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吉良高校とBT学園

高校野球マンガ「バツ&テリー」に出てきた東海大相撲高校と、「巨人の星」の双葉学園と尾張高校をご紹介したので、ここはやはり「ドカベン」に触れないわけにはいきませんね。

高校野球マンガの金字塔であり、パイオニアでもある「ドカベン」は、1972年から1981年まで、足かけ10年近くにわたって延々と連載されました。さらにその続編にあたる「大甲子園」(1983年から1987年まで)があり、両編合計で単行本じつに74巻におよぶ大河コミック。その後「プロ野球編」「スーパースターズ編」「ドリームトーナメント編」と続き、まだ現役だったりします。

とはいえ「ドカベン」自体は、中学生の山田太郎少年が、明訓高校に入学して最後のセンバツ大会までのわずか4年ほどのあいだの物語(最後の夏は「大甲子園」で描かれる) なので、この大長編で描かれる高校野球の甲子園大会は、春夏合わせてわずかに4回だけです。

山田が率いる明訓ナインのライバルといえば、神奈川予選で毎回激突する白新高校の大投手・不知火、東海高校の巨漢スラッガーの雲竜、横浜学院の剛球エース・土門といった地元の強豪たちと、甲子園のライバルである高知・土佐丸高校の犬飼兄弟あたりがレギュラーでした。

もちろん、そのほかにもたくさんの高校が登場するのですが、そんななかでも私に強烈な印象を残している2校をご紹介しましょう(すいません。わが家のどこかに肝心のコミックスが埋もれてしまっているので、記憶だけで書いていきます)

ひとつは高校2年夏の神奈川県予選で当たる吉良高校

このチームは、超ユニークです。なにしろコンセプトが「1回も戦わずに勝ち進む」ですから。もともとは南海権左が率いるフダつきの不良集団。そいつらが突如野球に目覚め、甲子園を目指そうというあたりは、他の高校野球マンガにもありがちな設定ですが、そこで猛練習などはしない(しようとするがやり方すらわからない)のがいいところ。なのに、なみいる強豪高校を差し置いて勝ち進むのがケッサクであります。

というのも、この南海権左と吉良高校は異常な悪運に恵まれているのです。対戦相手の高校が、暴力事件を起こして出場辞退したり、集団食中毒で棄権したり、試合に向かう途中で交通事故にあったり。なかでも、実際に対戦はしたものの、あまりにヘタクソな吉良高校相手に延々と続く1回表の攻撃が終了できず、炎天下で選手が次々と倒れて途中棄権という試合まであり、ついに全戦不戦勝で明訓との対戦にこぎつけるのです。登場人物たちは南海権左に呪いの力があると思って怖れます。

いよいよ対戦当日の朝、呪いへの恐怖でビクビクの明訓ナインが寮を出発しようとするちょうどその時、大きな地震が襲ってきます。すわ南海権左の呪いかという瞬間は、読んでいて盛り上がりましたねえ。よく考えると、大地震が神奈川県を襲ったら、南海権左自身もタダじゃすみそうにないんですが。このシーンでは、明訓の二塁手・殿馬一人という得がたいキャラクターがすごく効果的。殿馬のおかげで権左の呪いは解消し、明訓は無事に勝ち進むのでありました。

なんとか甲子園にコマを進めた明訓は、初日(だったかな)の最終試合で、東東京代表のBT学園なる高校と対戦します。

BTとは何ぞやというと、これが「ブルートレイン」の略。当時、国鉄の寝台特急ブルートレインは大人気で、ちょっとしたブームでしたね。こういうものを見逃さないのが水島野球マンガのいいところ。

で、このBT学園、夜行列車のブルートレインの乗務員を育成するための高校なんだそうで、そんな狭い職種の専門学校、ありえないだろう的な気がしますが、まあまあ。(鉄道についての専門学科のある高等学校は実在します)

ゲームは、なぜかダラダラ野球で謎の時間稼ぎを繰り返すBT学園のおかげで、薄暮に突入。そこでにわかにBT学園が牙を剥くのです。

名捕手・山田はBT学園のデータ分析をすませていましたが、なぜこの大した特徴もないチームが勝ち進んできたのかに頭を悩ませています。その答えが「BT学園は足で勝ち進んできた」だったのです。セーフティバント、盗塁、ダブルスティールとたたみ込むBT学園の「足の攻撃」 おまけに薄暗いグラウンドで、明訓の守備が乱れに乱れます。これこそBT学園のダラダラ野球の狙いでした。夜行列車用の訓練を受けているBTナインは、異常に夜目が効くのです。

このへんのリアリティはともかく、BT学園の「足の攻撃」は迫力満点。明訓ナインが審判にナイター点灯を懇願するも、一気に明訓を追いつめ、リードを奪います。

それでもナイターに突入し、照明が灯って明訓ナインもひと安心。

と、思いきや、今度はBT学園のエース・隼投手の「光の芸術」が明訓打線を追いつめるのです。

「ドカベン」高校2年の夏の甲子園は、常勝・明訓高校が唯一の黒星を喫する歴史的大会ですが、その前座をつとめる形になった、神奈川県予選の吉良高校、甲子園のBT学園は、見逃すことのできない強敵でした。

こうした強敵たちとの戦いを一戦一戦、丁寧に描いていったことが、「ドカベン」のロングラン連載を支え、同時に超長期連載たらしめ、高校野球マンガの金字塔へと押し上げていったわけですね。

  熱血マンガ敵役列伝・目次

  スポーツ雑記帳 目次

【2020/12/1】 水島先生が引退を発表されました。長い間ありがとうございました。数多くの野球マンガはこれからも不滅です。

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