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令和7年・春場所雑記

またしても高安、である。

中盤戦で横綱大関を連破し、再三単独トップに立って、今度こそは高安が悲願の初優勝達成かのムードが高まった。3敗でトップに並んでいた千秋楽でも先に勝利し、結びの結果次第でというますます機運が高まったが、けっきょく天は高安に味方せず、もつれこんだ優勝決定戦でまたしても苦杯を喫してしまった。

平成25年初場所で初めて準優勝に名を連ねてから12年余、この間じつに9度の準優勝を重ね、優勝決定戦で敗れることも今回で3度目。ここまでシルバーコレクターな力士もめずらしいのではないか。

ざっと調べても、優勝決定戦で3回敗戦というのはそんなに大勢いない。いやたしかに、北の湖、貴乃花(2代目)、武蔵丸らは優勝決定戦で5回も敗れているし、白鵬にも4回の苦杯がある。昨年引退した貴景勝も3回の敗北を喫している。

とはいえ、彼らはいずれも優勝を手にしたことがある。それも数回以上。決定戦での敗北が多いのは、逆にいえば多くの優勝を果たすその過程での躓きに過ぎないともいえるのだ。

その点、高安はまだ一度も賜杯を抱いていないのである。気の毒といえば気の毒だろう。

以前、高安の兄弟子だった稀勢の里も同じようなシルバーコレクターぶりを発揮していたが、その体質が引き継がれているのだろうか。もう「決定戦敗北王」と名乗るしかないのか、まぁそのほうが大相撲史に名を残せるかもしれないが。

とはいえ、稀勢の里はその後優勝して横綱昇進までつかんだのだし、今場所の相撲を見ていれば、高安は35歳になったとはいえまだまだ強い。今回がラストチャンスだったわけでもない。次こそはの気概で、来場所以降に臨んでもらいたい。

その高安の悲願を断ち切ったのは、大関・大の里だったわけで、考えてみれば大関が平幕相手に決定戦で負けるわけにはいかない。いくら元・大関の高安が相手でも、だ。12勝3敗というスコアはともかく、大関としての責任は果たしたといっていいだろう。

そして、気がつけば。昨年夏場所の初優勝以来、この1年間で3回の優勝を遂げているのだ。年6場所の半分を制したのだから、見事というしかないだろう。

次の夏場所は、当然ながら綱盗りということになる。相撲が雑だとか、受け身に回るともろいとか、まだまだ経験不足だとかいろいろな声もあるが、昨年から今年の覇権を握ったのは、間違いなく大の里である。文句をいわれる筋合いはない。

夏場所後に昇進を果たせば、初土俵以来の最速、新入幕からの最速など、またさまざまな記録がついてくるし、話題にもなるだろう。相撲協会も審判部も横綱審議委員会も、よけいな文句はつけないように。

夏場所で大きな獲物をしとめることに期待したい。

今場所前は主役だった新横綱の豊昇龍は残念な結果となったが、来場所は逆襲してくれるだろう。大の里が力を発揮すれば、うまくすると次の名古屋場所では東西横綱が揃うことになるかもしれない。照ノ富士以降、長らく続いていた横綱片肺飛行がいよいよ終結するかもしれないのだ。

よーし、これでめでたしめでたし、とはならないのが難しいところだ。

横綱片肺飛行が終了すると、必然的に今度は大関の片肺状態が現出しそうだからだ。

琴櫻が今場所のカド番をなんとか脱出した(ギリだったけど)ので、現時点での大関片肺の心配はなくなったが、相変わらず大関は大の里と琴櫻のふたりだけ。

これで大の里が横綱に昇進したら、今度は大関が琴櫻ただ一人になってしまう。

つまり、新横綱の誕生を熱望するのもけっこうなのだが、じつは新大関誕生の必要のほうが切迫しているのだ。

今場所は、先場所関脇で11勝を挙げた大栄翔と、12勝を挙げて新関脇に昇進した王鵬が、大関盗りへの足固めをするはずだった。いやひょっとしたら場所後にも新たなる大関が誕生するかもという期待さえあったはずだ。両者とも先場所はそんな期待を抱かせる勝ちっぷりだったからだ。

ところが、大栄翔は9勝6敗どまりで足固めならず、王鵬にいたっては負け越して大関盗り白紙どころか来場所は平幕からの出直しになりそうだ。

小結で勝ち越して来場所の関脇復帰が望める元・大関の霧島がいるが、今場所は8勝止まりで、いまだ大関盗りの起点も出来ていないし、三役に復帰しそうな若隆景も10勝に届いていない。

大関への有力候補が、いまのところ見当たらないのだ。新大関誕生は急務だというのに。

横綱不在の番付は許される。まぁもともと番付表に「横綱」の文字はなかったからだ。横綱が地位として番付に載るようになったのは明治のころで、まだたかだか100年ほどの歴史しかない。

しかし、大関はそうではない。現在のものに近い番付表が作成されるようになった江戸時代から、番付の最高位は「大関」だった。これを東西に最低でも1人ずつ戴くのが番付の基本。

横綱が不在になっても番付表に特段の断り書きなどは付されない。しかし大関が1人になった場合、現在の制度では東西どちらかの横綱が「横綱大関」と記されることになる。最近では令和5年(2023年)1月場所から5月場所までの3場所で、大関が貴景勝のみとなっていたため、照ノ富士が横綱大関と記載されていた。

そんな異常事態を回避する方法はただひとつ、新大関が誕生するしかないのだ(霧島や高安だと再大関だが、まぁそれは許そう) 逆にいえば大関盗りには絶好の好機でもあるのだ。大関候補の各位は奮起してほしい。

もちろん、上記した面々をじっと待ってもいられない。その下からも着々と有力候補が追い上げてきている。

先場所爆発的に活躍した金望山はやや失速したが(ちょっ意外なくらいの崩れ方だった)、尊富士伯桜鵬、新入幕で敢闘賞をゲットした安青錦らが番付を駆けあがってきている。

さらにそのうしろから来そうなのが、今場所十両の土俵を席巻した新十両の草野だ。アマチュア時代から中学横綱、学生横綱など数多くのタイトルを獲得し、幕下付け出しから所要5場所で十両昇進を果たした逸材だが、その期待値にたがわぬ活躍を見せた。

新十両で初日から12連勝というどえらい新記録を打ち立て、過去に2人しかいない「新十両で14勝優勝」を成し遂げたのだから、大変なものだ。

さらに注目したいのは、その十両優勝を12日目にはやばやと決めたことだ。これもまた非常にレアなケース。

いうまでもなく、この記録を達成するには、ただ勝てばいいというわけではない。並走したり追走してくる力士がいては成り立たない記録なのだ。今場所は、ほかの十両力士には好成績が少なく、12日目時点で3敗以上の成績を残しているものがいなかった。なので、早期の優勝決定となったわけだ。

そのこと自体は、もちろん草野の実力とは関係ない。他の十両センパイたちの不甲斐なさを責めるしかない(まぁ普段の十両の潰し合いからすれば、そう椿事でもないが)

ただ強いだけでなく、こうした条件がたまたま出揃ったということは、つまり草野がそれだけの運を味方につけているということだ。いまふうにいえば「持ってる」ということかな。

過去のスピード出世や、大横綱の誕生を見れば、この「持ってる」は大事な条件なのだ。

思い切って予言してしまえば、草野は来年のいまごろくらいには、大関いや下手すれば横綱の声がかかるような位置に来ているかもしれない。次の夏場所に新入幕(これも運がモノを言うが)し、新入幕で平幕優勝して幕内上位から三役あたりへ、そして名古屋場所、秋場所を連覇でもすれば九州場所には一気に大関だ。そこまで来たらもう大関を1場所で突破しても不思議ではないだろう。新入幕場所から5連覇とかしたら、凄いぞ。

もちろん周囲のライバルたちがそれをやすやすと許すほど大相撲は甘くないとは思うが、そんなこともあり得なくはないだろう。角聖・双葉山は平幕からわずか6場所で69連勝の大横綱に急成長したのだから(年2場所だったけど) 途方もない大記録に、期待してしまおう。

そこで、問題にしたいことがある。

ひとつは四股名だ。本名で横綱になっていけないという法はないが(過去には輪島だけ)、やはり大相撲の看板力士たるもの、堂々と四股名を背負ってほしい。

草野の所属は伊勢ヶ濱部屋だから、今場所の新十両でてっきり「草の富士」とかつけるのかと思ったが、そうはならなかった。いろいろ背後に事情があるようだが、ここはキチンと形を整えてほしい。

そしてもうひとつが、髷(まげ)である。

伯桜鵬や尊富士、大の里が上がってきた時にもいろいろ言われていたが、やはり大相撲の幕内力士、それも看板力士にはきちんと大銀杏を結っていてほしいものだ。入門後1年になろうという草野だが、いまだザンバラ髪のままなのは、やはり落ち着かない。

毛髪の成長ばかりは稽古でどうこうなるものではないし、時間がかかるのは仕方がない。力士の急成長に髪の毛が追いつかないというのも一興ではあるがねぇ。

そこで提案だが、学生相撲ではもうプロ入りを志望する選手の髪型は長髪を許してはどうだろうか。なんだかんだいっても学生スポーツなのだから坊主頭系が普通なのだが、いいからザンバラ髪か、場合によっては髷を結ってはどうだろうか。熱血スポーツ漫画の相撲部員にはよくいるよな【こちらこちらを参照】

高校生だと校則がとかいろいろありそうだが、少なくとも大学生ならば問題なかろう? 一般学生が就職用にリクルートスタイルにするのと同じだと思えばいいのでは。

ま、そのへんはもはや相撲協会の問題ではないので、オカタイ学生相撲連盟にでも考えていただきましょうか。

というわけで、まだわずか2場所を終えただけだが、今年は一気に大相撲の風景が変わるのかもしれない。そんな予感を覚えさせてくれた春場所でしたとさ。

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