ごはんは最強!
( #ショートショート 本文:1191文字)
日本人なんだからしょうがない。それともぼくが古い人間だからなのか。とにかく、三食、白米を食べなくては食事をした気がしない。
ぼくと同じような人も多いと思う。なのに、ここ最近の米の価格は高すぎる。給料は上がらないのに米の価格は昨年から2倍になってる。
いや、そんなことを言いたかったのではなかった。ぼくが言いたかったのは、白米を食べるたびに彼女の思い出がよみがえってくること。
彼女とは1年前に別れた。最初に会ったのは合コンの席だった。彼女はひとりだけオードブルをおかずにして白米をおいしそうに食べていた。そのうれしそうな顔を見て、白米好きなぼくはビビっと来て交際を申し込んだ。
よくデートで手をつないで歩いた。彼女のもう一方の手には特大の塩むすび。彼女はもぐもぐしながら歩いた。
お昼は、すき家で牛丼特盛を食べながら、「好きや~!」とラブラブな時間を過ごした。夜は、山盛りどんぶりを片手に焼肉を食べることが多かった。白米にやきもちを焼くほど、彼女は白米をよく食べた。
お好み焼きを食べるときも、うどんを食べるときも、おでんを食べるときも、左手にはどんぶり山盛りの白米。寿司は何皿でもOK、かつ丼も天丼も大盛りで、焼きおにぎりもライスバーガーもいくつも食べた。とにかく彼女は白米をよく食べた。
頻繁に彼女とデートを重ねたぼくは、彼女といっしょのペースで食べていたので体重が毎月5kgずつ増えていった。なのに、彼女はまったく体重が増えない。スマートでスタイル抜群のまま。彼女の体内にはブラックホールがあるとしか思えない。
ぼくが炭水化物ダイエットをしようとしたときは、食べっぷりが悪いと嫌われそうになったのですぐにやめた。筋トレしようが、走りこもうが、彼女と会うたびにそれ以上に食べるのだから、ぼくの体重増加は止まらなかった。
半年経って、体重が30㎏増加したぼくに、彼女は言った。
「わたし、デブな人はちょっと……。ごめんなさい。さよなら」
これが彼女との別れだった。こうして、ぼくの恋は終わった。
ぼくは泣いた。ひとりの部屋でカーテンを閉めて電気もつけず、膝をかかえて泣いた。大好きだった白米だけでなく、食事そのものが食べられず、げっそりと痩せていった。
1年経った今は、すっかり気持ちが落ちついてきて食事もできるようになった。体重も彼女と付き合い始める前と同じくらいにまで戻っていた。今ならまた彼女とやり直せるんじゃないかって? それは無理な相談だ。
風のうわさによると、彼女は結婚したらしい。相手は新潟の米農家の男性だという。よかった。これだけ米の価格が高騰しているので、思い存分食べてないんじゃないかと心配していたんだ。祝福するよ。おめでとう。
ぼくは三食、白米を食べるたびに彼女の笑顔を思い出す。毎日、彼女の思い出に浸れるぼくは幸せ者だ。
白米、これがぼくの思い出変換装置。


はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
こちらの企画に参加します。皆勤賞です。
シンスケさん、よろしくお願いします。
主宰: #シンスケさん
企画: #無茶ブリお題道場
お題: #思い出変換装置

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