ジャッキー・チェンと勝負する(43)

前回の「ドラゴン特攻隊」に続いて、今度は「炎の大捜査線」の登場だ。いったいディアゴスティーニ社、何を考えてのラインナップなんだ? 何も考えていないのか、それとも悪意なのか?(笑)

などと邪推してしまうくらい、1991年製作の本作はイロイロと問題作なのである。この「ジャッキー・チェンDVDコレクション」が発表された時に、たぶん収録されないだろうなと思っていたうちの一本でもある。

というのも、この「炎の大捜査線」、「ドラゴン特攻隊」と同じく、ジャッキー・チェン主導の映画ではなく、香港そして台湾映画界の顔役であるジミー・ウォングが作り上げた映画なのだ。

そしてこの映画、香港映画ではなく台湾映画なのだが、ジャッキー・チェン、サモ・ハン、アンディ・ラウ、レオン・カーフェイという香港映画界の4大スターが豪華共演している。ここまで主演級のスターが揃うのは、香港映画でもなかなかない豪華さだ。

物語は「火焼島」(原題でもある)という警戒厳重な刑務所を主要な舞台として展開する。腕利き刑事の恩師である所長が、彼の目前で何者かに暗殺される。犯人を追った刑事だが、犯人は逃走用の車に仕掛けられた爆弾で爆死。だがたまたま一本だけ残った犯人の指を指紋照合した結果、それがすでに刑務所で処刑された死刑囚のものであることが判明する。刑務所に何かあると感じた刑事は、自ら囚人となっての危険な潜入捜査に挑むが、所内には一癖も二癖もある囚人や、娑婆でさまざまなイワクのある男たちが集まっていた……。

断っておくけど、監督も同じチュー・イエンピンによる「ドラゴン特攻隊」よりは、数倍まともな映画だ。まあ、あれよりマシといっても大して誉めたことにはならないけど。

1987年に香港で「プリズン・オン・ファイアー/監獄風雲」が大ヒットしており、監獄映画のちょっとしたブームが来ていた。その線を狙った作品であることは、明白。その証拠に、「監獄風雲」の主役の一人であるレオン・カーフェイが、潜入捜査を試みる刑事に扮している。

え? ジャッキーじゃないの?

そう、明らかに監獄モノを狙ったこの映画の主役は、ジャッキー・チェンではない。サモ・ハンもアンディ・ラウも主役ではない。そう、じつをいうとジャッキー、サモ・ハン、アンディの三人は、あくまでも監獄ものの主役レオン・カーフェイの脇を固める、「そのほかの囚人たち」役に過ぎないのだ。ちょっともったいなくないか?

お気づきだろうか、この映画の仕組みは、「ドラゴン特攻隊」と同じなのだ。本筋の映画に、ジャッキーら大物スターをゲスト出演させて、そっちをメインに見せかける手段。

こう書くと、かなりインチキっぽく聞こえるが、これはこれでけっこう大変なことではある。なんといってもこれだけのスターたちを動員できる実力がプロデューサーになければ成り立たないからだ。

その点は、さすがにジミー・ウォング大兄。とかくの噂があるおかただが、その真偽はともかく、天下のジャッキーらが否応なく招集されて出演しているのだから、彼らに相当顔がきくのは確かなのだろう。

ジミー大兄ご本人は、刑務所内の囚人たちのカリスマ的ボスを演じている。ハードな登場シーンから徐々に人間味を見せるなどなかなかおいしい役どころではあるのだが、映画中盤であっけなく無駄死にしてしまうという、いささか損な役回りだ。

「オレがここまでやるんだから、おまえら文句ないよな?」

「わかりました、ジミーさん」

そんな会話があったかどうか知らないが、おおかたそんな感じなんだろう。

というわけで、まったくジャッキー・チェン映画ではないこの作品だが、香港や日本でもちゃんと公開されているのだから、ジミー大兄の作戦は成功したというわけだ。

ああ、誤解されるといけないので書いておくけど、「ドラゴン特攻隊」よりはマシとはいえ、そんなに素晴らしい映画ではないですよ。

先に書いたようにこの映画、刑務所への潜入捜査を描くはずなのに、刑務所入所後はそんなことはすっかり忘れて、単なる刑務所モノに終始する。「大捜査線」なのは、最初と最後の10分ずつくらいで格好をつけただけというテイタラクなのだ。

なので、けっきょくのところ、ジャッキー以下の豪華共演陣、まったくのムダ使いだったということだ。ああ、もったいない。

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