史上最強の準優勝〔続〕
準優勝記録を整理していて、気がついたことがある。
準優勝と一口に言っても、その内容には大きな開きがあるってことだ。
優勝は一場所に一人なので、同点者がいれば優勝決定戦を行なってでも優勝者を決定するが、準優勝はそんなことはしない。なので、準優勝同点はたくさんあるのだ。
ざっと見たところ、準優勝同点者が最多だったのは1972年(昭和47年)初場所の6人。史上空前の大混戦を制して11勝4敗の栃東が平幕優勝した、あの戦国場所だ【こちら参照】 星ひとつの差で大魚を逸したのは、琴桜、長谷川、輪島、福の花、吉王山、若二瀬の6人。このうち琴桜は優勝経験があり(その後も優勝している)、長谷川はこの翌場所、そのまた翌場所には輪島が賜杯を手にしているが、残る3人は一生一度のチャンスを逃がしたことになる。実現寸前だった、史上空前の8人の優勝決定戦も含め、惜しいことをしたもんだ。
次いで準優勝者が多いのは、大関・若羽黒が13勝2敗で優勝した1959年(昭和34年)の11月場所で、やはり星ひとつ差の栃錦、安念山、玉乃海、若ノ海、富士錦の5人が準優勝となった場所だ。このなかでは若ノ海だけが千載一遇のチャンスを逃がしたことになる。
準優勝4人という場所はけっこうあって、通算9場所を数える。そのうちでも、1996年(平成8年)11月場所は史上最多の5人による優勝決定戦が行なわれ、曙、若ノ花、貴ノ浪、魁皇が優勝同点で準優勝者になった(優勝は武蔵丸)のが目を引く。この時のメンバーでは魁皇だけが優勝経験なしだったが、のちにちゃんと優勝したので、めでたしめでたし。5人のうち3人が同期生(曙、若ノ花、魁皇)だったというのも、めずらしい。
いっぽうで、準優勝者の成績にも大きな開きがある。
一場所15日制では、さすがに15戦全勝の準優勝者はいない。
だが、14勝を挙げながら優勝できなかった残念すぎる準優勝は、意外と多くて33場所を数える。
このうち21場所は14勝同士の優勝決定戦で敗れたのだから、まだあきらめもつこう。残る7場所では、14勝を上回る15戦全勝力士が優勝をさらっているのだから、悔しさもひとしおか。だが、その大半は、自らが全勝力士に敗れているのだから、まあ仕方がない。
最大に悔しいのは、1953年(昭和28年)五月場所に大関で14勝を挙げながら、平幕の時津山がまさかの全勝を成し遂げたために優勝を逃がした吉葉山だろう。小結の出羽錦に取りこぼした1敗がまさに痛恨となったわけだ。
1964年(昭和39年)1月場所で入幕2場所目の清国は、幕尻近くで初日から14連勝。千秋楽に大抜擢で当てられた関脇・大豪に負けなければ 史上唯一の全勝同士の優勝決定戦に臨めるところだったのだが、惜しくも敗戦。同場所デビューの同期生だった横綱・大鵬に優勝を持っていかれた。残念無念。
現在は番付下位でも成績が良ければ上位陣との取り組みが組まれるのが普通なので、こうしたケースは今後まず出そうもない(清国は前頭上位や小結・海乃山に当てられて、それでも勝っているが) 実力差うんぬんよりも、全勝同士の取り組みが組まれる可能性が大きいからだ。だから15戦全勝同士の優勝決定戦は、同部屋の二人が全勝で勝ち進むケースしかないだろう。
逆に優勝者と大差がついたケースはどうだろうか。
これまでの最大スコア差は、4勝差だ。そりゃそうだろう、全勝優勝に対して10勝5敗の低レベルで準優勝のケースでやっと5勝差。そもそも15日制下で準優勝スコアが10勝5敗というの自体が3場所しかないレアケースなのだから(前記した戦国場所がその一つで、優勝者との差がたったの1勝というのもまたすごい場所だ)
スコア差4勝の場所は14場所あるが、そのうち5場所で優勝をさらっているのが白鵬。全勝優勝自体が多いので当然といえば当然だが、それだけ白鵬の実力が抜きんでている証拠の一つといえよう。
準優勝そのもののロースコアはどうだろうか。
前記したように、わずか10勝で準優勝に輝いたのは3場所だけ。いちおう記しておくと、1968年(昭和43年)5月場所の豊山、栃東、藤ノ川(優勝は大関・玉乃島〔のちの玉の海〕の13勝2敗)、1972年(昭和47年)初場所の6人(前記)、それに、2003(平成15年)3月場所の朝青龍、魁皇、旭鷲山、北勝力(優勝は大関・千代大海の12勝3敗)
これが11勝4敗となるとぐんと数は増え、じつに73場所にのぼる。だいたいが団子レースになったケースなので、単独で11勝4敗のロースコア準優勝を遂げたのは、わずかに13人だけ。大麒麟、旭国、魁傑、二代目・若ノ花、北の湖、北勝海、三代目・若ノ花(若花田)、二代目・貴ノ花、二代目・栃東、安芸ノ島、隆の若、千代大海、琴光喜だ。なかなか壮観なメンバーだ。2度成しとげた力士は、いまのところいない。
こうして見てきたように、一口に準優勝といってもピンからキリまである。まことに惜しいものから、たまたまちょっと勝っただけなのにまで、その差や価値は千差万別だ。
さて最初の命題に戻れば、ここ3場所の稀勢の里の準優勝は、13勝(1差)、13勝(2差)、12勝(1差) さあどうだろう、2場連続優勝に準ずるには、最低でも優勝同点くらいの準優勝でないとダメだと思うのだが……
