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令和4年・名古屋場所雑記

今場所は非常に嬉しい優勝があった。

逸ノ城の平幕優勝も嬉しいことは嬉しかったです。

毎場所毎場所、場所の序盤にツイッターで「今場所こそは逸ノ城が覚醒か」とつぶやいてきたのに、いつもいつも裏切られてきた私にとって、悲願成就ともいえる優勝だったのは確かだ。おめでとう

でも、もっと嬉しかったのは、吉井幕下優勝だ。

ご存じない方も多いだろうが、吉井は中学横綱になり、中学卒業とともに入門した有望株。初土俵は平成31年春場所だから、キャリアはまだ4年余。

なんでこの力士に注目していたかというと、彼の入門が中川部屋だったからだ。

中川部屋は消滅した春日山部屋を引き継いだ形で興され、私の地元の川崎市にある唯一の相撲部屋だった。なのでそれなりに思い入れもあり、応援していたのだ。

このへんの詳しいことは、こちらをお読みいただきたい

そこに中学横綱の実績を引っ提げて中卒で入門してきたのが吉井だった。初土俵の平成31年春場所は平成最後の場所だが、翌場所の序ノ口デビューから6場所連続勝ち越しで幕下へ番付を進めたところで、令和2年5月場所限りで中川部屋が閉鎖となり、師匠とともに時津風部屋へ移籍していた。

中川部屋の若手有望力士(相撲界では「米櫃」と呼ぶ)なので、当然ながら応援していた私にとっては、その後も常に注目する力士だった。その後、連続勝ち越しは10場所まで伸ばしたものの、負傷もあって今年初場所には三段目に後退したが、すぐに復活してきた。そして今回の幕下優勝だ。

私が応援しはじめた春日山部屋時代から含めて、部屋在籍の力士が各段優勝したことはなかった。それだけに、吉井の優勝は、わがことのように嬉しい。

そういえば、同じくかつて中川部屋所属だった幕下の玉正鳳(片男波部屋)も今場所は好調で5勝1敗。そこでコロナ禍休場に巻き込まれて7番相撲が不戦敗になったのは不幸だったが、それでも来場所は幕下上位に返り咲きそうだ。こちらも応援したい。

若い力士の出世を長年にわたって見守るのも、大相撲の楽しみのひとつ。来場所以降の彼らの活躍に期待しよう。

というところで、やはりこの話題にふれねばならないだろう。

コロナ禍休場だ。

日本中で第7波ともいわれる感染増加が、角界を直撃したのだ。

場所前に田子の浦部屋で感染者が出て、高安を含めた全員が休場というニュースがあったが、これは始まりに過ぎなかった。

7日目に出羽ノ海部屋での感染が発覚して大関・御嶽海らが途中休場したのを皮切りに、場所終盤にかけて次々と「感染部屋」が発生、優勝争い渦中の琴ノ若一山本、連続出場記録中の玉鷲(この記録は継続扱いになるらしい)や人気の遠藤や翔猿らが次々と土俵から姿を消し、千秋楽の八角部屋まで、けっきょく合計13部屋で170人、関取以上だけで23人が休場というのは戦後最多だったそうだ。力士全体は約620人だから、3割近くの力士が休場に追い込まれたわけだ。

おかげで取組数が激減。幕内、十両の土俵入りは寂しくなるわ、不戦勝が続発するわ(13日目には幕内16番のうち、5番連続不戦勝を含めて7番が不戦勝)、幕下以下では両者不戦敗の椿事も起きた。千秋楽には八角理事長までが休場となり、逸ノ城に天皇賜杯を渡したのは陸奥事業部長だった。これも史上初かな?

まさに異例の本場所となったのだ。私は半世紀以上も大相撲を見ているのだが、さすがに見たこともない風景が続出した。

もともと大相撲は団体生活なので感染が広がりやすいのだが、それに加えて今回は地方場所開催中。東京では自宅から通いの親方や関取たちも部屋の宿舎暮らしだし、本場所の支度部屋も東西合同だったりして、感染拡大に拍車を掛けたのかもしれない。

何はともあれ、場所はなんとか千秋楽まで完走したものの、これからが大変そうだ。

これまではコロナ感染者が出て部屋全体が休場になった場合は、本場所成績としては休場扱いせず、翌場所の番付は据え置きとすることになっていた。

ところが、今場所は休場者の大半が途中休場。なかには勝ち越し、負け越しが決まってから休場に追い込まれた者もいる。とくにカド番だった大関・御嶽海(休場まで2勝4敗)や、大関盗りの足固めだった関脇・大栄翔(休場まで6勝6敗)の扱いは、大関という地位をめぐる微妙な問題をはらむだけにむずかしい。また幕尻で大負けした大奄美は、最後はコロナ禍休場だったが13日目に休場になるまでは2勝8敗2休(負傷休場) どう扱ったらいいのだろう?

けっきょく場所中には方針を示せず、場所後に扱いを協議するというあいまいな状態になった。番付一枚違えばムシケラ同然とまで言われる相撲社会で、その番付の行方が不透明なのだ。当事者たちは不安でたまらないだろう。

感染拡大そのものはやむを得ない面もあるが、これに対する対応がまったく未定だったのはいただけない。相撲協会は危機管理の不足を露呈したようなものだ。感染者が出る場所がこれで終わりということもないだろうし、早急にしっかりした指針を決定してほしい。

とそういう事情があったにもかかわらず、いやそれがあったせいか、とくに今場所の終盤戦の土俵上は熱戦が多かった。三役で連続して勝ち越している豊昇龍、平幕上位に完全定着した霧馬山翔猿、平幕下位とはいえ10勝した翠富士阿武咲、新入幕で同じく10勝の錦富士、負け越しはしたものの大いに館内を沸かせた若元春宇良、無念にもコロナ休場に追い込まれた琴ノ若らは、充分称賛に値する(例によって三賞の出し渋りには苦言を呈したいところだ)

確実に若い力は上昇してきている。そして、これで今年は4場所すべての優勝者が別人で、しかも5年連続で平幕優勝が誕生するという大相撲の歴史に残る新記録が継続された。これらに象徴されるように、大相撲の戦国時代はまだまだ続きそうだ。

コロナ禍に負けずに、夏巡業を無事に終え、秋場所も充実した土俵を見せてもらいたい。

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