春日山部屋消滅
もうすぐ九州場所が始まる。今年最後の本場所だ。
そんな時期に、とんでもない事態が勃発した。
神奈川県唯一の相撲部屋で、川崎市にある春日山部屋が、消滅したのだ。
とんでもないことだ。あってはならない事態だろう。
とはいっても、相撲部屋の消滅は、じつはそんなに珍しいことではない。
消滅の理由はだいたいにおいて、師匠が不在となる(死亡、停年等による)か、所属する力士が不在となること。
近年は師匠の停年前に部屋を閉じる事例が多く、2010年以降でも、桐山、田子の浦、大島、花篭、中村、放駒、間垣、三保ヶ関、朝日山といった部屋が師匠不在で、高島、二所ノ関などが所属力士不在で、いずれも消滅している(その後に復興したり名跡交換で名前だけが復活した部屋もある)
しかし今回は、そのへんの事情が非常に特異だ。
報道されているので重複は避けるが、表向きの筋書きはこうだ。
師匠の春日山親方が師匠に不適格だとして相撲協会の理事会が師匠辞任を勧告し、これに従って親方が師匠を返上、師匠不在となった春日山部屋は、一門の追手風部屋に合併されることになって、消滅したのだ。
だが、その背景には、先代から当代への年寄株譲渡の際のゴタゴタがあるようで、そこは協会的にはあまり触れてもらいたくない問題。まぁ、その件は裁判で係争中だそうなので、その決着を待つしかないと思うんだが、問題の顕在化を嫌った協会がそれを待たずに断を下したということか(推測です)
停年や死亡による理由でなく、師匠がその地位を追われるのはかなりのレアケース。近年では2010年に師匠の不祥事に伴う処分で一時閉鎖された木瀬部屋の例があるくらいだ(2012年に処分解除で復興している)
そのせいもあってか、部屋の所属力士の半数にのぼる12名が引退届を出すなど、ちょっとした異常事態を招いている。
まずはこの点を何とかしてほしい。どんな事情があろうと、力士の犠牲だけは避けなければならない。
また、春日山部屋は、Jリーグの川崎フロンターレとも友好関係にあるなど、地元に定着した部屋だけに、一報以降、部屋の後援会はもとより、川崎市長からも部屋存続の要望が出たりした。
なので、川崎での部屋存続へ向けての動きもあるようだ。はたして、相撲協会や理事たちは、このへんの事情をもちゃんと把握したうえで断を下したのだろうか。
今後を見守りたいが、一方で九州場所はもう始まる。所属力士たちの処遇や、モチベーションが心配である。
しばしば本欄でも春日山部屋を取り上げてきたのでお察しと思うが、個人的には、今回の相撲協会の動きは納得いかない。
その裏には、私個人の記憶に別の事件があるからだ。
言うまでもないだろう。
ファンを完全に無視した、あの一件以来、私のプロ野球への興味と信頼が大きく減じたことは、前に書いた。
1998年にJリーグで起きた横浜フリューゲルス消滅の件も同じだ。
事情はいろいろあるだろうが、こうしたプロスポーツなどで、応援するチームが消滅するというのは、ファン無視も甚だしい。
相撲ファンにとって、今回のような決着が最悪の出来事なのを、協会幹部たちは承知していたのか。
大相撲は個人競技だが、同時に部屋という団体の存在も大きい。力士個人だけでなく、部屋を応援するファンも多いのだ。
その部屋を、言ってみれば協会だけの都合で、一方的に消滅させるのは納得いかない。後援会などのタニマチだけでなく、一般ファンも、その点では同じだろう。
お題目のように「相撲ファン重視」を叫んでも、こうしたところで馬脚があらわれてしまうのだ。
九州場所の番付は発表され、春日山部屋所属だった力士たちの名は新番付では全員、追手風部屋所属で掲載されている。
はたして、彼らは九州場所の土俵に上がれるのか。その点も、相撲協会からは何のアナウンスもない(11月8日現在)
たしかに春日山部屋には関取もおらず、上記の近鉄やフリューゲルスの時にくらべると、一般の関心も薄いようだが、だからと言って許容されるものでもないだろう。
このままウヤムヤにされたのでは、所属力士や関係者はもとより、春日山部屋を応援してきたわれわれにとって、納得いくものではないだろう。
協会は、相撲ファンに向け、早急に事情説明を行なうべきだ。
そのうえで、部屋存続なのか、全員納得のうえでの合併なのか、しっかりした判断を下してもらいたい。
もう一度言う。
近鉄バファローズや横浜フリューゲルスの悲劇だけは、繰り返さないでもらいたい。
大相撲/丸いジャングル 目次
〔2016/11/30 追記〕
今日、相撲協会から引退の告知が出た。けっきょく春日山部屋に所属していた力士のうち12人が、不本意な形で角界を去ることになった。残念で、最悪の結末だ。残った力士たちで春日山部屋を再興できたとしても、この件は汚点として残ってしまうだろう。力士たちを犠牲にしたことでは、関係各位の猛省を促したい。引退したのは以下の12名。
水口 萬華城 伯錦 松葉山 春日丸 熊王 福の邦 福倭 幸山 春日里 篠目錦(稲垣) 大勢(平成28年3月初土俵)
これからの人生での、彼らの健闘を祈りたい。また等々力で会えるといいね。
【参考】PRIDE OF 神奈川
