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【本紹介_第19回】太田愛『幻夏』|少女失踪と、23年前の夏

23年前の夏、失踪した親友は何を求め、何を失ったのか――
「俺の父親、ヒトゴロシなんだ」毎日が黄金に輝いていたあの夏、同級生に何が起こったのか――少女失踪事件を捜査する刑事・相馬は、現場で奇妙な印を発見し、23年前の苦い記憶を蘇らせる。台風一過の翌日、川岸にランドセルを置いたまま、親友だった同級生は消えた。流木に不思議な印を残して……。少年はどこに消えたのか?印の意味は?やがて相馬の前に恐るべき罪が浮上してくる。司法の信を問う傑作ミステリー。

あらすじ

『幻夏』(太田愛著)は、少女の連れ去り事件と、23年前の“消えた少年”の記憶が、少しずつ同じ線に重なっていくミステリーです。
ちなみに『幻夏』は、『犯罪者』に登場する相馬・鑓水・修司が出てくる作品で、続篇でもあり前日譚でもある、という立ち位置の本でもあります。

↓犯罪者(太田愛著)のレビューはこちらから↓


刑事の相馬は捜査の現場で、妙な「印」を見つけます。その印が、子どもの頃に親友が消えた夏の記憶を、思い出させます。物語は、目の前の事件と過去の記憶を追っていきます。

同時に、興信所の鑓水のもとには奇妙な依頼が入ります。「いなくなった息子を探してほしい」。ただ、その失踪は23年前の話で、依頼人は大金だけ置いて姿を消してしまう。23年前の失踪で、なぜ今なのかーー

この作品の気持ちよさは、バラバラに見える出来事が、じわじわ一本のストーリーになっていくところです。相馬の捜査と、鑓水・修司の調査。別々に進んでいるのに、なぜか同じ場所を指している感じがして、近づいて、連鎖的に重なっていきます。

そしてクライマックの圧倒的緊迫感。タイトルの「幻夏」は、きらきらした夏の記憶というより、触れようとすると指の間からすり抜けていく遠い記憶――そんな胸を締め付ける幻の夏。ぜひ手に取ってほしい一冊です。

あんな尚を見たのは初めてだった。あの夜、僕は初めて尚が何かに苦しんでいるんじゃないかと思った。

太田愛「幻夏」

タイトル:幻夏
著者:太田愛
出版社:KADOKAWA

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