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ankou_onna
弥谷宥翠(アマネヒスイ)のあま音の根-45
『二月の朝』
気がつくと
いつも視線は足元にある
毎朝
ギリギリまで眠り
義務のように家を出る
そんな気分だからか
自然と
目線は下に落ちている
意識して
視線を上げてみる
肩を回し
胸を張る
でも
いつの間にかまた
視界は下に戻っている
そういえば少し前
見上げた空を
V字に飛んでいく鳥を見た
あの日は
その一日が
とても良い日になる気がした
でも都会の空は
ビルに遮られて
ほとんど見えない
それでも……
そう思いながら
今度は
空を見上げたまま
歩いてみる
けれど
すぐに視線は落ちる
出勤途中が
楽しいはずもなく
致し方なし
そう思った、そのとき
ピンクの花びらが
一枚
ふわりと舞ってきた
ん?
しばらくして
もう一枚
下を向いているからこそ
舗装された道路の上で
ピンクがよく映える
どこからだろう
やっと視線を上げ
辺りを見回す
少し奥まった
マンションの一角に
梅の木があった
何年も通っている道
下を向いていた朝にも
悪くない瞬間が
紛れていた
