日本初のアンバサダーに拝命!「ガバナンスの庭師」とは?【世界最先端の内部監査を学ぶ】#221
こんにちは、「IA Insight Lab(IAラボ)」管理人のHIROです。
私は現在、米国のシリコンバレーで「世界の内部監査のベストプラクティス」や「内部監査における生成AI活用」の研究とコンサルティングに取り組んでいます。
このシリーズでは、日本の内部監査人が普段触れる機会の少ない「世界の内部監査」の動向を、最新かつ分かりやすくお届けすることを目指しています。とりわけ、アメリカやヨーロッパにおける内部監査の思想と実務は、日本の10年以上先を行くとも言われており、その先進事例は私自身にとっても学びの宝庫です。
大変光栄なことに、私が世界の内部監査界のレジェンド思想家である「Dr. Rainer Lenz(ライナー・レンツ博士)」から日本初のアンバサダーに拝命されました!今後AIxIAに関する共著を発刊する話もあり、非常に興奮しています。
今回は、それを記念し、ライナー・レンツ博士 が提唱した概念「The Gardener of Governance™(ガバナンスの庭師)」 について取り上げたいと思います。この記事を読むことで、内部監査の役割を「統制の番人」から「組織の未来を耕す庭師」へと再定義する新しいパラダイムを理解することができます。

1. Dr. Rainer Lenz——「学者と実務家をつなぐ橋梁」
1.1. 30年以上にわたるグローバルキャリア
ライナー・レンツ博士は、学術界と実務界を自在に行き来する稀有な存在です。
ベルギーのルーヴァン経営大学院で経済学・経営科学の博士号を取得し、博士論文では「内部監査の有効性」をテーマに、内部監査部門が経営にどのような価値をもたらすのかを探究しました。
その後、博士はグローバル製薬企業アルファーマおよびアクタビスで最高財務責任者(CFO)を務め、約40カ国・1万人規模の企業グループで内部監査を統括。
財務責任者として30件以上のM&A、7件の統合プロジェクトを指揮し、理論と実務を融合させたマネジメントで評価を高めました。
また、ヨーロッパを代表する老舗企業ビレロイ&ボッホ社や自動車部品メーカーSAF-HOLLAND SEでもChief Internal Auditor(内部監査責任者)を歴任し、戦略的ガバナンスの実践者として世界的に知られています。
1.2. 学術・実務・思想の三位一体モデル
レンツ博士の最大の特徴は、研究・実践・思想を三位一体で進化させるアプローチにあります。
彼は、学術論文を通じて理論を発信し、企業で実践し、その成果を思想へと昇華させます。
その代表作が2025年に発表された書籍
『The Gardener of Governance: A Call to Action for Effective Internal Auditing』(共著:Barrie Enslin)です。
博士はここで、内部監査人の理想像を「ガバナンスの庭師」として描きました。
この一冊は単なる監査理論書ではなく、「監査を人間的で、創造的な営みに戻す」ための思想書でもあります。
2. 「The Gardener of Governance™」という思想
2.1. 「統制の番人」から「成長の庭師」へ
レンツ博士がこのメタファーを初めて公に紹介したのは、2021年10月。
北欧IIA(内部監査人協会)創立70周年イベントでの講演「The Future of Internal Auditing: Five Megatrends 2021–2040」でした。
彼はそこでこう語ります。
“Internal auditors should be gardeners, not guards.”
(内部監査人は「門番」ではなく「庭師」であるべきだ。)
この一文に、彼の思想のすべてが凝縮されています。
「門番」とは、問題を未然に防ぐ守りの象徴。しかし「庭師」は、芽を見つけ、土を整え、成長を支える存在です。
つまり、内部監査とは「摘発」ではなく「育成」。
「統制」ではなく「共創」。
これが「ガーデナー・オブ・ガバナンス™」の核心です。
2.2. 5つのP——ガバナンスを育てる要素
博士は論文(Lenz & Jeppesen, 2022)および著書の中で、内部監査が目指すべき「5つのP」を提示しています。
People(人) – 組織文化を理解し、信頼関係を築く。
Public(社会) – 社会的責任を意識し、透明性を高める。
Performance(業績) – 経営に貢献し、価値を創出する。
Purpose(目的) – 組織の存在意義に照らして監査を行う。
Planet(地球) – 持続可能性と倫理性を意識した助言を行う。
この5Pは、ESGやサステナビリティが叫ばれる現代において、内部監査がどのように「組織の未来を育てるか」を示した行動原則です。
まるで庭師が土・水・光・種・環境のすべてを整えるように、監査人も組織全体のエコシステムを耕す存在へと変わらなければならないのです。
3. 世界に広がる「100人の庭師」ムーブメント
3.1. 比喩からムーブメントへ
2025年、レンツ博士はこの思想を世界的ムーブメントへと昇華させました。
わずか半年で100カ国・100名のアンバサダー(大使)が就任し、それぞれの地域でガバナンス改革を推進しています。
私は光栄にも、その一員として日本初のアンバサダーを拝命しました。
博士はこの取り組みを「From Metaphor to Movement(比喩から運動へ)」と呼び、草の根的な変革の連鎖を生み出しています。
3.2. 「ガバナンスの庭師賞」の創設
2025年、南アフリカ・プレトリア大学では博士の功績を称え、
「Dr. Rainer Lenz – The Gardener of Governance Award」が設立されました。
この賞は、優れた研究・実践・教育活動を通じて内部監査の未来を耕した人に授与されるものであり、博士の思想がすでに「一つの学派」として根付いていることを象徴しています。
4. 日本の内部監査への適用:監査を「育てる営み」へ
4.1. 「完璧さ」よりも「成長」を重んじる文化へ
日本の内部監査は、しばしば「チェックリストの完遂」や「形式的な遵守」に重きが置かれがちです。
しかし「庭師型監査」は、監査を“完璧にこなす”のではなく、“変化を促す”ことを目的とします。
庭師は花を咲かせるために、枯れた枝を見つけ、時には剪定します。
監査も同じく、弱点を指摘するだけでなく、それを「成長のチャンス」に変える姿勢が求められます。
4.2. 「AI×IA」でガーデナー型監査を進化させる
私は2025年に出版した書籍『The AI-Driven Internal Audit』で、
AIが内部監査をどう変革するかを提唱しました。
AIは“分析の精度”を高める一方で、ガバナンスの本質である“人間的判断”をより重要なものにします。
まさに「AIの時代に、人間らしさを取り戻す監査」こそが、レンツ博士の思想と響き合うポイントです。
AIがデータの森を解析し、内部監査人がその森に「秩序と生命をもたらす庭師」として働く。
この共存こそ、次世代の監査モデルの核となるでしょう。
5. 終章:「耕す監査」へ——私の誓い
私は、日本の内部監査を“守る仕事”から“育てる仕事”へと進化させたいと考えています。
そして、その哲学的な原点が「The Gardener of Governance™」にあります。
内部監査人は、ルールを守らせる番人ではなく、信頼と変革の種をまく庭師。
その一人ひとりの努力が、組織という庭を、社会という森を、より豊かにしていくはずです。
私自身、この思想を日本の土壌に根付かせ、AI時代にふさわしい新しい内部監査の文化を育てていきたいと思います。
この記事は、私個人の専門家としての継続学習のため、また内部監査業界の発展のために投稿しています。「いいね」や「フォロー」で応援いただけると励みになります。それでは、次回の記事でお会いしましょう!
参考文献
・Dr. Rainer Lenz | Chair of Corporate Governance and Auditing
・The Gardener of Governance – Good Governance Academy
・The Gardener of Governance: A Call to Action for Effective Internal Auditing(CRC Press, 2025)
・Lenz, R. & Jeppesen, K. (2022) The Future of Internal Auditing: Gardener of Governance, EDPACS
