平成29年・春場所雑記

三月場所が終了しました。

勤め人の身としては当然のことですが、場所15日間のうち平日は、生観戦はもちろん、ほぼリアルタイムでテレビ中継も見られないのが当たり前になっています。なので、どうしても一番相撲の面白さよりも、勝負結果とその積み重ねになる優勝争い、そして記録への興味が中心になりがちですが、まあこれは定年退職でもして毎場所オンタイムで見られるようになるまでは我慢ですね。

さて、今場所は何といっても新横綱・稀勢の里でしょう。

場所前から話題の中心にどっかと座り、けっきょく最後までその座を譲りませんでした。しかも最後の最後にあのド派手な逆転ドラマ。文句なしに横綱の仕事をまっとうし、一部で言われていた「甘い昇進」の雑音を完封しましたね。もう誰も文句は言えないでしょう。

それにしても、昨年までのあの「メンタルが弱い可愛げのある稀勢の里」は、いったいどこへ消えたのか。初優勝と横綱昇進が、こんなにも効き目のある特効薬だとはビックリです。どっしりした風格さえも漂っていました。

あれだけ言われた精神力の弱さが消えれば、もともと体力と技術に関しては問題無かったんだなと、納得。

そして相撲でよく言う「心・技・体」のうち、やはり重要なのが「心」であることを証明しました。相撲って、メンタルスポーツなんですよね。

対照的に、主役の座を譲ってしまった他の三横綱の不振ぶりを見ると、これはここしばらくは稀勢の里の独走になるんじゃないかと、場所の終盤までは思っていました。

でも、場所終盤になって、稀勢の里に肉薄する力士たちが現われました。稀勢の里の独走に待ったをかけそうなのは、どうやら白鵬ではなく、若手の突き上げになりそうですね。

優勝に手をかけながら大逆転を喰った照ノ富士を筆頭に、三役で堂々と勝ち越して存在感を見せた玉鷲御嶽海、今場所は負け越したものの巻き返しがありそうな正代貴の岩……続々と若手が上がってきます。遠藤あたりも、もうウカウカしてられません。新時代が押し寄せています。

その若手たちに立ちはだかるべきは、昨年までは「白鵬の頑張り」だと思っていましたが、どうやら稀勢の里になりそうです。

高く分厚い壁に変貌した稀勢の里を、今場所は誰も打ち破れなかったわけですが、さて誰が一番槍を突きつけるのか?(こうなると、稀勢の里と当たらないですむ高安は、有利なような不利なような。第一人者を直接破ることができないわけですからね)

もちろん、終盤のドラマを演出した日馬富士鶴竜、そして捲土重来を期すであろう白鵬も忘れてはなりません。

夏場所から、土俵は稀勢の里時代になるのか、それとも群雄割拠の戦国時代に入るのか?

で、場所が終わって気がついたんですが、来場所後にはこんな事態が考えられるんですよ。

はい、もしも大関・照ノ富士が、今場所の勢いをかって全勝優勝でもしたら? 当然、横綱昇進の声がかかりますよね。もし実現すると、なんと史上初の五横綱になってしまうんです。

今場所前にさかんに言われたように、過去に四横綱時代は(いろいろな数え方があるけれど)おおむね16回。

その最初は大正年間(太刀山、鳳、西ノ海、大錦) 史上最長は、千代の山、鏡里、吉葉山、栃錦の四人で、昭和30年(1955年)1月場所から同33年の1月場所までの14場所(年4~5場所時代) 年6場所になってからは柏戸、大鵬、栃ノ海、佐田の山の11場所が最長。

まあ、そうそうあることではないけど、やっぱり超レアってほどでもない。それに対して五横綱は(大坂相撲などを合わせれば別だが)いまだかつてない椿事であります。さあ実現するかどうか?

もうひとつ、来場所後の注目点は、春場所を途中休場して来場所はカド番となる大関・豪栄道

縁起でもないことを言うようで恐縮ですが、もしも負け越したら大関陥落。そうなった場合、そしてもしも照ノ富士が横綱に昇進してしまった場合、次場所は番付上に大関が不在となるのであります。

これはかなりの異常事態。過去には明治37年(1904年)1月場所からの3場所と、昭和56年(1981年)9月場所に千代の富士が横綱昇進して生じた 1場所のみ。

長い相撲の歴史でたったの2度、4場所しかないのである。ここは豪栄道が踏ん張って大関の座を死守するしかない(あるいは高安が大関昇進をモノにするでも可)

それにしても、史上初の六大関時代と持ち上げられたのは、平成24年(2012年)5月場所(3場所) わずか5年前のこと。こんなにあっという間に大関が払底するなんて予想も出来なかったね(ちなみにこのうち日馬富士、鶴竜、稀勢の里が横綱昇進、琴奨菊、把瑠都、琴欧洲が大関陥落)

もうひとつ。

千秋楽の三段目の取り組みをテレビで見ていたら、めすらしい事態が。

西山(尾上部屋)と翠富士(伊勢ケ濱部屋)の対戦中、突然、土俵下の審判から待ったがかかったのです。勝負がついたようには見えませんでしたから、両力士も行司も観客も、見ていたこちらも、きょとん。

審判の指示で翠富士の勝ちとなったのですが、さて何だったのでしょう?

テレビ中継では情報が入り、「西山の廻しの前垂れ(前袋)が土俵についた」ために翠富士の勝ちになったとの説明。西山の反則負けということでした。

ニュースなどにもなりましたが、じつはこれ完全な誤審

廻しの前垂れや下がりが土俵についても、それは体の一部ではないので、負けにはならないのです。審判がルールをちゃんと把握していなかったわけですね。

翠富士は完全な儲けものの5勝目、誤審で負けになった西山には気の毒なことに。ただ審判部が誤審を認めたので、たぶん番付編成ではこの1敗は「なかったこと」になるのでしょう(成績は4勝3敗でした)

問題は、テレビで見ている限り、この判定に関する場内の観客への説明がなかったように見えたことです。非常にまれな形での判定だっただけに、きちんと観客への説明をすべきだったのではないでしょうか。

私はテレビで見ていて、てっきり西山の「不浄負け」だと思いましたよ【不浄負けについてはこちら参照

最後に。

春場所14日目の照ノ富士対琴奨菊の一戦で、照ノ富士の立ち合いの変化に対して、民族差別的なヤジが飛んだそうです。

たしかに、双方それぞれ優勝と大関復帰がかかった大一番であの内容。肩透かし感は否めませんでしたが、これも相撲のうち。

そして何よりも、ヘイト的なヤジは許されるものではありません。ほかのスポーツなら大問題になりかねません。

はたして本当にそんなヤジがあったのかはわかりませんが、相撲協会はこれを看過していいのでしょうか? きちんと対処すべきと思いますが、どうですか?

こうした部分、まだまだ大相撲には改善の余地がありますね。よろしくお願いしますよ。

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