#自転車競技選手 が語る 困難と葛藤の末見つけた、自分らしい生き方と想い
八街市中高生向けの居場所「ナッツアップ?」が運営する『北総ミチ(道×未知)ゆくミライブラリー』は、地元のカッコイイ先輩達がどのような中高生時代を送っていたのかや現在どのような活躍をしているのかをインタビュー記事にまとめ、いま10代を送る方々のキャリアを応援するウェブコンテンツです。
直面した困難と葛藤
普段の活動について
大好きな自転車屋で仕事をしながら、自転車レーサー、空手の選手としても活動しています。自転車はいつも1日100kmくらい漕いでいて、今日も4時間くらい走ってきました。空手は、小学生まで住んでいたタイで始めてから、今でも続けています。
今回、再び取材を受けてくださった理由
前回の取材の後、無理をして倒れて大変な状況になったことで、自分の未熟さに気づきました。けれど、時間をかけて結果的に強くなれたんです。そこで、「無理は禁物」「失敗は成功のもと」ということを学びました。
そんな自分の経験をもっと周りの人にも知ってほしいし、考え方が大きく変わった自分や以前より成長した自分がいるからこそ、そこでの気づきや経験を元に誰かを助けたり、想いやメッセージを届けたりできればいいな、という気持ちで、是非取材を受けたいと思いました。
前回の取材以降に起こった出来事
昨年の11月、空手の大会で試合中に脳震盪を起こして、救急車で運ばれたんです。倒れた時は悔しくて、担架で運ばれながら泣いていました。病院に運ばれてからは、HCU(高度治療室)に3日間いたんですけど、記憶は曖昧で、身体は全く動かない状態でした。その後も左下半身不髄の症状があり、初めは座ることさえも難しかったです。
リハビリをして徐々に良くなってきても、立っただけで気持ち悪くなったり、車椅子にも乗れなかったり。
「強かった自分に戻れるのか?」
「大好きな仕事がクビになるんじゃないか?」
「競技にも戻れないんじゃないか…?」
自分の今後について、生活や金銭面も含めて、そんな不安や焦りがすごくありました。
沢山の葛藤の末生まれた、考え方の変化と気づき
辛い気持ちや不安が沢山ある中でも、諦めずにリハビリを頑張る中で、
「今弱くなってしまっていると感じるなら、また0からスタートして、
強い自分になってチームに戻ろう。」
そんな風に、少しずつ前向きに考えられるようになっていきました。
普段寄り添ってくれている彼も、「焦らずしっかり治して、待ってるから」と言ってくれて、そんな言葉に背中を押され治療に専念できたことも大きかったです。
①「無理をしない」ことの大切さ
私は元々、やるって決めたことを真っ直ぐにしかできない、ブレーキできずに超特急で突き進んでしまうところがあるんです。
退院後も、無理してダッシュで電車に乗ったりしていたんですけど、周りからの言葉で反省しました。無理せず休むようにすると怪我をした足も治ってくるなど、「治ったらまた頑張る、そうすることで体も心も更に強くなれる」と、そして休むことが正解だったんだと気づけるようになりました。
今回無理をした結果倒れてしまったことで、やっと身をもって無理しちゃダメだって気づきましたし、自分の場合、すごく寝る時は「無理してる、疲れてる」タイミングだと気づける感覚も持てるようになってきました。
また、好きな仕事ができているのでしんどくはなかったのですが、競技の練習をする時間がなかなかとれず、生活は少しきつかったのかもしれないとも気づくことができました。
頑張りすぎることに慣れると、それが癖になって、知らず知らずのうちに無理しちゃいがちですが…
頭だけで考えるだけではどうしても頑張ってしまうので、「今日疲れてるのかな、でも走るって決めてる日だから走らないとな…いやでも無理しちゃダメだ!」と言葉にし、口にしながら自分に言い聞かせるようにしています。
最近やっと、自分で頑張る部分と休む部分の調整しようと、バランスをとったり抑えたりができるようになっています。日々成長です。
②余裕や余白の大切さ
入院中はとにかくやることや考えることがなくて、気持ちの余裕が生まれたことで、「焦っても繰り返すだけだ」と思えるようにもなりました。
考え方や思考の回転も変わったような気がしていて、気持ちに余裕を持たせることで周りが見えるようになる、考えることも増える、決断する数も増える、選択肢や未来が広がる…そんな風に感じています。
例えば、学生さんなど若い人達も、「とりあえずこの学校に行く」という風に考えることもあると思うのですが、いろんな考えや選択肢を出して、それを比べながら考えることも1つかなと思います。
③言葉や絵で表現することの大切さ
あとは、時間や気持ちに余裕があるからこそ出来ることもあると感じるようになり、日記に入院中の自分の気持ちを書き出すようになりました。倒れた2.3週間後、少し起き上がれるようになったけれどまだベッドにしかいられなかった時に始めました。
今も日々思ったことをスマホのメモに書き留めていて、例えば仕事でストレスかかった時でも何があったかを書くことで、気持ちに余裕ができていると感じます。
また、気持ちの表現が苦手な分、看護師さんに絵で伝えるようになったりしました。そこから、自分の気持ちを漫画にして表現する習慣が始まりました。
なぜ気持ちの記録や絵にすることを始めたのですか?
元々は、彼が「嫌なことがあれば日記に書いて流せばいい」とアドバイスをくれたんです。ただ、自分の中で、言葉は捉え方によって意味が変わってしまう、文字だけでは伝わらないこともあるという気持ちから、絵で表現してみようと思い立ちました。絵を描き始めたのは入院してからで、今まで絵を描いてきたことはなかったんです。
絵にしているのは、全部今まで自分が経験してきた気持ちです。
描くことで、モヤモヤした気持ちがなくなったり、上手く伝えられない時は絵を出せばいいんだって思えるようになったりしたことで、頑張って言葉で伝えることだけにこだわらず、自分が楽に伝えられる方法を見つけられたように感じました。
※蒲原さん(かんかん)の作品はこちらから読むことができます。








多様な生きづらさを抱える人達へ届けたい想い
今後やっていきたいこと、どんな風に生きていきたいか
まず、スポーツ(自転車、空手)については、以前より心も体も強い自分になって競技に戻りたいと思っています。
仕事では、無理をしないことを大切に、とはいえ自分のペースでできない時もあるかもしれませんが…
店長も優しく、お店の常連さん達とも長く繋がっていきたいので、しんどい時は「しんどい」、辛い時は「辛い」と素直に伝えられるよう、頑張りすぎてしまう自分を改善して、長く働き続けたいです。
また、自分が描いた絵や言葉を“本”にしたい気持ちがあります。
自分自身、辛い思いや経験をしたけれど、その経験があったからこそ今に繋がっていると思えるし、今はそれを乗り越えて更に強い自分になれたと思っています。だからこそ、同じような思いをしてる人を本を通して助けたいんです。この地球にはいろんな人がいて、そんな中で生まれる“常識”に合わせて生きてしまう人達の言葉で言えない辛さ、見えない裏の心に寄り添って、「あなただけじゃないんだよ」って伝えたいです。
中高生の皆さんに1番伝えたいメッセージ
①無理は禁物
1つ目は、何度も繰り返しお話ししていますが
「無理は禁物」だということです。
実は私は、知的障害とてんかん、大人になってからはうつ症状とも共に生きています。そんな中でも、障害があるからと仕事で手加減したくなくて、挑戦したい思いが強い分、頑張りすぎてストレスが大きくなっていたことに気づきました。
自転車競技も、3年で実業団にスカウトされたのですが、障害があって人より劣っているから、無理してでも頑張らないとダメ、「皆と同じ土俵に立てない」と思って頑張ってきた結果なんです。
人より頑張らないと怖いという気持ちがずっとありました。
けれど、無理して体を壊してしまったり本当にやりたい事が出来なくなるくらいなら、徐々に自分を高めていこうという気持ちや、バランスをとることが大切だと気づいたし、それを伝えたいです。
とは言いながらも、私も今でも頭と体の間での格闘や、バランスをとることにすごく葛藤しています。
あとは、以前は1人で頑張ってる時期があったんですけど、すごく辛かったんです。いつも元気でいないとな、と思っていました。でも、パートナーができてから、辛さや大変さよりも楽しいと思える時間が増えたんです。これを読んでいる皆さんにも、1人で頑張ったり抱え込みすぎず、誰かに頼ったり甘えたりしながら生きていってほしいなと思います。



②「1人じゃないよ」
2つ目は、「1人じゃないよ」ってことです。
中高生の皆さんの中で、将来に悩んでいるけれど、それを隠していつも通り元気に登校して…そんな人も多いんじゃないかと思います。そして、そうやって辛い思いをしているのは自分1人だけだって感じているかもしれません。でも、私みたいに同じような悩みを抱えてきた人もいるんだよって、知ってほしいです。
また、「障害があるから自分には出来ない」って思っている人もいるかもしれません。けれど、それは例えば親からコミュニケーションが難しいと言われ続けるなど、周りの言葉や関わりから思い込みを植え付けられてしまっているだけで、実際やれば出来る!ってこともあると思うんです。私もその経験があるから、すごく分かります。だからこそ、どんな人でも自分で動いてチャレンジしてみる勇気や、好きなことをちょっと頑張ってみることの大切さ、そしてどんな経験も未来に繋がることを伝えたいです。
そして最後に、言葉にしたくてもできないこともある、そんな人もいるってことを知ってほしいし、そんな人達にこそ私の絵や今回のインタビューを通して寄り添えたり、メッセージが届くと嬉しいなと思っています。



-文:仁木 優花
=写真:蒲原さん提供
〈profile〉
蒲原琴音(かんばらことね)
タイ出身のハーフ。タイ人の父親の影響で幼少期より空手を習う。人気漫画『弱虫ペダル』との出会いがきっかけで自転車競技を始め、自転車ショップの店員をやりながら実業団チームの選手として活躍。2024年11月に空手の試合で脳震盪を起こして緊急搬送されたが、現在は退院し競技復帰に向けて練習を再開している。
蒲原さん(かんかん)が描いた作品全編
前編はこちら👇️
中高生の居場所「ナッツアップ?」
