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台湾問題は国際問題である

以前、僕の妄想について記事を書きました。"中華民国"は、ある日"台湾共和国"と名前を変えるであろう。そうすることで国際社会に復帰できるだろうという妄想です。そして、それは"台灣正名運動"で目指されている目標そのものだとも書きました。

しかし、最近は国名を変更するよりも先に、台湾の国際社会への復帰が実現するのではないかと考え始めました。そのことについて触れてみます。

第二次世界大戦後の米援政策

前回、東シナ海の制海権の記事で書いた様に、第二次世界大戦直後に中国の内戦に関わることを避けていたアメリカは、大韓民国が北朝鮮に侵攻される事態に、台湾に対する戦略方針を大きく転換します。大韓民国の米軍勢力を維持するために、東シナ海の制海権を維持し、ひいては台湾に米軍を駐屯させ、台湾に対し軍事援助と共に経済的な支援も始めます。これは台湾における"美援時代"(米国による支援)と呼ばれています。台湾はアメリカの戦略的パートナーとなったわけです。

この時代は1949年から、アメリカが中華人民共和国と国交を結ぶ1979年までの30年間に渡ります。台湾の国内的には白色テロの時代、戒厳令の敷かれていた暗黒の時代という様に見られていますが、一方では台湾に対するアメリカの援助が様々な形で行われ、台湾経済の近代化が進む時代でもありました。

米中国交回復後のアメリカの曖昧政策

しかし、アメリカと中華人民共和国が国交を回復するという事態になり、台湾の外交的環境は激変します。これは、大局的にはソビエトと中国の関係が悪化し、共産主義陣営の2大国が距離を取るようになった。そのため、中華人民共和国側がアメリカとの関係改善を望み、アメリカがそれに応えたということだと考えています。

この事態に台湾はアメリカから見捨てられるのではないかと、恐慌状態になったそうですが、アメリカは"台湾関係法"という国内法を成立させ、国交のなくなった台湾に対し軍事的な保護をすると宣言します。一方で台湾との国交を断ち、中華人民共和国との国交を結びます。
今に至るアメリカの台湾に対する曖昧政策は、この時から始まっています。

アメリカは台湾を軍事的には保護しながら、中華人民共和国との経済関係を発展させるという外交方針に変えたたわけです。
よくよく考えると、これは軍事的には台湾と組み、経済的には中華人民共和国との関係改善を図るという矛盾を孕んでいます。それがために、台湾の安全保障問題をアメリカの国内法で処理するという、とてもおかしな、歪な外交政策が取られているわけです

これは、アメリカと中華人民共和国の蜜月時代の始まりと捉えることもできるでしょう。ただし、それは、経済的な局面だけの蜜月でした。軍事的にはあくまで距離を保ったままでした。
一方で、台湾の立ち位置はとても曖昧な不安定なものになってしまいました。

陳水扁時代の失敗

この、アメリカと中華人民共和国との関係が良好な時代に、台湾では独立の機運が高まり、民進党が政権を国民党から奪取します。陳水扁総統の時代です。
台湾は民主的選挙により李登輝総統を選出し、その次の民進党の陳水扁は台湾本土化を進めます。これは、台湾は中国ではない、中国の一部でもないという主張です。この考えは"台湾正名運動"の主張と大きく重なっていると考えています。

しかし、この運動は挫折してしまいます。これは、基本的にはアメリカの外交政策とぶつかってしまったのが理由と考えています。アメリカは、中華人民共和国との経済協力を進めて、中国の市場経済化を図り、ひいてはそれが中国が資本経済化し、自由主義陣営の仲間になるであろうと目論んでいました。
そして、中華人民共和国から台湾の独立は断じて許さないという強い態度に対して、妥協する方針を選びました。台湾との正式な外交関係をなくし、中国の唯一政権は共産党の指導による中華人民共和国である、中華民国ではないとし、台湾は中華人民共和国の一部であるという主張に一定の配慮をしているわけです。

陳水扁の台湾本土化運動は、アメリカによりストップがかけられてしまいました。そして、その勢いを駆って国民党が政権を奪取します。
陳水扁の台湾本土化運動が失敗したのは、この時期のアメリカが中華人民共和国と蜜月状態であったからでしょう。この関係を維持するためには、台湾は大人しくしておけと大目玉を喰らったのでしょう。
現在の台湾の外交政策の基調は、アメリカを怒らせる様なことを絶対にしてはならない。アメリカの世界戦略に沿った方針を選んでいかなくてはならないということです。蔡英文元総統は、李登輝の時代からこの陳水扁の蹉跌を見て来ており、とても慎重で現実的な外交戦略を立てていました。

中国の経済発展

中華人民共和国が、鄧小平の登場以降、アメリカと協力して世界の工場となる時代になります。台湾における、経済特区の制度を中国に持ち込み、沿岸地方の港湾都市を基点として、多くの外国資本を呼び込み、安い労働力を提供して、家内制手工業から、だんだんに大規模な工場を建設していく様になります。中国の経済発展の時代がやってきます。

この経済発展は、中華人民共和国が世界経済の一環となり、外国の国際企業を呼び込んで、中国国内で様々な商品を生産し、それを外国に輸出することで実現しています。1950年代の日本の経済発展と同じ様な構図でした。

中国軍拡後のアメリカ外交政策の変化

しかし、中華人民共和国は、経済の発展に伴い軍事力の強化にも乗り出します。それは、核弾頭の開発から、大規模な海軍勢力の建設にまで至ります。中華人民共和国が軍事大国を目指すという国家方針はとても明らかなもので、特に現在の習近平政権は常にこの号令を発して、戦争の準備を整えている様に見えます。

この様な中華人民共和国の軍備拡張に対し、アメリカは次第に警戒心を持つ様になりました。かつて蜜月状態だった両国は、あっという間に仮想敵国同士になってしまいました。
現在の国際政治学者は、アメリカの最大の軍事的脅威は中華人民共和国であるとみなす様になっています。現在の米中関係をめぐる国際環境は、この両国がお互いに敵意をむき出しにしている状態と言えます。

この軍事的脅威に対して、アメリカの台湾に対する対応は次第にレベルが上がって来ており、アメリカの軍人が台湾に入るであるとか、政府高官が台湾に入国する事態になっています。
先日は日本の議員石平氏も台湾に入国しており、台湾は中華人民共和国とは別の政治実体であると高らかに発言していました。

この様な、米中関係が悪化しているという国際環境は、かつての陳水扁総統の時代とは全く異なっています。陳水扁が総統であった2000年代の初頭、アメリカの主要敵国はロシアであり、その陣営から中国を引き離し、アメリカの自由主義陣営に迎え入れることが最重要課題でした。そのために陳水扁は失脚してしまい、国民党が政権党に返り咲くことになりました。
しかし、現在はアメリカの主要敵国はロシアではなく中国となっています。その認識の元、米中関係が悪化しているわけです。

台湾問題は国際問題である

僕には、現在の台湾を巡る状況は、アメリカと日本をはじめとした西側諸国が、改めて台湾・中華民国を国際社会に迎え入れようと、一つ一つ布石を打っている状態の様に見えます。安倍元首相が"台湾有事論"を掲げて、日本が台湾側に立っていると明らかにしたのも、現在の高市首相が、中華人民共和国に物申すスタンスを恐れていないのもそうです。
そして、これにはアメリカの動きもリンクしています。アメリカ政府は、高官を台湾に派遣する様になっており、軍事協力も、武器の購入から、軍隊の幹部の派遣まで多方面で行われています。

最新のニュースでは、アメリカがWHOから脱退すると言い始めています。その理由がWHOでは中華人民共和国の発言力が強く、台湾を迎え入れることができない。それがためにアメリカはWHOを脱退すると。
これが本当のニュースであるかどうかは今後の流れを見ていかなくてははなりませんが、この様なアメリカが台湾に対して門戸を開く、中国を排除するという動きは枚挙に頭がありません。

そして、この動きは、目標をアメリカが台湾と国交を回復することにしているのではないかと僕は考えています。中華人民共和国が仮想敵国であるならば、台湾は明らかにアメリカの味方の陣営です。これまでは、冷戦時代のレガシーとして、アメリカは曖昧政策をとっていましたが、本当に中華人民共和国を仮想敵国として戦争の準備を進めるなら、この味方陣営のフォーメーションをきっちりと組み直しておく必要があるでしょう。
その様な見通しをアメリカが持っているとするならば、アメリカと台湾が国交を回復するというのは、夢物語ではありません。中華人民共和国の覇権主義がもたらす必然的な結果です。

台湾を巡る国際政治のパラダイムが大きく変化する。僕には、そんな事態が目の前に迫っている様に見えます。そして、実のところそれは簡単なことです。
中華人民共和国が言っている、台湾は中国の一部分であるという主張を明確に否定すること。これまでは中華人民共和国を慮って、彼らの主張を尊重すると言っていたその言い方を変える。国際社会の現実を突きつけ、台湾は独立した一つの国であるということを各国が宣言することです。
その象徴となるアクションは、アメリカを始めとする西側諸国が台湾との国交を回復することになるでしょう。その様なグランドストラテジーが既に組まれ、アメリカ、日本、台湾、そしてヨーロッパ諸国がその準備を整えている。
僕は、最近の台湾を巡る国際状況を、その様に観察しています。

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