ジャッキー・チェンと勝負する(15)

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今回はまたちょっと古くなって「クレージーモンキー 笑拳」。出世作「ドランクモンキー 酔拳」の翌年、1979年の作品で、日本でも「ドランクモンキー」の翌年の1980年に公開されている。タイトルはシリーズっぽいが、もちろん完全に独立した作品だ。そして、記念すべきジャッキー・チェンの初監督映画である。

とはいえ、監督としては初心者。前回の「九龍の眼」と比べるまでもなく、監督としての腕前はまだまだの一言に尽きる。ほとんどカメラを据えっぱなしの長回しが中心で、数カ所使用している超広角レンズやスローモーションも大した効果は上げていない。たぶん、ここまでつきあってきた先輩監督たちの模倣から入ったのだろう。本人もこの作品でより力を入れたのは、コレオグラフィ(武術指導)すなわちカンフーシーンの演出のほうではなかったか。

そのカンフーシーンは、ジャッキーらしい独特のコミカルカンフー全開。カンフー映画の定番である特訓シーンも、コミカルさを前面に出しており、厳しさを描くような従来作品とは一線を画している。ファイトシーンでは、対戦相手をおちょくるような動きが主なので、やられる方もマヌケに見えるだけで、ダメージが薄そうだが。カンフー映画では、常に悲壮感が強調される最終決戦でも、笑い、泣きながらの必殺拳だと、そのユニークな動きが強調され、悲壮感はあまりない。今回のストーリーの中核をなす必殺技は、「喜怒哀楽」の感情をそれぞれ表わす拳なのだが、そのなかでも「哀」を表わす「泣き拳」の動きは絶品だ。

こうしたカンフーシーンのユニークさに比べ、祖父の敵討ちに主眼を置いたストーリーは、古色蒼然。そのため、コミカルなカンフーシーンとの落差が大きく、ちょっと違和感がぬぐえない。まだまだジャッキー映画らしさは、カンフーのみにあった時代のモノだということだ。

このあと、ジャッキーは監督として腕を磨き、堂々と世界に通用するアクション映画監督になっていくのだが、この「クレイジーモンキー」はその第1歩に過ぎず、後年の充実ぶりをうかがわせるほどのものではなかった。

ちなみに、この映画、公開当時は日本で配給した東映が、例によって日本独自の音楽を入れていた。CDなどで今でも聞くことができるあのテーマ曲も日本製で、今回のDVDでは日本語吹き替えバージョンでしか聞こえない。というのも、この時期の香港映画は著作権意識が薄かった(というか、なかった)ので、勝手によその音楽を使い放題。コミカルシーンで「ピンク・パンサーのテーマ」とか、わかりやすすぎるパクリだらけで、日本的には気を使わざるを得なかったのかもしれない。

そんななか、ラストシーン、ジャッキーが怪我した師匠を乳母車で運ぶシーンに「子連れ狼」の主題曲がかぶさる。

公開当時はこれも日本で独自に入れた音楽と思われ、東映にはずいぶん批判の投書などがあったようだが、じつはこれはオリジナルから入っていたもの。橋幸夫のヒット曲「しとしとぴっちゃん」ではなく、テレビシリーズ版の主題曲「ててご橋 」なんだが、考えてみたら、わざわざ東映が他社作品(日本テレビ)の曲を使うこともないよなぁ。

むしろこれは、当時の「子連れ狼」の海外での知名度の高さを示すいい証拠なんだろう。このテレビドラマ、香港でも放送していたってことだ(日本での放送は1973年~1976年)。アメリカでもカルト的人気があったというし、このへんの業績はもっと評価してあげたい。

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