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お客様の声を、そのまま受け取ると改善は外れる

アンケートの要望通りに直したのに、
なぜか満足度が上がらない。

レビューで指摘された部分を改善したのに、
思ったほど反応が変わらない。

お客様の声を聞いているはずなのに、
なぜか本当の課題に近づけていない。

そんなことが、仕事の現場ではよくある気がします。

お客様の声は、大事です。
でも、そのまま課題にしてしまうと、改善を外すことがあります。

アンケートに書かれた不満。
商談で出てきた要望。
レビューに並ぶネガティブな言葉。

それらはすべて、顧客の本音のように見えます。

けれど実際には、
お客様が言葉にできているのは、
感じている不便の一部でしかないことが多い。

たとえば、
「検索が使いにくい」
という声があったとします。

それをそのまま受け取ると、
検索機能を改善しよう、検索精度を上げよう、絞り込み条件を増やそう、という話になります。

もちろん、それ自体が間違っているわけではありません。

ただ、その声の奥には、
もっと別の感情が隠れていることがあります。

欲しいものにたどり着けない焦り。
自分に合うものが分からない不安。
選択肢が多すぎて、判断できない疲れ。
せっかく見つけたのに、買えなかった失望。

お客様は「検索が使いにくい」と言っている。
でも本当に困っているのは、検索機能そのものではなく、
納得して選べないことかもしれません。

あるいは、
「価格が高い」
という声もそうです。

表面的には、値下げしてほしいという要望に見えます。

けれど、その奥には、
価格に見合う価値が伝わっていない、
他との違いが分からない、
買ったあとに後悔しそうで不安、
という気持ちがあるかもしれません。

その場合、必要なのは値下げではなく、
価値の伝え方を変えることかもしれない。

お客様の声には、
いくつかの層があります。

一つ目は、表に出た言葉。

アンケートやレビュー、商談の場で実際に出てくる声です。

「使いにくい」
「分かりにくい」
「高い」
「遅い」
「面倒くさい」

これはとても大事な情報です。
でも、ここだけを見ていると、課題を見誤ることがあります。

二つ目は、その背景にある感情。

不安なのか。
焦っているのか。
損をしたくないのか。
期待を裏切られたのか。
置いていかれたように感じているのか。

お客様は、機能の不満を言っているようで、
実は感情の不満を伝えていることがあります。

三つ目は、まだ言葉になっていない深層心理。

本当は、どういう状態を期待していたのか。
どんな体験なら安心できたのか。
何が満たされれば、もう一度使いたいと思えたのか。

ここまで見にいかないと、
本当の課題にはたどり着けないことがあります。

表に出た声だけを課題にすると、
「言われた通りに直したのに、なぜか満足度が上がらない」
ということが起きます。

検索条件を増やした。
説明文を足した。
ボタンを目立たせた。
価格を下げた。
問い合わせ導線を追加した。

それでも、お客様の不満が消えない。

それは、声に対応していても、
感情には対応できていないからかもしれません。

顧客理解とは、
お客様の言葉をそのまま集めることではないと思います。

その言葉が、
どんな場面で出てきたのか。
どんな期待が裏切られた結果なのか。
本当は何を解決してほしかったのか。

そこまで考えることだと思います。

もちろん、お客様の声を疑えという話ではありません。

むしろ逆です。

お客様の声を大切にするからこそ、
そのまま処理してはいけない。

言葉を表面だけで受け取るのではなく、
その奥にある不便や期待まで見にいく。

そこに、マーケティングや改善の難しさがあるのだと思います。

お客様の声は、答えではない。
問いの入口です。

「なぜ、この言葉が出てきたのか」
「何に困って、この表現になったのか」
「本当に解決すべきことは何なのか」

そう考え続けた先に、
ようやく本当の課題が見えてくる。

お客様の声を聞くことは大切です。

でも、もっと大切なのは、
お客様自身もまだ言葉にできていない困りごとに近づくこと。

表に出た不満。
その背景にある感情。
そして、言葉になる前の深層心理。

この3つを重ねて見たとき、
初めて、今起きている問題の輪郭が見えてくる。

改善とは、声に反応することではなく、
声の奥にある期待をほどいていくことなのだと思います。

今日届いた厳しい声の裏側には、
どんな期待が隠れているのか。

そこを想像することから、
本当の改善は始まるのかもしれません。