未発売映画劇場「十五福星」
「ジャッキー・チェンと勝負する」で取り上げた「五福星」「大福星」「七福星」の回でも書きましたが、ジャッキー、サモ・ハン、ユン・ピョウの「ゴールデントリオ」の共演で日本でもヒットした「福星」シリーズは、ジャッキーとユン・ピョウがシリーズから離れてからは、興行価値を失ったのか劇場から姿を消しました。
ただし、それは日本でのこと。
地元香港では、福星シリーズはその後も続いていたのです。知ってました?
ゴールデントリオが参加した最後の「七福星」(1985年)が香港で公開された翌年に香港で公開された「十福星」(最佳福星)は、ジャッキーとユン・ピョウにかわって、カール・マッカとシルビア・チェンの「悪漢探偵」夫婦が共演した豪華版。

にもかかわらず、香港でさほどヒットせず、日本でも映画祭で上映しただけでさっさとビデオ発売されてしまいました。
劇場未公開とはいえ、今でも国内版DVDは入手可能なので、見たい人はさがしてみてね。見たからといって得るものは多くはないでしょうが。
これで「福星」シリーズは終了、と思っていたのが、甘かった。
それから3年たった1989年、突如として福星たちは帰ってきていたのです。われわれの知らないうちに(笑)
その名もずばり「Return of the Lucky Stars」「帰ってきた福星たち」ってところでしょうか(表記邦題はオレ製) 中国語題は「福星闖江湖」

開巻から、なぜかブライダルサロンを開店してしている福星チーム。懐かしのフルメンバー、フォン・ツイファン、リチャード・ン、エリック・ツァン、マイケル・ミウがちゃんと勢揃い……ん? サモ・ハンは?
そうなんですよ。この映画、なぜか、役のうえだけではなく、そもそもこのシリーズをリードしていたはずのサモ・ハン抜きなんです。出演してないだけでなく、製作陣にもまったく名前なし。なぜなんでしょうか? 監督、脚本を担当したフォン・ツイファンが乗っ取ったのか? まさか(笑)
まあそんなこととは関係なく、相変わらずの福星たちはブライダルサロンの女性客にセクハラ三昧で、すぐに探偵業に鞍替え。今度はそこに怪しげな美人依頼人がやってきて事件に巻き込まれ、次々と強引きわまる濡れ衣で逮捕される羽目に。
じつはこれ、香港警察の陰謀でした。
ボスが入獄したのを機に、新ボスが犯罪組織を乗っ取る事案が発生。そこでムショにいるボスを篭絡し、新ボスを逮捕する証言をさせて組織を瓦解させようという作戦に、福星たちがムリヤリ起用されたのです。
迷惑な話ですが、無罪放免と報酬を約束された福星チームは、勝手知ったる刑務所に囚人として潜入し、旧ボス(レイザーラモンのRGに激似のロー・ホイパン〔盧海鵬〕)とお友達に。そして出来レースで脱獄に成功するのですが、当然のように新ボス(ウォン・チン〔王青〕)が彼らを狙ってきて……
このあらすじからもわかるように、当時香港で大流行していたノワール映画をちゃっかりパク……パロディにした筋立てです。中文タイトル「福星闖江湖」も、そんな雰囲気。刑務所に入るのは明らかに大ヒット作「プリズン・オン・ファイアー(監獄風雲)」あたりからだし、新旧ボスの対立は間違いなく、かの「男たちの挽歌」のつもりでしょうね。
クライマックスでは、旧ボスを擁した福星チームが新ボスのアジトへ殴り込みをかけるのですが、まぁ例によってコントレベルのギャグのオンパレード。基本、滑ったり転んだりドタバタしたりだけなので、肩の力を抜いてお楽しみくださいってことか。
とはいえ、彼らが敵陣に乗り込むシーンなどは、かつて香港ノワールに夢中になった身としては、けっこう笑えるものもありました。わざわざ銃弾の穴だらけのロングコートを着るとか(もちろんチョウ・ユンファとは雲泥の差)、ジョン・ウー監督ばりのスローモーション演出が駆使されるとか(ただし、スローなのは彼らだけで、周囲は普通に動いてますが)、けっこうノワール気分を盛り上げてくれます。いや気分だけですが。
ただ、そうしたノワールっぽいギャグは、クライマックスではやや空回り。マシンガンの反動で制御不能になって銃弾を巻きちらすとそれが次々にギャングたちに命中して全滅させるとか、なまじ弾着効果とかが盛大なだけに、ちょっと笑いに徹しきれてないんですよね。
そんなこんなで、けっきょくこの福星シリーズ第5弾は、日本ではまったく未公開。この時期、けっこう香港映画ブームだったのに、ビデオすら出ませんでした。
香港でも大ヒットには至らなかったらしく、花々しく復活というわけにはいかなかったので、シリーズはこれで打ち止め……じゃないんですね。しぶとい。
なぜかまたまた3年後、福星チームは復活するのです。
ですが、そのお話はまたの機会に(笑)
