ハラハラするんですけど
国会の委員会室に、聞き慣れない単語が飛び交っていた。
「本法案における『パワハラ』とは、他人の前で力こぶを見せびらかす行為を禁じるものと定義いたします」
議長席から発言を求められた議員が立ち上がる。
「では『セクハラ』について伺いたい。これはセキュリティーを頑丈にしろと迫る行為――ということであれば、正しくは『セキュハラ』ではないでしょうか」
「たしかにその通りです。訂正します。『セキュハラ』では、サーバー管理者などに二段階認証だけでなく三段階、四段階を要求する事例が報告されております。」
野党席からも質問が続く。
「『カスハラ』の定義がどうも腑に落ちません」
「これは、嫌いな相手に無理やり粕汁を飲ませようとする行為を指します。冬場に相談件数が急増しております」
「なるほど。では『マタハラ』は」
「股ずれの状態そのものを指す用語として、今回新たに条文に加えました」
「股ずれが、なぜ法律で規制されねばならないのですか」
「規制ではございません。股ずれをしている者に対し、適切な休養と保湿ケアの機会を保障する趣旨でございます」
「では最後に『モラハラ』を」
「もらいものを断らず、必ず受け取る行為です」
採決の時が来た。議長が問う。
「本法案に賛成の諸君の起立を求めます」
反対の構えを見せていた議員たちの席に、係員が通販カタログのクーポン券を配って回った。突き返せばモラハラで訴えられかねない。議員たちは苦い顔で受け取ると、渋々といった様子で立ち上がった。
「賛成多数と認めます」
こうして新法は、誰にも十分に理解されないまま静かに可決された。
廊下に出た若手議員が先輩に尋ねた。
「結局、私たちは何を規制したんでしょうか」
「さあな。とにかく、お歳暮を贈るときは、相手が粕汁を好きかどうか確かめてからにしろ。でなきゃお前がカスハラの加害者だ」
(了)
私は粕汁が好きなのでお歳暮に贈ってもらってもかまいません。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。です。
甘野充さんの企画に参加します。
よろしくお願いします。
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TALESにて、アマノ文筆クラブ作品を連載中。毎週木曜6:30をお楽しみに。
では、今日はこのへんで。
はれるや( ´ ▽ ` )ノ。
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