ジャッキー・チェンと勝負する(23)
1999年公開の「ゴージャス」の登場。ジャッキー映画では非常にレアなラブロマンスものだ。いったいどうしたんだジャッキー、何を考えてたんだ。
聞くところによると、当初はジャッキーが主役の大富豪を演じる予定ではなかったとか。なるほど、それならわかる。格闘技好きとはいえ、孤独な大富豪なんて、およそジャッキーらしい役ではないよな。
それに、この映画の主役は間違いなく、恋にあこがれる天然系の美少女プウを演じるスー・チー(舒淇)。そして、場をさらうのは、トニー・レオン(梁朝偉)演じるオカマのメイクアップアーチスト。ほーら、ジャッキー映画っぽくないだろ?
これまでこの欄で取り上げてきた中にも、「新ポリス・ストーリー」とか「アクシデンタル・スパイ」とか、らしくないジャッキー映画はあった。「ベスト・キッド」のようにジャッキー映画でなく、「ジャッキーが出ているだけの映画」もあった。だがそれらはすべて、すくなくとも「男の子映画」だったはずだ。ジャンル的にも「アクション」とか「サスペンス」がほとんどだし、必ず「戦い」の要素が入っていた。
では、この「ゴージャス」はどうか?
冒頭から、お星さまとイルカがキラキラし、ビンに入った手紙が流れ着くという、ヒロイン本人がつぶやくごとくに「ロマンチック」全開。
「戦い」がゼロではない。ジャッキー映画らしく見事な格闘シーンが用意されてはいる。敵役っぽい白人ファイター(ブラッドリー・ジェームス・アラン)とのカンフーファイトは、ジャッキー映画史上屈指の迫力だ。
だが、そのファイトは、まったくスポーツライクなファイト。互いに相手を殺そうとするような性格のものではないので、かつてのベニー・ユキーデとの名勝負にくらべると、いちじるしく緊迫感に欠けるのだ。
ただ、この短躯だがキレのある動きとスピードでジャッキーをも圧倒するブラッドリー・ジェームス・アランは、ジャッキーのスタントユニット「成家班」のメンバーで、この前後のジャッキー映画にはもれなく参加している逸材。なるほどジャッキーとの息もぴったりで、これでファイトのシチュエーションにもっと緊迫感があったら、さぞや名勝負になっただろうなと、惜しまれる。もったいないので、こうした大役でまた使ってほしい。
タイトルどおりに配役はゴージャス。大物歌手のエミール・チョウ(周華健)や、ワンシーンだけ出演のロー・カーイン(羅家英)など、もったいないほどの使い方。さらに、マヌケな警官役でワンシーンだけ出演したコメディ王、チャウ・シンチー(周星馳)との絡みは、笑わせてくれるし、顔合わせの貴重さもある。
こうした布陣と、スー・チー、トニー・レオンらにくらべると、ジャッキー本人の印象は強いとはいえない。そもそも、すでに中年を終えつつあるジャッキーがやる役じゃないよな。はるか年下の少女に本気で惚れる大富豪? 似合わないぞ、ジャッキー。
そんなわけで、完全なるジャッキー映画なのに、まったくと言っていいほどジャッキーらしからぬ映画に仕上がってしまった、この「ゴージャス」だが、じゃあつまらないかというと、そんなことはない。ジャッキー・チェンが霞んでいるだけで、映画としては充分に面白いのだ。そこらへん、ジャッキーの計算違いなのか、それとも狙ったのか?
この時期のジャッキー・チェンが、ハリウッドに軸足を移しつつ香港でも映画を作っていたという事情が影響しているのかも知れないが、なんとも言えないな。前述したように、私はこの時期のジャッキー映画をあまりちゃんと見ていないので、そのへんの見きわめは、このあとの課題としよう。
