が亡くなり、意気消沈する練とその仲間たち、沈む夕日をみて涙する。
第ニ話
2026年3月13日(金)
お兄ちゃんの葬式が終わった。
そう思った瞬間、緊張の糸が切れ、六花はその場で倒れた。
六花は夢と現実の狭間で、お兄ちゃんと、楽しくスノーボード🏂をしていた。
雲一つないつきぬけるような、青白い空に、うっすらと筋状の雲が走っていた。
なだらかなゲレンデには、お兄ちゃんとわたししかおらず、お兄ちゃんは両手を広げ、気持ち良さそうに、ゲレンデの起伏をものともせず、ひらひらと旋回し、ときおりクルッとその場でまわったり、ぴょんとはねたりしている。
「お兄ちゃんはうまいなぁ‥」
夢の中でつぶやいて、目が覚めると、目の前に花音ちゃんがきょとんとした顔で、わたしの顔をのぞいている。
「六花‥だいじょうぶ?まだ寝てていいいよ」
花音ちゃんのほっそりとした、白いうでがにゅっとのびてきて、わたしのひたいに、ゆっくりと手をのせる。
「熱はなさそうだけど、すごい汗、ちょっとタオルもってくるね」
花音ちゃんが、忍者のような、無駄のない動きで、スッと立ち上がり、バスルームに行くと、一瞬で、ふかふかの白いタオルをもってきた。
「しのびかよ‥」
えっ?なんか言ったと、花音ちゃんがやわらかい笑顔で、タオルを投げてくる。
「ありがと‥」
受け取ったタオルに顔をうずめる
汗をすいとる心地よさに乗せて、とめどなく涙があふれてくる。
死んじゃった、お兄ちゃんが死んじゃった。
急にかなしみが怒涛のようにあふれ、子供みたいにうわーと泣いた。
花音ちゃんが、頭をよしよししてくれたら、よけいに涙が止まらなくなった。
死んじゃった、お兄ちゃん
本当に死んじゃった。
どうか夢であってほしいのに、自分が着ている真っ黒なワンピースをみて、夢ではなかったことを確信する。
嘘じゃない、これは現実だ
もう泣いてる場合じゃない、今すぐ研究所に行かなきゃ、お兄ちゃんが恐れていたことが、今現実になっている。
「花音ちゃん、わたし行かなきゃ!」
えっ?ちょっ‥、どこへ!
花音ちゃんにしてはめずらしく、大きな声で呼び止められたけど、六花はふりむかずに玄関の扉を勢いよくガッと開けて、喪服のまま表に出た。
刺すような冬の寒さにぶるっとする。
空を見上げると漆黒の夜空に、有明の月が浮かんでいた。
ED曲
アルビレオ
(つづく)
